騎士団長との朝
城の外に出た俺たちが実戦の場として向かうことになったのは始まりの森という場所だった。なんでもそこはスライムが多く、スライム以外でも稀にホーンラビットというスライムに比べると少しだけ強い兎の魔物が出てくるという、冒険者や騎士といった戦闘系の職業を持つ者にとって最初の実戦には持ってこいの場所らしい。
城を出て3日程馬車に乗り、始まりの森近くにある宿場町ファースへと俺たちは荷物を置き、その日は休みになった。
初めての馬車は地球の車と比べ、やはり揺れがあった。お陰で徐々に気持ち悪くなってしまった始末。流石に吐きはしなかったが他の人が戦闘職の恩恵でなんともなく、かなり悔しい思いをした。
ここで、一つ言っておこうと思う。俺が吸収していたスライムは戦闘能力のないノーマルスライムと呼ばれる街の下水道なんかに出てくることもある存在だが、ここでは酸性の粘液を出したりとしっかり攻撃してくる魔物ので注意が必要だ。
閑話休題
ファースで泊まった、その日の夜。またあの夢を見た。今度は段々、男がこちらへと歩いてきている。そして俺まであと一歩というところで、俺は飛び起き、目が覚めた。ベッドから降りてシーツの方を見ると冷や汗でかなり濡れてしまっていた。
その日は、夢の内容が頭から抜け落ちずモヤモヤした状態で朝ごはんを食べる。ちなみに他の人はまだ起きていない時間帯だったが、割り当てられた部屋から出ると騎士団長が朝食をとっていた。
向こうも俺の存在に気づいてくれたらしく、厨房に朝ごはんの用意を頼んでくれた。
「チセイも一緒にどうだ、よければお前たちのことを教えてほしい」「はい、喜んで」
テーブルに出された朝ごはんのメニューは黒パンとホーンラビットの肉が入った野菜のスープだった。パンに関しては、スープに付けないと食べれないほど硬い様な見た目だったが、覚悟を決めて一口食べるとそこまで硬くなく、フランスパンより少し硬い感じの食感だったりして、驚いた。
そこで騎士団長の名前を教えて貰った。名前はアーノルド、アルドと呼ばれるとも教えてくれた。そしてそのまま、この世界のこと、地球のことを話す。そして聞いた情報から異世界の文明レベルに関して考察し始めたとき、騎士団長が実地訓練を始める前に少しだけ、戦闘について教えると伝えてくれた。
アルド騎士団長と俺だけ、二人だけの状態での訓練が始まった。
内容は、俺にあった武器を選ぶこと、俺に合っていたのはナイフ、ダガーと呼ばれる短剣だった。そして短剣の振り方、使い方を一対一で教わり疲れが残らない程度の状態になるまで続いた。
「チセイは呑み込みがかなり早いな」「そうなんですか?」「ああ、鍛えていけば間違いなく俺と切りあえるような腕になる」「本当ですか⁉︎」「嘘はつかないさ。さ、そろそろ終わりだ。皆がもうそろそろ起きる。今のうちに、用意をしておけよ?」「はい」
その後、他の人が起き出したから、訓練は終わり。そのまま朝ごはんを食べ次第、訓練が始まると伝えられた。
ちなみに、俺はもう朝ごはんを食べていたが、アルド団長もう一度食べるらしく、俺も2度目の朝ごはんを食べた。
そして、訓練が始まる。