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過去に戻って高校生活をやり直してたら、知らない美少女後輩が俺のことを殺しにきている件。  作者: 松竹梅竹松
第5章 高2春・新入生歓迎会

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第5章 第14話 脅迫~神無の場合~ 後編

 全ては樹来を天平の元へと潜り込ませるための作戦だった。



 何人もの強力な敵対者たち。天平には恐怖で仕方がなかっただろう。



 そんな中同じく俺を嫌うヒーローの登場に、天平の心が躍らないわけがない。



 それは天平の行動に支障が出ない程度に監視、報告してくれたリルが証明してくれている。



 樹来に心の声を聞こえなくする術を教えて接触させるという作戦は無事成功に終わった。



「悪いな、樹来。面倒な役割押しつけて」

「別にお前のためじゃない」



 自身が否定しているとはいえ、あまりにも完璧超人な樹来にも一つだけ欠点がある。俺とリルしか知り得ない欠点が。



「全部リルさんのためだ」



 そう。樹来はリルに惚れている。病的なまでに。



「リルさん。君のためにおいしい食パンを買ってきたんだ。食べさせてあげるよ」

「いえ本当に結構です。食パンだけ置いて少し離れてください」



 得意のイケメンムーブは人間の顔なんてだいたいどれも同じというリルには通じず、想いも完全に通じていないが、それでも樹来はリルを諦めていない。天使だということを知っても尚だ。



「にしても危なかったな。天平が協力者がいるって発想を貫いてたら終わってた」

「ありえないですよ。過去をやり直していることを他人に教えるなんてデメリットでしかないこと、普通しませんもん」

「それもそうだ」



 だとしたらそれをしてしまうという俺の愚かさを計算に入れなかった天平のミス……と言うのは少しかわいそうか。



「ところで樹来。天平のことはどう思った?」

「どう思ったって訊かれてもな……。普通の子、という印象しかないな。俺の顔と外聞に惹かれるいたって普通の女子だ」

「嫌味にも聞こえないな……。まぁとにかくその通り。普通の奴なんだよ」



 陽キャと陰キャで二分した時、どう考えても陰キャの方が数が多くなる。カーストのピラミッドと同じだ。だから普通なら、自然陰キャ寄りになる。



「顔こそいいが、それが裏目。陰キャの男子に囲まれ、格上の女子にうざがられる存在。いわゆるオタサーの姫ってやつだ」



 天平は覚えていないようだが、俺と天平は一度会っている。俺が1年次の文化祭で出遭い、少しの間だが学校を一緒に回った。そして俺を嵌めた。



 俺のことが気に食わないカースト準上位の奴に利用されていたんだ。思えばあの時から一貫して天平への印象はオタサーの姫でしかなかった。



「それで? オタサーの姫だとどうなるんだ?」

「超絶陽キャの樹来と接点を持ったことであいつはオタサーの姫じゃいられなくなった。陰キャ男子からは高嶺の花に見られるし、格上女子からはより疎まれる。つまり囲まれる人がいなくなるんだ。そして普通の人に、孤独は耐えられない」



 俺のような真正の陰キャじゃないんだ。いくら天使と同等の力を持っていても、人間である以上独りっきりには限界がある。そして今は1年生の初め。初めで躓いたらどうしようもない。



 それに加え、明日追撃を仕掛ける。これで天平は終わり。俺の勝ちだ。



「ただなぁ……。順調すぎるんだよなぁ……」

「それの何が問題なんだ?」

「お前みたいな奴とは違って、俺みたいなゴミは何やっても絶対に上手くいかないんだよ。舐めんなよ俺のダメさを」



 気にはなるが、対策の打ちようもない。樹来の協力のおかげでバフがかかっていると考えておくか。



「じゃあ1週間頼んだ」

「ああ……。それはいいが……」



 そろそろイベント同好会に顔を出すかと思って屋上から帰ろうとすると、樹来が静かに口を挟んだ。



「……本当に大丈夫なんだろうな」

「まぁ……今のところはたぶん……」

「たぶんじゃ困るんだよ」



 樹来にしては珍しい強い口調の理由。そんなの、考えるまでもない。



「お前がしくじれば、傷つくのはリルさんだ。昨日もリルさんをひどい目に遭わせたんだろ? お前……頼むからしっかりしてくれよ」



 本当に樹来はリルのことが好きだな。たぶん、俺よりもずっとリルのことを想っている。




「ああ……わかってるよ」



 そのことが無性に、むかついた。

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