第5章 第13話 脅迫~神無の場合~ 前編
「樹来……せんぱい……」
うそでしょ……。あの……あの完璧イケメンせんぱいがかんなに……かんなだけに会いにきた……。
「ど、どうしましたか?」
落ち着け落ち着け。前髪……大丈夫。顔もいつも通りかわいい。それにしてもなんで樹来せんぱいが……わかった。大矢主水か。ありえないことだが、樹来せんぱいと大矢主水は友人関係にあるらしい。大矢主水が差し向けた刺客といったところか。ワクワクして損した。
「大矢から君のことを聞いてね。少し興味を持ったんだ」
やっぱり。ま、七海文の彼氏だし狙ってはいなかったけど……。
「写真を見せてもらったんだが……驚いた。実際に見る方がよほど綺麗だ」
「っ」
綺麗……! え、うそ、もしかして口説かれてる!?
「そ、それほどでも……」
何か裏はあるんだろうけど……悪い気はしない! これも一種の役得だ。しかもクラスのモブ女からの羨望の視線を感じて……やば! 生きてるって感じする……!
「大矢から君に釘を刺すように言われてね」
あまりにも素直にそう言い、樹来せんぱいはかんなの前の席に腰かけこちらを向く。
「でもやっぱりやめだ。君のようなかわいい子にひどいことはできないよ」
「ふへぇ……」
かわいい……かわいいって言った……。やっぱかんなかわいいんだ……! いやだから落ち着かなきゃ。
「そんな口説いたって無駄ですよ? かんな、二股とか許しませんから。樹来せんぱい、七海せんぱいとお付き合いしてますよね?」
「よく言われるんだが、それは事実無根だよ。ただの幼馴染ってだけで、文とは何の関係もないんだ」
え、そうなんだ。いや……変わった過去だと付き合ってないんだ。だとしたらチャンスあるかも……? 人が多すぎて切っていた心情読み取り機能をオンにして……。
「え?」
ウソでしょ……。心の声が聞こえない……? こんな、ことが……。やっぱり大矢主水の差し金……?
いや、過去をやり直しているなんて他人に言えるわけもない。生徒会長さんも読み取りづらかったし、そういう人間もいるのだろう。
「大矢のことが嫌いって聞いたけど本当?」
「い、いえそういうわけでは……」
「無理しなくていいよ」
いい子ぶろうとしたかんなを制止させ、樹来せんぱいは告げる。
「俺も大矢のことが嫌いなんだ」
かんなと同じ感情を。
「むかつくだろ? 陰キャのくせに陽キャぶって……。あいつと話しているとイライラするんだ。猿と話してるって感じかな……。同じ人間だと思えないんだよ」
「わかりますっ! ほんとあいつ調子乗ってますよねっ!」
「はは。気が合ってうれしいよ。そうだ、連絡先交換しようか」
「はいっ、ぜひっ!」
うわ、すご……樹来せんぱいの連絡先だ……! こんなの前じゃ絶対無理だったよ……。
「それじゃあ俺、サッカー部の練習があるから行くよ。また連絡するね」
「はいっ。ではまたっ」
爽やかすぎるほどに爽やかな笑みをこぼし、教室から去っていく樹来せんぱい。教室のどこかから女子が思い出したように息をする声がした。
「ふ、ふふふ……」
今日は完敗だと思ってたけど……前言撤回だ。樹来せんぱいと話せただけで大幅プラス。だってクラスの女子からの憧れの的だもん。
ほんと、やり直してよかったぁ……。
〇主水
2019年 4月2日(火) 15:43
「おかえり」
「ただいま」
たとえ天使が偵察に来てもリルが気づける、周りに遮蔽物のない屋上に樹来が帰ってきた。
「言われた通りにしてきたぞ」
「ああ、リルから聞いた。ありがとう」
「ちなみに俺がお前のことを嫌いなのは本音だからな」
「知ってるよ」
俺は樹来に嫌われている。それでも友だちだ。裏切ることはありえない。
そして大前提として。天平はわかっていない。
「復讐なんて陰キャらしいこと、俺が一番上手いに決まってんのになぁ」
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