はじまり1-1
50××年……
舞台は、ただ広がる麦畑にぽつんと立った太陽の塔。
その前には岩に描かれた壁画があるのみだ。
壁画は、白い少女と黒い少女が、互いに逆さになって向き合っている様子である。
共に記されている言葉は、今となっては読める人がいない。
わかるのは1つ。2人の少女を照らす日の丸。
これが太陽であること……それだけである。
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太陽がキラキラ輝く炎天下。街中は今日も色々な声がする。
「へ〜いいらっしゃい!安いよ安いよ!」
「あら〜〜!久しぶりにいらしたのね、ぜひアタシのお店に入ってって〜」
商店がたくさん並ぶこの道は、「サンジョーストリート」と言われる商店街で、食品から雑貨までなんでも揃ってる。とは言っても、サンジョーストリートは1キロもないから、そんなに人も入らないぶん有名にもならない。ここは観光スポットではないのだ。だから、客もお店の人もみんな顔見知りである。これもまた、サンジョーストリートの良い点とも言えるのだろう。
そのサンジョーストリートの良さを享受できていないような少女が2人いた。
2人とも白いフードを深く被り、身長が高い娘が低い方の手を繋いで引っ張っている。
「お姉ちゃん、前がうまく見えなくて歩けないよ。」
「しっ、もう少しよ。こんな道で顔見られたら、どんな痛い目にあうかわかったものじゃないもの。」
そういって、2人は手を繋いでサンジョーストリートを出ていった。サンジョーストリートの端っこの店をすぐ右に曲がると、今度は暗がりの「シジョーストリート」に出る。シジョーストリートは、サンジョーストリートよりもはるかに不衛生な通りだ。サンジョーストリートのようにお店はそれなりに並んでいるが、こちらは治安が悪すぎる。物価も比べ物にならないほど安くなる。ここは、サンジョーストリートで生きていけないような、ならずものの集まる場所になっている。この地に住む人はみな他人のことなど顧みず、ただ自分が今日生きることに必死である。だから、少女たちにとっては都合がいい良いのだ。
「ナツ、フードとってもいいよ」
「お姉ちゃん、なんでアタシたちこうしていつもフードを被るの?」
「仕方ないでしょ、双子はこの街では忌み嫌われる。似たような顔してる私たちを見られたら、酷い目にあうに決まってるもの。」
そうして、彼女らは暗い路地でフードをとった。
身長の高い少女は、フユ。低い少女がナツ。
ナツとフユはまったく顔が一緒の双子である。家族は誰もいない。物心ついた時には、2人で居た。
どっちが先に生まれたかは定かではない。ナツがフユを「お姉ちゃん」と呼ぶのは、フユの方が「お姉ちゃん」らしいというか、ナツをいつも世話をしているからだ。そして、双子だということを周囲に勘づかれないための工夫でもある。
そんなナツとフユはさっきまで、軽く資金を得られるようなバイトをしていたところだ。バイトといっても、お手伝いみたいなもので、2人でサンジョーストリートの露店のお手伝いをしていた。そこで得られた賃金は、やはり高くはなく、結局シジョーストリートで、安い昼食を探すことにした。
「お姉ちゃんはどれが食べたい?いつもがんばってるから、お姉ちゃんの好きなもの選んだらいいよ!」
「…ナツは優しいね。ナツもいつも頑張っててとても偉いな〜ってお姉ちゃんは思ってるけどなあ。」
ナツはフユ想いの優しい子だし、フユはその優しさに気づくことができる思慮深い子だ。2人がもし、双子を忌み嫌わない世界に生まれていたら、もっと色々な人に愛されていたにちがいない。
「ねえ、お姉ちゃん。なんで双子ってだけでみんなに嫌われちゃうんだろう。」
「……なんでかなあ。」
「お姉ちゃん、アタシね、ほんとはもっと友達が欲しいの!色んな人と仲良くして、たくさんの人と楽しいこといっぱいしたい!」
「そうだよね、お友達たくさん欲しいよね。ナツなら絶対できるよ、私にはないもの持ってる、明るくて笑顔がキラキラしててとても素敵な子だもん。
……私も見たいなあ、ナツが色んな人と仲良くして、笑いあってる姿。」
フユは少し遠い目をして、妄想をした。明るい太陽の下で、持ち前の茶髪をきらめかせ、たくさんの人と笑い合うナツ。なんて素敵なんだろう、って心底思った。
「なにいってんの!」
そんなフユの妄想はナツの言葉でかき消された。
「フユもいっしょに仲良くするんだよ、2人一生一緒!でしょ!」
「……ありがとう。」
フユはナツのその素直さに照れくさくなって、軽く微笑んだ。
「あ!」
そんななか、ナツがいきなり大声を出した。
「どうしたの、ナツ?なんか忘れ物した?」
「暗くなる前に、太陽の塔に行かなくちゃ」
「も〜〜また?あそこは行っちゃダメだよ、なんか危なそうだし」
「でも、なんか行かなきゃダメな気がするの!暗くなったら行くの難しいから、先行ってくる!」
「ナツってば〜!」
フユのその声を差し置いて、ナツはシジョーストリートを走った。シジョーストリートのさらに裏道を進めばある。誰も近寄らない、太陽の塔が。




