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過去に戻って高校生活をやり直してたら、知らない美少女後輩が俺のことを殺しにきている件。  作者: 松竹梅竹松
第6章 高2夏・林間学校

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第6章 第23話 裸の心 2

「ずいぶん遅いんだな」



 身体を洗い、風呂に入って俺の反対側に座った樹来に適当な声をかける。ちなみに金間と真壁は早々に出て行ってしまった。俺と樹来に気を遣う必要はないだろうし、純粋にそろそろ限界だったのだろう。1時間以上入ってたみたいだし。



「リルさんが虫を捕りたいって言ってたのを聞いたからね。君たちが仕掛けた罠にカブトムシを置いてきた」

「えぇ……」



 普段樹来のことを何でもかっこいいと思ってしまう俺だが、さすがにそれは気持ち悪い。リルが普通の人間だったら割とアウトだぞ。



「それで、いじめられたんだって? ざまぁないね」



 俺たち以外に誰もいないのをいいことに、樹来が性格の悪いことを言ってニィッと口角を上げる。



「まぁ仕方ないよな。俺だし」

「ああ。君だからね。嫌われるのは当然だ」

「そろそろ俺も上がるぞ。誰かと風呂入るの好きじゃないんだ」



 申し訳ないが、今の俺にこれ以上悪口を耐えられるメンタルはない。……いつからこんな弱くなったんだ。ほんと、こんなはずじゃ……。



「ところで。今の君はやり直し中、でいいんだよな?」



 樹来の横を通り抜けるそのタイミングで、樹来がさっきまでのわざとらしい悪態とは違う声色を発した。



「……ああ。リルがいるからな。期間は林間学校が終わるまで」

「と言うと、君はまた生き返られなかったんだな」



 天平を除けば唯一。俺のやり直しのことを知っている人間。それが樹来だ。リルの論文作成の妨げにならないよう、卒業式の日に死ぬこと以外のことは話している。



「どうやら俺のことを嫌いになった奴がいるらしい。1年のクリスマスから俺のことを嫌いじゃなくなり、この前のやり直しで俺のことを嫌いになった奴がな。そのせい……って言ったら申し訳ないけど、それが原因で俺は生き返れなかった」

「……かなり候補が絞られるな。悪いけど俺じゃないぞ。ずっと嫌いだから」

「わかってるよ」



 話が再開したのでとりあえず風呂に身体を沈める。タイミング的に樹来の隣になってしまった。



「それで? リルさんが実体化している理由は?」

「……俺のせいで、怪我をさせた。だから天使体になれない。ごめん、お前との約束を破った」


「別にいい……とは言えないな。リルさんを傷つけたお前は許せない。心の底から軽蔑するよ」

「ほんと……ごめん」



 そんなこと言われなくてもわかってる。俺がどうしようもない人間だってことは俺が一番。わかっているんだ。



「それで? お前は何をやってるんだ? 目星はついたんだろうな」

「……いや、まだだ」


「そもそも探してるのか? 俺にはそうは見えなかったけど」

「……あんまり、やってない」


「じゃあどうするんだ? またリルさんに助けてもらい、またリルさんを傷つけるのか?」

「……いや。それは……」


「お前がどう思おうが、リルさんはお前を助けるぞ。それなのにお前は……」

「わかってんだよそんなことはっ!」



 気がつけば俺は立ち上がり。全裸で樹来に叫んでいた。



「やらなきゃいけないことはわかってんだよお前に言われなくてもっ! でも俺は誰と付き合わなきゃいけないか決めなくちゃいけない! リルを楽しませたいし、天平に友だちも作らせたい! イベント同好会の活動もあるし、俺のことをいじめてきた奴らのフォローも考えなきゃいけないんだっ! 時間がないんだよとにかく……! だったら俺のことは後回しにするしかないだろっ!?」



 こんなはずじゃなかった。こんなことを言うつもりはなかった。それでも叫んでいた。どうしようもない気持ちを抑えることができず。ただただ叫んでしまっていた。



「……悪い。イライラしてた。お前に当たっても仕方ないのにな」



 これ以上身体を熱くするわけにはいかない。風呂を出てシャワーを浴びようとすると、床に落ちる水の嵐の中に。



「……いいだろ別に。俺に当たっても」



 樹来の声が、響いた。



「お前のやり直しを知ってるのは俺だけだ。お前の苦しみがわかるのは俺しかいないんだよ。じゃあもう、俺に言うしかないだろ」



 俺の視界からでは樹来の背中しか見えない。樹来に至っては俺の姿すら見えないだろう。それでも。それだからこそ、言う。



「俺はお前のことが嫌いだ。でも友だちだと思ってる。……わかるか? 友だちが余命宣告を受けているのに、助かろうとしないのを目の前で見る奴の気持ちが」



 俺に友だちはわからない。わからないから踏み込めない。勘違いしたくないから。



「お前に死んでほしくないんだよ、俺も。だから協力させろ。俺にお前を助けることはできない。でもお前の負担を軽くさせることはできるんじゃないのか?」



 でも、そうだよな。勘違いだけじゃ、ないんだよな。俺の、高校生活は。



「……リルを頼む」

「……いいのか? それだけで」



 お互い顔は合わせない。



「リルがしたいことは、たぶん俺じゃ叶えられない。虫がついてるか確かめるためだけに早起きなんかできないし、色んな楽しさを伝えることもできない。楽しくないからな」

「……そうやって余裕こいてると、俺がリルさんをもらってくぞ」



 それでも、構わない。



「リルを託せるのはお前だけだ。……たぶん心の底から嫌ってるわけじゃないしな。知ってるか? リルも陰キャなんだってさ。人付き合いが苦手なんだよ」

「ふっ。お前とリルさんを一緒にするな」



 だって俺と樹来は。



「……頼んだぞ、ヒーロー」

「ああ、任せろ」



 友だちなんだから。

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