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過去に戻って高校生活をやり直してたら、知らない美少女後輩が俺のことを殺しにきている件。  作者: 松竹梅竹松
第5章 高2春・新入生歓迎会

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第5章 第32話 リスタート

「ご愁傷様ですわー」

「……ハロウちゃん」



 目の前に現れたハロウちゃんと話す。足元に広がる自分の血と、自分だった欠片の上に立って。



「よく会いに来れたねぇ。あんだけひどいこと言って」

「それはこっちの台詞ですわ。あの時あなたが動いてさえいれば、わたくしの論文は終了したというのに。生き返りたくないんですの?」



 そう。かんなは生き返れていない。今の状態はいわば幽霊。わかりやすく言うならば、天使のお迎えが来ている状態だ。



「……生き返りたいよ。でも、あの時。大矢主水じゃなくて、かんなが死ぬべきだって、思っちゃった」



 自分がクズなのはわかっている。でも大矢主水の方がずっとクズだから。かんなは正しいのだと思っていた。



 それでも、あの、大矢主水の言葉を聞いて。クズなのは自分だけだと。思い知らされた。



「……でもそんなの、関係なかった」



 たぶん。いや、間違いなく。かんなじゃなく、大矢主水が生き返るべきなのだろう。それでも、だ。



「また死ぬ痛みを味わうくらいなら他人を殺した方が楽だって……どうしようもなく思っちゃった」



 痛かった。苦しかった。耐えられなかった。正しさとかそんなのどうでもいい。かんなは死にたくない。二度目の死を体感し、改めてそう思った。



「でも……もう遅いよね」



 元々大矢主水は生き返るまでリーチのところまで来ていた。食い止める最後のチャンスが今回だった。それを逃してしまった以上、かんなはもう……。



「どうやら諦めるのにはまだ早いようですわよ」

「……え?」



 それって、どういう……。



「大矢主水は生き返るのに失敗した。まだチャンスは残されていますわ」



 生き返るのに失敗したって……なんで……。救命措置のやり方は教えたんでしょ……? まさかまた失敗して……。だとしたら本当に、かわいそうだ。あんなにいい人なのに……。



 はは、なに考えてるんだ。かんなはそのいい人を殺さなければいけないのに。そんなことを考えてしまったら、本当にもう、殺せなくなってしまう。



「……でも。確かにチャンスは残っていますが、たぶん。あなたは生き返れませんわ」



 あんなに偉そうに場を支配していたハロウちゃんが、初めて。辛そうな顔で弱音を吐いた。



「正直……自分でもドン引きしていますわ。主席になりたいだけで……。リル様が妬ましいというだけで、あそこまで非道なことができるなんて、自分でも思わなかった。そして、思い知らされた。リル様にはどう足掻いても勝てないと」

「……へぇ」



 心境を吐露しているハロウちゃんには悪いが、少し意外だった。あんなにノリノリだったからてっきり他人を傷つけることを何とも思わない、かんなと同じクズだと思っていたのに。



「ずいぶん失礼なことを考えていますわね。これでも天使ですわよ。良心に溢れていますわ」



 「それでも」、と。ハロウちゃんは一筋の涙を垂らした。



「どんなにズルをしてでも、リル様に勝ちたかった。あんな……才能に満ち、ただ楽しそうにしているだけで誰よりも優秀な天使に……負けたくなかった」



 たぶん、これが初めてだ。ハロウちゃんの本音を聞いたのは。



「騙し討ちをしても……逃げられてしまいましたわ。リル様を殺すことは叶わなかった。……そういう意味ではあなたと同じですわね。殺さなければならないのに、殺せなかった」



 本当に、同じだ。必ず勝てると思っていたのに、相手の底力を見せつけられ、心を折られてしまった。



 たぶんハロウちゃんは、もう立ち上がれない。リルさんには絶対勝てないとわかってしまったから。



「……ふざけんな」



 でもそれじゃあ、困るんだ。



「かんなは死にたくない。だから生き返る。そのために、ハロウちゃんの力が必要なの!」



 誰に嫌われても構わない。死ねと言われても気にしない。



 だってかんなは。まだこうして生きているのだから。



「もう少しだけ、一緒にがんばろうよ」

「……がんばったって、無駄ですわ。神無様も見たでしょう? わたくしはリル様の足元にも及ばない」

「じゃあいいよ――」



 ハロウちゃんにその気がないのなら、仕方ない。



「――かんなが新しい世界を見せてあげる」



 どんな手を使ってでも、かんなが勝ってやる。ハロウちゃんを導いてやる。



 そうしないとかんなは、生き返れないのだから。




〇主水




2021年 3月21日(日) 16:58




「リル……?」

「主水さん……!」



 気がつくと俺の前には、泥も消え去った綺麗な姿のリルがいた。



「よ、かった……。生きてたんだな……!」

「貫かれた瞬間、未来に移動しましたから。でも、ちっとも、よくありませんよ……」



 俺とリルは抱きしめ合う。たぶん、全く別のことを考えながら。



「よかったんだよこれで……。リルともう一度会えたんだから……」

「でも、これじゃあ、主水さんは……! なんで、こんな、なんで――!」



 理由は俺にもわからない。それでも今は、ただリルと会えたことを喜びたい。



 俺はあのクラスメイトたちと一緒にいた打ち上げ会場ではなく。



 たった一人の自室で。リルの胸の中で死亡した。

先週の日曜日投稿できなかった分、本日は二話投稿です!


次回、第5章最終回!

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