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第04話「2人でやっと1人」

# 第04話「2人でやっと1人」


---


## 1


1ヶ月が経った。


リンとミオのペアは、中層を安定して攻略できるようになっていた。


「依頼、完了ですね。お疲れ様です」


エルマが報酬を渡しながら、二人を見た。


リンは無表情。ミオはリンの裾を掴んで、きょろきょろしている。


「最近、よく深層に近いところまで行かれてますね。……お気をつけて」


「ありがとう」


リンが短く答える。


「あの……別々に来たこと、一度もないですよね」


エルマの言葉に、リンが目を細めた。


「何か問題が?」


「いえ、別に。ただ——」


エルマは言葉を選んだ。


「——仲がいいんだなって」


「……そう」


リンはそれだけ言って、背を向けた。ミオがついてくる。


エルマは二人の背中を見送りながら、独り言を呟いた。


「共依存って、こういうことなのかしら……」


---


## 2


医務室。


ドクが、ミオの腕に包帯を巻いていた。


「また来たのか。今週3回目だぞ」


「うん。でも、前より怪我、少なくなった」


「傷が浅くなってる。誰かが指示してくれてるんだな」


ミオが頷いた。


「リンがいるから。リンが全部教えてくれる」


「あの黒髪の子か」


ドクは包帯を結びながら、ミオの顔を見た。


「お前、いつか死ぬぞ。本当に」


「死なない。リンが死なせないって言った」


「……そうか」


ドクは何か言いたそうにしていた。でも、言わなかった。


「傷が浅くなってるのは、いいことなんだろうな。多分」


「多分?」


「いや、何でもない」


ミオが医務室を出る。リンが待っていた。扉の前で、腕を組んで。


「終わった?」


「うん。ドクが、傷が浅くなったって」


「そう。——次は怪我しないで」


「うん。リンの言う通りにする」


ミオがリンの手を取った。リンは振り払わなかった。


ドクは、窓からその姿を見ていた。


「相棒がいないと震えるのか。……それ、普通じゃないぞ」


誰にも聞こえない声で、呟いた。


---


## 3


ギルドの掲示板前。


カインが声をかけてきた。


「リン、お前の指揮なら深層だって楽勝だろ。うちに来ないか」


リンは振り返った。金髪の男。Bランクパーティのリーダー。


「お断りするわ」


「なんでだよ。お前の才能、もったいないぜ」


「私は、この子と組んでる」


リンがミオを示す。ミオはリンの後ろに隠れるようにして、カインを見ていた。


「その子、身体能力すげえな。うちで鍛えてやるよ」


「お断り」


「2人だけで? ……正気か?」


カインの声に、呆れが混じった。


「チームってのはな、誰か一人が欠けても回るようにするもんだ。お前らは逆だ。一人でも欠けたら終わる。そんなの危険すぎる」


「……」


リンは何も言わなかった。


「お前ら、依存しすぎだろ。離れた方がいい」


「大きなお世話よ」


「俺はお前らのことが心配で言ってんだ」


「——ありがとう。でも、余計なお世話」


リンはミオの手を取って、その場を離れた。


カインは、二人の背中を見送った。


「……まあ、俺に言われたくねえよな」


---


## 4


その日の夕方。


ヴェルナーに呼び出された。


「ミオのランクを上げる。EからDだ」


「……もうですか」


「成果が出てる。異論はないだろう」


ヴェルナーは書類を差し出した。


「お前らの報告書を見た。依頼完遂率100%。負傷率は激減。中層でこの成績は、なかなかない」


「……」


「結果が全てだ。過程は問わん」


リンは書類を受け取った。ミオのランクアップ通知。


「あと、お前の件だが」


「私?」


「事務職からの異動申請、通った。正式に現場復帰だ」


リンは目を見開いた。


「……本当ですか」


「嘘は言わん。——お前、もう事務仕事する気ないだろう」


「……ないです」


「だろうな」


ヴェルナーは、リンの顔を見た。


「あの2人、うまくいくかもしれん。……いかないかもしれん」


「どういう意味ですか」


「依存、という言葉を知っているか」


リンの目が、細くなった。


「……知ってます」


「知ってて、やってるんだな」


「——はい」


ヴェルナーは、何か言いたそうにしていた。でも、言わなかった。


「結果を出せ。それだけだ」


「……はい」


リンは執務室を出た。


廊下に出た瞬間、肩から力が抜けた。息を吐く。肺の奥まで空気が入っていく。


——依存。


わかってる。わかってて、やっている。


ミオが待っていた。廊下で、そわそわしながら。リンの姿を見た瞬間、表情が明るくなる。


「リン、何の話だった?」


「あなたのランクが上がった。EからD」


「ランクアップ!?」


ミオの顔がぱっと明るくなった。


「リンのおかげ!」


「私のおかげじゃないわ。あなたが頑張ったから」


「ミオが頑張れたの、リンがいたから」


ミオがリンの手を取った。


「ねえリン、ミオ、ちゃんとできてる?」


「……ええ。よくやってる」


「やった!」


ミオが跳ねる。リンの手を握ったまま。


「今日、お祝いしよう! パン食べたい!」


「……いいわよ」


リンは、少しだけ笑った。


——2人でやっと1人。


カインの言葉が、頭に残っている。


一人でも欠けたら終わる。


それは——その通りかもしれない。


でも、今は。


「行くわよ」


「うん!」


ミオがついてくる。リンの手を、離さないまま。


リンは、振り払わなかった。


---


*第04話 了*


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