第2話 最終話 伝説の腕輪
これが勇者の体か、さすがこの世の力の渦の中心だけのことはある。
勇者様・・魔王を倒してあなたの呪いを解いて見せます。
「ああ ここはいったいどこでしょうか?」
俺の前には 腕輪から解放されたビッツの姿があった。
そして 勇者の姿を見つけるとその出で立ちから勇者とわかったらしく 取り乱しているところを詫びてきた。
「俺だ。腕輪だ」
ビッツは きょとんとしていたが 腕輪を見せると納得した用で、遺跡の呪いによって勇者の心が封印されたような状態になっていると伝えると容易に理解してくれた。
腕輪に封印された俺と同じような症状ではないかとビッツ言っていたが、もしかして ビッツは記憶を持っているのだろうか?
色々質問してみると 知識だけは有しており心は子供のままのようだった。
ビッツは いきなり20歳のそれになってしまったわけだけど 俺を恨んだりしていないのか?
「いいえ 私の鍛錬だけではこの力は手に入りません。両親の仇を打てるだけの力を与えてくださってありがとう。 これから どうしましょうか?」
ビッツの心は子供の時に両親の仇を打ちたいと決めていたころ そのままだった。
「実は遺跡のトラップで レイラル姫とエミルの二人とはぐれてしまったんだ。トラップを食らったのは俺たちの方だから 二人は無事だと思う。このまま合流しよう」
階段の多いダンジョンでアップダウンが激しいくせに 天井に張り付いて襲ってくるモンスターが多い。
ぜえ ぜえ
「勇者様・・ まってください」
おっといけない 勇者の体と魔導士の体では体力差があるのは当たり前か。
いったいどのくらいまで力を出せるのか。
階段を上ると モンスターの巣があった。
だけど とどまるつもりはない、勇者の力を見せてやる。
スイスイと 攻撃をかわし敵の懐に潜り込んでの
ホーリースラッシュ!!
元々 威力抜群の攻撃に敵の隙を突くのだから当然敵は消滅する。
だからと言って 敵も黙ってはいない。
ゾンビのように 仲間の屍物とも攻撃を繰り出すが それはこちらの作戦。
襲い掛かって固まったところへ
ファイアボルト!!
ビッツの魔法がさく裂した。
「うひょー やべぇ~ 焦げるかと思ったわ ははは」
元俺の体だけあって息はピッタリだった。
モンスターの巣に阻まれて救出に向かうことが出来なかったレイラル姫たちに合流することが出来た。
「勇者様~ ビッツ~ よかったわ」
「遺跡の奥には魔王を倒せるアイテムはあったのですか?」
勇者の婚約者であレイラル姫にはトラップがあったとは言えず、天使のような微笑みの彼女を泣かせてしまうのは勇者様にも悪いと思ってしまった。
それにしても 美しい・・パッチリとした二重の瞳に白いベールの衣装はまるでウエディングドレスのベールのようなローブだ。
え! 近い!!
レイラル姫は 俺の顔をマジマジと見つめていた。
そりゃ 婚約者だから当たり前かもしれない。
「いいや アイテムはなかったが 力を授かった」
勇者は勇者以上の力になることはないとだろうけど 痛みも苦痛も感じない俺が勇者の体を使うと別の話になる。
気絶しても戦えるゾンビ勇者が誕生しだ。
俺たちは 遺跡に迷い込んでいると思い込んでいる魔王の逆手を取って魔王城の側まで潜入することに成功した。
そのキャンプは おそらく最後のキャンプ
4人で生きて帰れないかもしれなかった。
「あの 勇者様 よろしいでしょうか?」
俺のテントに入ってきたのは レイラル姫だった。
そう 目的は言うまでもなく魔王討伐後にご懐妊の報告をすることで国の安泰を宣言することだ。
ただ 勇者と姫は元々 仲が良く、関係を超えて恋人同士だったのかもしれない。
「どうして拒まれるのですか?。。やはり 魔王を討伐されたら旅に出らるのですか?私も連れて行ってください!」
話の流れが勇者が姫様を振って ほかの国に行ってしまうみたいな話になってきた。
「出ていくわけがないだろう」
「それなら よいではないですか?」
俺は事情を話した。
腕輪の事もすべてを話した。
「ウソ! そんな呪いなんて聞いたことがないわ。うわぁぁん」
レイラル姫は 子供帰りしてしまったかのように泣き出した。
そう 今回は 腕輪の呪いと遺跡の呪いの両方が存在している
そんな都合のいいものが ポンポンと現れるはずがないというのはレイラル姫の考え方の方が正しいだろう。
仕方がない。 事を荒立てないためにも俺は勇者の代わりをすることにした。
・・・・
・・
「ありがとう 生きて帰りましょ」
レイラル姫は 自分のテントへ戻っていった。
それを見計らったかのように入ってきたのは エミルだった。
そして実はエミルには 王国から秘密の名を受けていた。
「聖女の力が なくなるかもしれないけどいいのか?」
「はい 明日の戦いが終われば聖女の力を失ってもかまいません」
・・・・。
・・。
「ありがとうございました」
エミルも帰っていった。
一人になってテントの上を見上げて今までの事を思い出した。
神ウルドに 腕輪に帰られてしまったときは理不尽で将来なんてなくなってしまったかと思ったけど
でも 今は違う。
勇者の呪いを解く方法がわかったら 俺は 腕輪に帰ろうと思うんだ。
ビッツもこれから幸せを見つけていくだろうし 人には人それぞれの幸せがあって
俺は 人の夢を見ていただけなんだ。
よし! やるぞ!!
魔王城に潜入して 一気に魔王を目指して突き進んだ。
自分で言うのもなんだけど 怒涛の快進撃だったとおもう。
俺とビッツとのコンビネーションは 以前の勇者とレイラル姫以上のコンビネーションだった
「魔王! お前を倒しにきたぞ!!」
魔王の玉座に着くと 見慣れた顔があった。
「勇者よ がははは やはり来たか! ワシは魔王ウルド!元神じゃ!じゃぁからお前たちは一生勝つことはできぬぞ がははは」
現れたのはまさかの 神落ちしたウルド
「勇者よ この腕輪を見るのじゃ これは相手の意識を封じ込めるアイテムなのじゃ。ゆくぞ かーーーつ!!」
先手必勝で ウルドは勇者の肉体から意識を引き抜いて腕輪に封印しようとした。
しかし 同じ轍は踏まない
ホーリースラッシュ!!!
術中にある勇者が自由に動き そして技を放ってくるなんてありえないと思ったのだろう。
混乱して動けなくなってしまったようだ。
ホーリースラッシュは ウルドを直撃し腕輪を打ち砕いた。
「なぜじゃ?」
断末魔を上げるより 腑に落ちないといった気持の方が強かったようだ。
俺は ウルドに腕を掲げると 高らかと腕輪を見せつけてやった。
「そうだ お前が封印した腕輪だよ。久しぶりだな!会えて嬉しいよ はっはは」
「まさか・・ ぐぶ」
ウルドは倒れた。
4人とも全員無事なまま 大国へ帰還して俺たちは英雄になった。
魔王城のウルドの書庫を調べることで 遺跡呪いを解くすべも見つけた。
後は 俺が死ねばそれでいい。
そして みんなを集めた。
「実は この腕輪は魔王ウルドの呪いの腕輪だ。でも 俺なら外すことも簡単だ。 最後にこれだけは言わせてほしい。 みんな ありがとう!」
バタン・・
自ら腕輪を外し地面に放り投げた。
俺は 腕輪として永遠の時を過ごすことになる。
永遠の命というのも悪くないかもしれない。
・・エピローグ・・
王族には世継ぎが常に必要になる。
俺は 気絶しても戦えるところを買われて 王様の精力剤的な意味で末永く国に尽くすことになった。
めでたしめでたし