第6章 第15話 捕獲
〇主水
2019年 8月22日(木) 09:43
「主水さん! 虫捕りに行きましょうっ!」
リルが夏休みの少年みたいなことを言い出した。
「……えー、やだよ」
リルがかつてないほど元気だが、こっちは朝でテンションが低い。まぁそもそも虫捕りでテンションが上がる高校生がどれだけいるかって話だが。
「なんでですかっ! コーカサスにヘラクスにケンタウルス! 夏はかっこいい虫がいっぱいですよっ!?」
「それ全部カブトムシだし夜行性だし日本にいないしかっこよくないし俺虫苦手なんですよ」
そういえばリルが真夏に人間界にいるのはこれが初めてか。にしても虫に好奇心が向くとは……。勘弁してほしいな。
「虫捕りたいならセミでも捕ってろ。そこら辺でいっぱい転がってるから」
「セミは嫌いですっ! さっき死んでたので埋葬してあげようとしたら急に騒ぎ出してびっくりしましたっ!」
あーセミファイナル食らったんだかわいそうに。
「とにかく虫だけは絶対に嫌だ。それに俺はこれから昼ごはんの準備だ」
初日だけは宿にごはんを用意してもらったが、ここからは経費削減のためこちら側が用意することになっている。
「なんか樹来たちがバドミントンやり行くって言ってたからそっち行ってろよ」
「えーせっかく残り少ないエネルギー使って網と籠作ったのにー……」
「お前の力の使い方は間違ってる」
しまった。かっこいい台詞をどうでもいいシチュエーションで言ってしまった。
「わかったよ……。後で罠を設置して夜見に行こうか」
「わーい! やりましたーっ!」
とびきりの笑顔ではしゃぎまわるリル。かわいいなこいつ。
「だからそれまでの間芽依たちのところに行くか……天平の様子見ててくれ」
「んー……そうですね。神無さんの動向が気になりますし、後者の方向かってきます!」
純粋に楽しんでいるかを見てほしかったのだが、俺の殺しの方に意識が向いていたか。まぁどっちにしろ同じことだ。
「ではいってきますっ!」
「はいいってらっしゃい」
夏休みの子どもを見送るような気持ちでリルに手を振り、一息つく。そうしていると、
「あ、主水だ。これからバドミントン行くけどどうする?」
動きやすい服装をした芽依が通りがかった。ちょうどいい。
「いや、これから昼の準備だから行けない」
「そっか。しょうがないね」
芽依との過去に決着をつける。簡単なことではないが、先送りにするわけにはいかないことだ。
だからさっさと自分から声を、かける。
「芽依、夜少し時間もらっていいか?」
「ふえぇっ!?」
これがやり直しの初めに、芽依から教わったことだ。




