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第5章 第3話 虐げられる二人

「リル様がわたくしを倒す……。ふふふっ。人間に触れて冗談が上手くなりましたわねぇ」



 リルの宣戦布告を受けたハロウは、いかにも余裕そうに微笑を浮かべる。



「2位と言っても私との差は、あなたと最下位との差よりも深い。しばらく会わない内にそんなことも忘れてしまったんですね」

「あら、そうだったかしら。御託はいいからかかってきなさい? わたくしはここから一歩も動きませんから」

「お望み通りに!」



 瞬間、リルの姿が俺の視界から消え。



「が、ぁ……?」



 次の瞬間には、少し離れた場所で腹を抑えてうずくまっていた。



「ぁ、あ……」

「かんなのこと忘れてもらったら困るよぉ、エリートさん!」



 目を大きく見開き、唾液を地面に垂らしていたリルの姿が再び消えた。何が起きたか理解できていない俺の視界に映っていたのは、脚を大きく上げている天平だけだった。



「なにを……した……!」

「たいしたことはしてませんよぉ。ただ蹴り飛ばしただけ。今ごろ校舎の裏にでもいるんじゃないですかぁ?」



 天平のピンクのパンツが見えていることなど気にも留められない。今のリルは実体化していない。校舎の裏にまで蹴り飛ばされたのにも関わらず、校舎に傷一つついていないことがその証明である。



 そう。実体化していないんだ。だから、人間が触れられるわけがない。それにそこまで蹴り飛ばせるほどの力も不可解だ。



「リル様から説明を受けたでしょう? わたくしたち天使見習いは、卒業論文作成のために人間に能力を授けることができる。有名なのはチート能力を授けて異世界転生させるというものですわね」



 確かに一歩も動いていなかったハロウが、棒立ちになったまま動けない俺の元へと近づいてくる。



「つまりわたくしも神無様に授けましたの。チート能力を」

「それは……一体……!」

「簡単に言うと、実体化した際の天使の能力と同等の力ですわね。筋力や相手の思考を読み取る能力。もっとも後者は天使と大矢様には使えませんが。あ、そうそう。今大事なのは、天使体にも触れられるの力でしたわね」



 冗談だろ……。髪にハサミが通らない防御力。銃弾を受け止められる視力。コンクリートの壁を一突きで貫ける攻撃力が、ただの人間にあるっていうのかよ……。



「どんだけリルを貶めたいんだよ……」

「ご安心を。こんなものでやられるリル様ではありませんわ。ほら、上をご覧なさい」



 ハロウに言われ、気づく。目に見える範囲の空が、漆黒の黒雲に覆われ、そのすぐ下にリルが浮遊していることに。



「相変わらず化物ですわね……。言っておきますけれど、天使見習いなら誰でもあれほどのことができるわけではありませんわ。リル様が特別、だったんですのよ」



 「まぁ決して撃ってこないとわかっている砲台を持っていても意味はないのですが」と結び、ハロウは俺の後ろに隠れる。まさかリルは俺を気遣って攻撃を控えているのか。



「本当におかしくなってしまったんですのね。殺したとしても生き返らせればいいだけですのに。こんな風に」

「主水さんっ!」



 さっきまで空高くにいたはずのリルの声がすぐ横から聞こえたかと思うと。



「本当に、がっかりですわ」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



 リルの身体が眩い雷撃に包まれた。



「ぁ……ぁ……」



 光が消え、中から現れたリルの身体が地面に仰向けに落ちる。服は所々焼け切れ、白い肌には黒い焦げが滲んでいる。そんな中瞳だけが白へと変わり、大きく開かれた口からは黒煙が上がっていた。



「あのエリートがこうも簡単に沈むなんて……。大矢様知っています? 天使は唯一地面だけは通り抜けられないんですのよ。天使と地面は対極の関係にありますからね。堕天という言葉が人間界にもあるでしょう? 天使にとって地に伏せられるというのは、これ以上ないくらいの屈辱なのですわ」



 脚を投げ出し、ビクンビクンと痙攣するリルの身体を軽く蹴るハロウ。まるで全知全能になった気持ちなんだろうな。そんな天使見習いに教えてやるとするか。



「ハロウ知ってるか? 人間でも、意識すれば思考を読み取られないようにできるんだよ」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」



 ハロウの身体が、さっきの雷撃以上の電気に包まれる。俺が手にした警棒によって。



「こいつは『ゲイ・ボルグ』。リルからもらった特殊な武器だ。安心しろよ、あんたが渡したインチキチートには程遠い能力だ。先端を押しつけると、どんな生物でも十秒とかからず気絶させる威力の電気が流れる。助けにきたリルがこれを俺に渡してたんだよ。あんたが散々馬鹿にしてきたリルがな」



 醜い悲鳴を上げながら白目を剥くハロウ。これが天使にも効くことはリルの身体で実証済み。そしてまだまだ気絶には時間がかかることも知っている。



「地面に倒れることが屈辱的なんだったな。じゃあ味わわせてやるよ。人間如きにやられるというリル以上の屈辱を!」



 そして俺が証明するんだ。どんな汚い手を使おうが、リルには遠く及ばないってことを。

シリーズ開始早々胸糞展開や誰得バトルが続きますが、全ては前振りです! ブクマ剥がさないでね!!!!!

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― 新着の感想 ―
[一言] バトル展開、、、嫌いじゃないッ!!!!
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