表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去に戻って高校生活をやり直してたら、知らない美少女後輩が俺のことを殺しにきている件。  作者: 松竹梅竹松
第6章 高2夏・林間学校

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/88

第6章 第27話 最高ではない高校生活

「いちについてー。よーい、ドンっ!」

「うおおおおっ! レシプロバーストですよぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」



 リレーが始まると同時に、人間を大きく超えた速度で走り出すリル。あれはもういい。死んでも勝てない。



 問題は水菜チームだよな……。おそらく走力が一番低いであろう水菜がアンカーってことは俺たちと同じ先行逃げ切りを狙っているのだろう。



 たぶん全体的な速さはこっちが上。だが俺と十六夜がいかんせん足手まといすぎる。最初にどれだけリードできるかが鍵だ。



「それにしてもなぁ~んかなつかしいね~」



 攻略法について考えていると、不意に水菜が口を開いた。



「4人で競ったことあったっけ?」

「そ~じゃなくて~。ほら~、1年前の体育祭とかみんなで走ったじゃ~ん?」

「水菜は走ってないけどな……」



 俺には1ヶ月前の出来事だから覚えてる。走ったのは宍戸さんと俺だけだった。



「なにしたんですかぁ?」

「台車に水菜乗せて走った」

「なにしてんですかぁ……」



 去年のことを知らない天平に説明すると、ジト目で見られてしまった。俺も馬鹿だと思うけどさ……仕方なかったんだよ色々あって……。



「でもこの4人と言ったらあれでしょう。この間の体育祭の部対抗リレー」

「あ~爆発しちゃって大変だったね~」

「「なにしてんですかっ!?」」



 今年の体育祭の体験がない俺と天平が同時に叫ぶ。爆発!? 爆発って……!?



「覚えてないの? 大昇天爆発花火」

「天然記念物かよ! ってツッコミがその通りすぎて笑っちゃったよね~」



 ほんとなにしてんだ……。止めろよ俺……。



「なつかしいわ……。もう二度とできないって思うと少し悲しいわね」



 宍戸さんは3年生。もう体育祭に参加することはできないんだ。



 やり直しでもしない限り。



「生徒会長さんは……高校生活をもう一度やり直せるとしたら。どうしますか?」



 俺と同じことを考えたのだろう。天平がつぶやくように訊ねる。



「別にいいわ。めんどくさい」



 だが俺と天平がこれ以上ないほどに苦しんでいる問題を。宍戸さんはめんどくさいと一蹴した。



「で、でもやり直せるんですよ!? 楽しいことももう一度……!」

「楽しかったからこそ、やり直しちゃいけないのよ。私たちのこの日々は、もう二度とやり直せない青春の輝き。これがもう一度できるなんて、興ざめも甚だしいわ」

「それは……持っている側の発言ですよ」



 別に天平を擁護したかったわけではない。ただ言いたかった。俺と天平のこの時間は、間違っていないと。



「俺は……やり直せるならいくらでもやり直したい。後悔してること。辛いことでいっぱいだから……何度やり直してでも、最高の幸せを手に入れたい」

「それって楽しい? 最高の結果が最高の幸せってわけでもないでしょう?」



 宍戸さんには悪気がない。当然だ。俺と天平がやり直していることなんか想像もしてないはずだから。



 だが生きる目的を否定されて黙っていられるほど。このやり直しの旅は安くない。



「楽しいですよ……? 俺は楽しんでます」

「誰も今のことを言ってはいないでしょう?」

「いやまぁ……そうなんですけど」



 なんとももどかしい。言葉に迷っていると、天平チームのラスト前、樹来がバトンを天平に渡した。だいぶ間は空くが、次はおそらく宍戸さんチームだろう。



「でも正直、まだわからないというのが本音よ」



 そう短く言うと、宍戸さんは軽くジャンプして身体を動かす。



「まだ私は高校3年生の夏。青春はまだ残っているし、10年くらい経ってもう一度やり直せたらなぁとか思うかもしれない」



 宍戸さんの前、卯月がかなり速い。そろそろバトンタッチだ。



「だから今の私は全力で青春を楽しむ。後悔なんて残せないほどにね」



 そして今。後輩から先輩へ、バトンが渡される。



「いつだって主役は今の私よ。自分でさえも、それだけは譲れない」



 卯月からバトンを受け取った宍戸さんの背中は、あっという間に遠くなる。



「だってさ~。桜花ちゃん言うことと見た目だけはかっこいいんだよね~」



 次は芽依からバトンを受け取る水菜だ。



「私も、負けない」



 その一言は、夏の風と周囲の熱気によってかき消される。それでも俺の耳にはいつまでも2人の声が残っていて。



「俺だって――!」



 負けたくないと。声も出さずにそう誓い、ヘロヘロになった十六夜からバトンを受け取った。



 水菜との距離は軽く100mを超えている。追い抜くことは難しいか。



 それでもあきらめない。これがやり直しだろうと関係ない。



 俺は主役にはなれない。考えながら、のろのろと。走り続けることしかできない。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



 そんな俺でも気がつけば水菜を追い越しており。



「主水よくやったぁぁぁぁっ!」

「あんたにしては珍しく勝ったじゃん!」

「大矢くん……仲間だと思ってたのに……」



 最高ではない歓声に、身を投じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] さすが会長いいこと言うなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ