第6章 第24話 友だち
2019年 8月22日(木) 23:35
「それじゃあ明日のスポーツ大会のチーム分け会議を始めるわ」
風呂に入り終わり、日にちが変わる寸前の遅い時間。俺、水菜、天平、宍戸さんのイベント同好会の4人は共用スペースの一室に集まっていた。
「あなたたち3人がリーダーになって、自身を含めて男女3人ずつ。計6人のチームを作って。余った子たちは生徒会の方でチームを作るわ」
林間学校参加者の名簿を見ながら宍戸さんが無茶な注文をする。リーダーはもちろんとして指名制なんて陰キャにできるわけもない。
「事前に決めとけばいいのに……」
「共同生活を続けていれば嫌でも仲悪くなる子たちもいるでしょう? そういうのも含めたチーム分けをお願いするわ」
俺と同じやり直し兼陰キャの天平が小声で愚痴ると、宍戸さんの冷たい一言が返ってくる。これで一切怒ってないんだから変な人だ。
「とりあえずおーくんはリルちゃんと芽依ちゃんと瑠璃ちゃん。一応碧ちゃんもなしね~」
「私情バリバリだな……」
たぶん水菜は自分のライバルになりえる女子を俺と組ませないようにしたいのだろう。十六夜はどういうつもりかわからないが。
「仲いい悪いももちろんだけど、運動能力についても考慮してね」
「とは言っても水菜ちゃん運動苦手だからな~。おーくんもだめだよね~。神無ちゃんは~?」
「かんなもそんなに……」
水菜は自分と俺たちを同列にして語っているが、陽キャと陰キャの運動苦手には大きな隔たりがある。陽キャは何の努力をせずとも常人並の基本性能を持っている。だから運動が苦手と言ってもそれはできる人と比べればである。
対して陰キャはマイナスからのスタート。水菜にはわからないだろうな。小さな柵を飛び越えることもできないほどの、生きることすら困難な運動神経のなさは。
「とりあえずかんなのチームにはハロウちゃんをください。あと樹来せんぱいも……できれば」
「ならリルも入れてあげてくれ」
「はぁ……別にいいですけど」
人間越えの4人を同じチームにしてしまうことになるが、風呂での約束通り樹来にはリルの面倒を見てほしい。これなら天平たちの監視もできるしかなり都合がいいチームにすることができた。
「水菜ちゃんは~芽依ちゃんと瑠璃ちゃんがほしいな~。男子は誰でもいいよ~」
「じゃあ俺は十六夜と七海。あと大雪さんがほしい」
「おーくん? 碧ちゃんは駄目だって言ったよね?」
「でも俺が話せそうな女子だと後は七海くらい。チーム離しちゃうと十六夜がボッチになっちゃうだろ。妹と同じチームってのもあれだし」
「むむ……。なら仕方ない……」
これで女子はオッケー。後は男子……。嫌だが、やるしかない。
「俺はあの……マジックに協力してくれたあの2人がチームにほしい」
「……水菜ちゃんは反対だよ。理由は説明しなくてもわかるよね?」
さすがは陽キャ。怪我は置いといても、あの2人と俺が仲よくないってことくらいはお見通しか。名前も知らないくらいだし。でも、だからこそ。
「俺はあの2人と……向き合わなきゃいけない。だから同じチームで……がんばりたいんだ」
本当は嫌だ。たいした痛みではなかったがそれでも暴力を振るわれたのは事実だし、何より怖い。でもいつかは向き合わなくちゃ……。
「ん、だめ。その2人水菜ちゃんのチームにもらうね~」
だが水菜は俺のそんな想いなどお構いなしに否定した。
「なんで……!」
「なんでっておーくんコミュ障だし? 友だちになりたいわけでもないんだよね~?」
「まぁそうだけど……だから!」
「おーくんさぁ~……そんな無理しなくていいんだよ~?」
思わず立ち上がってしまった俺に対し、水菜はあくまでも冷静に。本性を現すことなく、俺を見上げている。
「人には向き不向きがある。おーくんは基本なんでもだめなんだから、誰かを頼らないと生きていけないでしょ~?」
「だからそれを変えないと……!」
「変わらなくていいんじゃない? って言ってるんだけど~?」
水菜は俺から目を逸らさず、ただ当たり前のことのように言う。
「おーくんができないことは水菜ちゃんが助けてあげる。それでいいじゃん。そっちの方が楽だし楽しいよ~?」
「それじゃ、俺はいつまでも……」
「おーくん今楽しくないでしょ~? だから水菜ちゃんが楽しませてあげるの。おーくんは水菜ちゃんがやりたいことを邪魔するの~?」
ああクソ……。水菜はやっぱりわかってる。俺をコントロールする方法を、たぶん誰よりもわかってる。
「……金間と真壁を頼む」
「りょ~」
水菜の言う通りだ。今俺は、行く前よりもずっと楽しくない。
金間に真壁に樹来に水菜。俺の友だちの優しさに甘えることしか、今の俺にはできなかった。




