第4章 第36話 辿り着いた未来
2021年 3月21日(日) 16:58
俺は今日の17時、死亡する。
高校の卒業式の日、死ぬんだ。
それを知っている理由は単純。既に経験したから。
俺は死んで。天使に出会った。そしてやり直したんだ。高校生活を。
友だちがいないせいで打ち上げに誘われず。たった一人で死んでいく高校生活を、過去に戻ってやり直した。
そして作った。陰キャの俺を打ち上げにまで呼んでくれる友だちを。
だから俺は生き返る。正確には生き残ることができる。
今俺の周りには、友だちがいてくれているのだから。
「うっ」
き、た……! 呼吸もできなくなるほどの、胸の痛み。到底立っていられず、床に倒れてしまう。
「……主水?」
「どうしたのおーくんっ!?」
「大変……! 大矢くんの息が浅い……!」
痛い痛い痛い痛い痛い。信じられないほどの痛みだ。目は開いているのに、朦朧として何も見えない。かろうじて感じるのは、友だちの声だけだ。
それでも、今はいい。心臓マッサージでも、AEDでも何でもいい。とにかく、助けてさえくれれば……!
「ど、どうしようこれ……! 人工呼吸とかやった方がいいのかな……!?」
「それなら私がっ! あっでもやり方が……!」
「誰かできる人は……!?」
……え?
「きゅ、救急車何番だっけ……!?」
「110番! 急いでっ!」
「そ、それよりも早く大矢くんを何とかしないと……!」
いやちょっと……待ってくれ……。
「あれ! LEDみたいなやつっ!」
「そんなのどこにあるのっ!?」
「私探してくる……!」
こ、んなことあるかよ……。せっかく、誰かと一緒にいる未来に辿り着いたのに……誰も、救助のやり方知らないなんて……!
「こ……んなはずじゃ……!」
そして、俺は。
「なかった……の、に……」
死亡した。