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過去に戻って高校生活をやり直してたら、知らない美少女後輩が俺のことを殺しにきている件。  作者: 松竹梅竹松
第6章 高2夏・林間学校

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第6章 第41話 走馬燈

「は、はは……」



 まさかこんな状況で天平対策が生まれるなんて。できれば雨を消す技とかほしかったんだけどな……。



 脳のリミッターを外し、バックファイアを食らう代わりに自分の限界以上の身体能力を引き出す技。



 リルが喜びそうだな。ボロボロになりながら勝つヒーロー。主人公らしいな……。問題は俺が絶望的に勝つのに向いてないってことだが。



 もし生きて会えたら。リルを沸かせたいな……。必殺技名とかつけてみるか。



 使えば使うほど死に近づいていく技。実際に見ることはあまりないって現実を踏まえて……これでいくか。



 気を失っている芽依を背負い、上着で腰に固定させて、脳を働かせる。



 両脚、70%――



「――走馬燈(レクイエム)



 瞬間脚が軽くなり、力が入る。その分骨折レベルの痛みが脚を支配するが……耐えられる。



「あぁぁぁぁっ!」



 跳び上がると、再び景色が変わる。8mくらいか……? 信じられないほどの跳躍力だ。そして崖の岩肌に脚をかけ、再び跳躍。一瞬で崖を登れた。これを繰り返していけば、すぐに宿舎につける。問題はその宿舎の場所がわからないということだが、それでも上に進むことは間違っていないだろう。なんせそう長時間使えないんだから。



「っ」



 時間にして30秒程度。崖を4つほど乗り越えたところで、ついに来た。



 脚が、まったく動かない。痛み以外の感覚が全くない。



 しかも動かなくなったタイミングが空中。崖の上には出ているが、このままでは衰弱死の前に転落死だ。だから、



「左腕、90%……!」



 空中で後方を向き、拳を振るう!



突然死走馬燈(ジェットレクイエム)っ!」



 拳の流れに従って暴風が起こり、その反動で後ろに勢いよく吹き飛ぶ。俺にしては珍しく上手くいったが、勢いがよすぎた。このままでは芽依が俺と岩壁に挟まれて潰されてしまう。



「30%走馬燈(レクイエム)っ!」



 今度は右腕でさらに逆に拳を振るい、勢いを軽減。なんとか着地することができた。しかもここ……。



「洞窟……」



 運よく岩で囲まれた洞窟の中に入ることができた。が、



「いっでぇぇぇぇ……!」



 左腕が、信じられないくらい痛い。見ると左腕全体が赤黒く腫れ、おかしな方向に曲がっている。両脚に続き左腕まで壊してしまった。だが右腕の痛みはほとんどない。30%ならほぼノーリスクで使えるな……。



「芽依、少し待っててくれ」



 洞窟なら身体を休めることができるし、何より脚が動かない以上もう移動することはできない。だからここで待機しなければいけないが、暗くてよく見えないし何より寒すぎる。火が必要だ。



「マジでやりたくなかったんだけどな……」



 落ちていた太めの木の枝を口に咥え、右腕30%の走馬燈(レクイエム)で逆立ちし、外に歩いていく。



 この雨の中だ。救助は望めないが、何もしないわけにはいかない。



「喉、100%……」



 木の枝を地面に置き、その上に壊れた左腕をかざす。そして右手でゲイ・ボルグを構え、



「……爆死走馬燈(バーストレクイエム)



 左腕にゲイボルグの先端を突きつけた。



「いっでぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」



 動かなくても痛みはある。でもこの光と、100%の声量で押し出した山中に響く絶叫で、誰でもいいから気づいてくれ……!



「ごぼっ……!?」



 想定外だ。悲鳴が思ったより短い。口から血が大量に溢れ出て声が出せなくなってしまった。さすがは100%ってところか。死ぬほど痛ぇ。



 でもこれで木の枝に火がついた。多少湿ってはいたが、人を殺せるほどの熱量だ。火はしっかりしている。後は洞窟に戻って……。



「ぅ、そだ……!?」



 本当に、想定外だ。あまりにも声が大きすぎた。洞窟の入口の岩がずれ、今にも落下しそうになっている。



「ぐっ……ぞぉぉぉぉ……!」



 もしものために残しておきたかったが、余裕はない。右腕、100%……!



「エ……エム……!」



 枝を口に咥え、100%の力の反動で芽依のもとへと飛んでいく。間一髪、洞窟が塞がる前に入れたが……。



「ぐ……ぞぉ……!」



 洞窟が完全に塞がってしまった。これでしばらく救援は望めない。



「ぐぉ……ぉお……!」



 でもやることは変わらない。勢いのまま壁にぶつかったことで痛めた背中を放置し、身をよじりながら芽依へと近づいていく。もう両腕両脚は動かない。芽依だけでも。芽依だけでも、生きて帰さないと……!



「ぇ……い……?」



 ずっと、見ていなかった。前だけしか見えていなかったから。後ろにいる芽依のことなんて、一つも。見えちゃいなかったんだ。



 だから。火に照らされてようやく。



「め、い――」



 翡翠芽依がとっくに死んでいたことに、気づいた。

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