第6章 第25話 賢人
2019年 8月23日(金) 13:24
「大! スポーツ大会~っ!」
本日のイベント、スポーツ大会。近くの体育館と運動場を借りた、6人5チームのスポーツ大会である。
「1位になったチームは豪華景品プレゼント! 最下位チームは今日の宴会で一発芸よ! 酒が入らない一発芸なんて大滑り必至! 真剣にやらないと恥ずかしい目に遭うわよ! がんばってっ!」
さて困った。一発芸なんて死んでもやりたくないが、スポーツなんてまともにできるわけもない。もう他の奴に任せるしかない。ただ他の面子もなぁ……。
「わ、私……運動はからっきし……ごめんなさい……」
「あたしもたいしてできないから。下手したらぶっ飛ばす」
おそらく俺レベルであろう十六夜に、自分の立場的にガチで挑んで負けるわけにはいかない七海。
「まぁまぁ任せといてくださいよ先輩! あたしめちゃくちゃ運動できるんで!」
「オレもめちゃくちゃ動けるぜっ!」
「お前はたいしたことねぇだろ。ちっちぇし」
残りの大雪さん、金間、真壁に任せるしかない。自分で選んだメンバーだが、何とも偏りのあるチームだ。それに対し相手チームは、
「なんで私があなたと同じチームなんですか……」
「運命感じるよね」
「感じませんっ!」
リルと樹来。
「なんでわたくしがこんなことを……」
「まぁまぁ……。かんなに協力してよ」
天平にハロウと人外揃い。加えて種目は、
「第1種目、ドッジボールっ!」
いつの時代も陰キャにトラウマを植え付けてきたドッジボールである。詰んだ。だがそれでも……。
「十六夜、いけるよな?」
「うん……。私たちには私たちなりの生き方がある……。早々負けはしない……!」
さて、試合開始。まずボールが渡ったのは、
「悪いな、大矢」
俺のことが嫌いな樹来。陽キャのトップはイコール運動神経抜群。勝てるわけがないが……。
「はぁっ!」
「ほぉっ」
樹来が投げてきためちゃ速足狙いボールを横に動いて避ける。これこそが陰キャのドッジボールでのやり方。逃げの一手である。
「ははは……。悪いな、俺たちは痛いの嫌だから逃げ続けてブーイング起こるのが常だ。避けるだけなら陽キャにも負けない」
元外野はなし。後ろに転がったボールを拾い、金間に渡す。陰キャはボールを投げちゃいけないのが暗黙の了解だ。
「悪いな。負けるわけにはいかないんで……女子でも手加減しねぇっ!」
まず女子から減らしていく作戦なのだろう。金間の狙いは……天平。いくら天平でも天使の力は使わないはず……。いや、動体視力は……あれ?
「よっ」
「なっ!?」
180cm以上の体躯から繰り出される一投は、30cm以上低い天平に軽々とキャッチされた。
そうだ……ボールを投げるのは手加減するだろうが、キャッチに関しては別。それってつまり……。
「詰んだ……」
「おら死ね大矢主水ぉっ!」
天平はキャッチした後すぐに俺の右脚狙いでボールを投げる。いやてか待て……速すぎ……!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
凄まじい痛みと轟音。これ、右脚、完全に折れたっ!
「ちょっとハロウちゃんキャッチしちゃだめっ。大矢せんぱいセーフになっちゃった!」
「そうなんですのね……。面倒ですわ」
俺の右脚の骨を折り、爆速で跳ね返ったボールをキャッチしてしまったハロウ。でもこれ、脚折れてるから動けな……。
「ていっ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
すごく軽めに投げたっぽいボールは、天平のもの以上の速度で俺の左脚に当たり、また、骨、折りやがった……!
「手加減難しいですわね……」
「あ、ごめんなさい。キャッチしちゃいました」
両脚を砕かれ動けない俺に対し、ボールを持っているのはリル。よかった、リルなら手加減……。
「どうしましょう。主水さんにひどいことしたくありません」
「大丈夫だよ。せっかくの機会だ。日頃の恨みを込めてボールを投げればいい。所詮遊びなんだから」
「それもそうですねっ!」
……ん? リルさん……? なんで思いっきり振りかぶって……!
「暗すぎなんですよネガティブクソ陰キャがぁっ!」
強……! 速……避……。無理! 受け止める無事で!? 出来る!? 否。死。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
凄まじい激痛と共に意識が消え……。
「手加減できないと言ってもあれほどではありませんわね……」
たかと思ったら、全ての痛みが消えて意識がはっきりと戻ってきた。正面には控えめながら手を俺に向けているハロウがいる。リルの一投で死んだのをハロウが治してくれたんだ……。
「わーいっ! すっきりしましたーっ!」
俺を殺したことにも気づかず、めちゃくちゃ喜んでいるリルを見て、なんかもうあれな気分になった。どっちが俺を助けてくれる天使なのかもうわかんないよこれじゃ……。
「まぁ楽しんでるのならいいよ……」
いや実際は全くよくはないが、俺はおとなしく外野へと移動した。




