同情されない職業の呪い
異世界召喚された次の日から勇者達を育てる為に訓練が始まった。内容はそれぞれ、スキル、魔法、八種族についての歴史や特徴についての勉強、そして何より戦闘訓練だ。
まずスキル。ここでは鍛え方や、種類について教えられる。みんな教導役の騎士や魔道士に教わっていた。俺のは特殊すぎて自分で調べるしかなかった…
次に魔法。ここでは魔力や、使い方が教えられた。主に後衛系の職業を持つ人達は使い方と鍛え方を。逆に前衛系の職業を持つ人達は対策方法について、俺はこっちでみっちり教えられた。
最後に八種族について。
まずは最高神が創った天使と悪魔について、これがひどいことにバベルと呼ばれるダンジョンにいるのではという、推測になっていた。
運命の神が創った龍と精霊については、この大陸に存在していて、精霊はお隣の国デザイトスとやらにあるオアシスに存在していて、龍は大陸の果ての上空を飛んでいる姿が見られるらしい。そして時々、試練として地上に降り立つらしいからその時にまた解説するらしい。ぶっちゃけ、関わりづらいから、後回しって感じだった。
今更だが……八種族のことについては不明な点が多い気がする。この国が隠蔽しているのか……あるいは本当に分かっていないのか……いずれにせよ、この世界の運命終わっとる。
……感情の神が創ったエルフと原族についてだけども……絶望的な情報だった。エルフは冒険者や国の中枢に一人はいるぐらいには多く存在しているが……彼らはエルフの里を知らないらしい。なんでも、外で暮らすエルフとこの国の外にある大樹海に存在しているとされる里で暮らす二つのエルフに分かれているらしい。
で……肝心の原族については、既に滅んだ種族だと言う。これを聞いた時に、はあ?なんでそんなことになったんだと思い、この世界の運命を悟った気がするが、理由としてかつて世界を襲った邪神に滅ぼされたと教えられた。
つくづく、秘宝探索は色々な意味で地獄だと悟った。
そして最後の狡智の神が創った、スライムと妖魔も分かっているのは片方で、妖魔は魔大陸と呼ばれる外の大陸らしい。
感想として、ここまで情報が無いとは思っていなかった。まさしく、ルナティックな難易度としか言えない。
と、ここまで言ってきた内容だが、実は周りと同じ戦闘訓練が受けられず、唯一同じ内容なのは魔法とこの八種属の勉強だけだ。
理由は恐らく、いくつかあるだろうが、まず鍛えずらい。この一言に尽きるだろう、では、俺の訓練がどんなものか語ろう。
まず、最弱クラスの知性を持たないスライムを倒し、スキルを吸収する。そしてレベルを上げていく。それだけの内容。
因みに、他の皆は普通に騎士団の人に稽古をつけてもらったり、宮廷魔導士の人と魔法の練習や勉強を一対一でしていたりと、THE異世界召喚って感じの訓練だ。
それに比べてやはり、俺の訓練は……まぁもう一つの理由は分かる。答えは俺の職業とスキルだ、前回で分かったように俺はまず《吸収》以外に役に立ちそうな戦闘系のスキルを持っていないので魔物を倒すのがまず難しいということ。それに加え、この職業は強くなったとしたら死んだ時が大惨事ということ。そう思うと、この扱いは妥当と言えば妥当なものだった。
だからと言って、召喚した人間を一人にするのはよろしくないとは思う。
「はぁ……」
そんな扱いを受け、もちろん不服が無いはずもなく、その日もため息を吐きながら自分の部屋に向かっていた。
「ってかさ、木城のステータス見た?」
不意に聞こえてきたクラスメイトの声に思わず反応する。どうやら何人かで雑談しているらしい。
話が気になり、少し悪いと思いつつも聞き耳を立て、俺は少し隠れた。
話をしていたのは、クラスの中でも柄が悪い連中だった。
「あいつまさかのこの世界の村人の平均だって」
「マジかよ、やっば」
「でもいいんじゃね?あいつ、普通がいいって散々言ってたじゃん」
俺はあくまで普通なくらいが丁度良いって感じで言ってんだよ!と、怒鳴り返したいがグッと堪えて聞き続ける。
「あー確かに…でもさ、なんか職業はめっちゃ珍しいらしいんだけどさ、別名『災厄の器』だって」
「うわ、絶対一緒にいたくねー」
笑い声が上がる。その数からして柄が悪い連中以外にも結構な数で話していたようだった。
ある程度聞いた、俺は静かに歩き出した。どうしようもない理不尽に涙が出てきそうになった。
確かに、あのステータスや職業では陰口を言われても別におかしくないと思うし、散々ネタにされるのも分かるし仕方ないこと。頭ではそう何度も呟くが、胸に残った痛みと瞳を微かに濡らした涙は消えなかった。
俺は静かに部屋に入り、すぐにベットに潜った。
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陰口を叩かれていたあの日から一週間ほど経った頃。訓練もひと段落つき、次はスライムなどで実戦経験を積ませる段階に入った。
この日までに皆んなは魔法を一通り使えるようになったり、剣技やなんやと成長を果たし、(ちなみに俺はあの後スライムから《粘液》と言うスキルを手に入れただけだった)王国側も、そろそろ実践も少ししてみるかと言う事でそれぞれ5人ずつパーティーを作り、王国の外に少し出て弱い魔物と戦って貰おうということになった。
ちなみにクラスメイトは全員で三十一人とかなり少ないが、これは元々クラスの人数が三十六人のあまりもの的なクラスになる9組だったことが理由で、その内の五人については、1人はうちのクラスではない柄の悪い連中のせいで不登校、1人は近く常連の不良、1人は病気で休み、1人はトイレ、1人は遅刻と言うことで全員は揃っていなかったからだった。
話を戻してパーティの決め方だが、単純に仲の良さ、そしてパーティを仕切ってもらう騎士団の人に声をかけてもらって決めるという分け方だったのだが……
「なあ岸田、パーティー入ってもいいか?」
「あ、悪い木城!もう5人集まっちったんだ」
……当然の如く避けられていた。まぁ誰が言ったかは知らないが「絶対一緒に居たくない」とまで言われたので想像はできていたのだが、騎士団からしか誘われない……
これはもう余ったところに入れたらラッキーだなと思い始めた時だった。
「君はチセイか、まだ決まってない感じだな?」
「は、はい」
声をかけてくれたのは騎士団長で勇者である勇輝のパーティーを指揮してくれる人だった。
「だったら俺たちと行こう、まだ4人しかいないんだ」
「っ!ありがとうございます!」
正直泣くかと思った。
そして勇者パーティーには勇輝以外にステータスを最初に見せてくれた真司、前園朱理さん、そして赤坂未来と言うメガネの男子だった。
「知慧は俺らとか、よろしく!」
「よろしくな、木城」
「よろしく」
(ちゃんと挨拶してくれるって嬉しいな)
流石に勇者パーティ、皆んな噂なんて関係ないと優しかった。
「よろしく、木城くん」
「こちらこそよろしく」
一通り挨拶を終え、騎士団長からの注意も聞き、俺たちは実戦訓練を行う外へと国の門をくぐった。