第5章 第24話 天からのメッセージ
〇主水
「……ん?」
なんだ……ここ。ベッドで寝てて……白い天井が見えて……保健室……いやよく似ているけど違う……。ていうか知ってるぞこれ……12月にもこんな……。
「病院……?」
「おにぃっ!」
白い毛布の上に、卯月の顔が埋もれる。わずかに見えたその場所は、純白の雪に溶けた水のように色が変わっていた。
「なんでおにぃはこんな……! 4ヵ月に1回死にかけるの……!?」
死にかける……? ああそういえば卯月の友だちに押されて階段から落ちたような……。
「瑠璃にも心配かけて……! ちょっと肩押したら階段から落ちたとか……本当にショック受けてたんだからね……!?」
いやあれ結構強く押されたような……。あぁなるほど……天平の仕業か。芽依たちにもやった洗脳に近い何かを使い、俺を突き落とした。それでハロウがお友だちからその記憶を消したってところだろう。
やってくれたなほんと……。それで気を失った俺が病院に運ばれて――。
「……卯月。今、何日の何時だ?」
「え? 確か……」
2019年 4月8日(月) 16:01
「うそ……だろ……」
ついさっきまで木曜日だったのに……4日間も寝てたってのか……?
いや、それよりも。俺が過去にやってきたのは4月1日の16時23分。そして過去にいられる時間は1週間のみ。
つまり残り22分しか、この時間にいられない。
「リル……!」
天平の動向は気になるが、今はリルが最優先だ。芽依たちには俺が心臓発作を起こした時の対応を教えた。どれだけ理解してくれたかはわからないが、もし無事に助かるのだとしたら。俺はリルと会えなくなってしまう。
つまりこのタイムリミットは、リルと共にいられるタイムリミットでもある。新入生歓迎会があっただろうにここにいてくれた卯月には悪いが、1秒たりとも無駄にしていられない。リルと……リルと最期に話して……!
「いな、い……?」
正確には返事が返ってこない。リルは俺から見えないようにすることもできるから実際にここにいるのかどうかはわからないが、それでも。リルの気配を感じない。
ただ卯月に気を遣って隠れている可能性もある。だがこれはあくまでも可能性。真実は間違いなく――。
「そろそろ起きる頃合いだと思いましたよぉ、大矢主水せんぱい」
「天平ぁ……!」
俺が目を覚ますタイミングを知っていたかのように現れた天平神無は。
「少しお話しませんかぁ?」
意趣返しとばかりに、笑みを見せた。
2019年 4月8日(月) 16:07
「かんなだってこんなことしたくなかったんですよぉ」
鍵のかかった病院の屋上の扉を天使と同様の力で破り、天平は歩いていく。
「でもしょうがないですよねぇ。正当防衛ってあるじゃないですかぁ。それと一緒。生きるためなら他人を傷つけることは認められてるんですよぉ」
夕方だというのにまだ空は青く澄み、天の光が俺を、俺たちを。否定するかのように輝いている。
「だからかんなは悪くないんです。悪いのは全部、あなただけ。あなたと関わった存在は全て不幸になるんです」
天からの光は天からやってきたハロウを照らし、その横の。
「だからリルさんは、もう二度と目を覚ますことはありません」
土くれになったリルを、見下ろしていた。




