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過去に戻って高校生活をやり直してたら、知らない美少女後輩が俺のことを殺しにきている件。  作者: 松竹梅竹松
第5章 高2春・新入生歓迎会

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第5章 第26話 遺言 後編

「人間を生き返らせて永遠の苦しみを味わうか、人間を捨てて別の観察対象を探すか。本来考える必要もありませんわよね」



 天使にとって、人間はとても小さな存在だ。かんなだったらたとえペットだったとしても、アリを殺さなければ死刑なんて言われたら迷うことなく踏み潰すだろう。



 それでもリルさんは迷っている。いや、答えは決まっているけれど覚悟が決まっていないという感じか。ガタガタと震えながら、もう動かない大矢主水の手を強く。強く握っている。



「……たぶん主水さんでも同じことをすると思います」



 やがてリルさんが擦れた声で言う。



「きっと主水さんなら。泣きながら、苦しみながら。死にたくないと喚きながら死んでいく。そんな天使にもできない選択ができる人間を見てしまったから。私はこうなっちゃったんです」



 その選択は愚かとしか言いようがない。言いようがないが、口には出せない。かんなにはそんな選択肢を選ぶことはできないから。



「主水さんは本当なら生き返れていたんです。主水さんらしいちょっとした不運のせいで生き返れなかっただけで、もう充分過ぎるほどに主水さんはがんばりました。だから――」



 血と唾液が混じった汚い大矢主水の唇に。リルさんの綺麗な唇が重なる。



「――幸せになってください」



 二人が重なった時間は1秒にも満たない。それでもリルさんは満足げに。立ち上がった。



「主水さんと過ごしたこの5週間の想い出だけで、私は一生生きられます。さぁ、やってください」

「本当に愚かですわね。まぁどうでもいいですわ。神無様、リル様に報いを」



 そうだ。かんながやらなければならないんだ。ハロウちゃんはこの土を触れないから。



 かんなが。この美しく、儚い存在を終わらせなければならない。



「最期に何か言い遺すことはありますか?」



 かんなが躊躇っていると、ハロウちゃんがため息混じりに訊ねる。その言葉にリルさんは、あくまでも笑いながら答えた。



「せっかく人間と一緒にいられるんです。この時間を楽しんだ方がいいですよ。主席からのアドバイスです」

「人間に絆されたあなたに主席の資格はありませんわ。さぁ、神無様。終わらせなさい」



 かんなを見ることもなくそう命じるハロウちゃんに、かんなは。



「……わかった」



 口答えすることもなく、頷いた。



「……ごめんなさい」



 優しく微笑むリルさんの胸に。かんなは『シールソイル』を押し付ける。すると土が広がり、リルさんの四肢を捕まえ、



「あああああああああああああああああああああっ!」



 リルさんの絶叫が轟いた。



「いだいっ! あぁっ! あああああああっ! だずげ、ぁっ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」



 土に絡めとられながらリルさんは叫ぶ。耳を塞ぎたくなるほどの悲痛な叫び。これをかんなが引き起こした。



 でもしょうがないじゃないか。かんなだって命が懸かってるんだから。かんなは悪くない。命じたのはハロウちゃんだし。



「ごめっ、んなさい! 主水さんを殺していいから! あぁぁぁぁっ! たすけてっ!」



 胴体が完全に土に呑まれ、覚悟すらも無機質な粘土の中に消えていく。それほどの苦しみなのだろう。だがそれすらも、もう。



「も……さ……。た……け……て……」



 白目を剥き、鼻水を垂らし、口を大きく開け、舌を長く伸ばしたリルさんの不細工な顔が。



「も……ん……ぁ……あぁ……」



 土へと変わった。



「……ふふ。あはは……!」



 できあがった悲痛な表情の土人形を見て、ハロウちゃんは笑う。



「あの天才の最期がこれとは……。盛者必衰ってやつですわね」



 抵抗もできない土人形を蹴り飛ばし、踏みつけ。ハロウちゃんは笑う。



「これでわたくしが主席ですわぁ……!」



 ただただずっと。ハロウちゃんは笑った。




2019年 4月8日(月) 16:12




「――なんてことがありましてね。あなたの命と引き換えに、リル様は地獄に堕ちたんですのよ」



 もう二度と思い返したくもないあの日の出来事を語り終え、やはりハロウちゃんは笑った。



「わたくしとっても優しいので約束は果たしましたわ。ま、生き返らせると言っただけでその後はわたくしの自由なのですが……クク」



 そうだ。リルさんを終わらせただけではかんなは生き返れない。



「あなたを殺して初めて論文は終わりを迎えられる。さぁ、クライマックスですわよ、神無様」



 リルさんに土を押し付けた時の感触は、きっと死ぬまで忘れないのだろう。



 一つの命を終わらせた罪悪感。やはり二度とは味わいたくないけれど。



「――俺が間違っていた」



 大矢主水が懐から警棒を取り出す。確か『ゲイ・ボルグ』とか言ったか。ハロウちゃんですら動けなくなるほどの雷撃を放つ武器。そして、かんなを殺せる凶器。



「もっと早く、お前を殺しておくべきだった」



 そう。二度と味わいたくないけれど、仕方ないんだ。



「同感です」



 かんなは悪くない。殺されそうになってるんだから、しょうがない。



 殺さなければ死んでしまうのだから。かんなが大矢主水を殺すのも、仕方がないことなんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] えっぐぃことするなぁ、、、、
[気になる点] ハロワって本当に天使見習いか? やってることが天使どころか悪魔のすることだよねこれ。 ってかこれらをどう論文にするんだよ… 絶対碌な論文にならねえよこれ。 [一言] ここまでかなりヘイ…
2021/07/13 12:59 Consideration_0
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