【婚約破棄】悪役令嬢の考察【ざまあ】
「悪役令嬢は滅びぬ。何度でも蘇るさ。婚約破棄の力こそ人類の夢だからだ!!」
ドーモ。エッセイ読者さん。毛の生えた底辺作家デス!ハゲジャナイヨ!
最近何かに付けて批判の多い婚約破棄からのざまあ物。文句を言いたい気持ちもわかります。なんのアレンジもないテンプレのままでランキング上位を席巻している。読んでいても楽しくない。それはそうだと思います。
でもね、ぶっちゃけて言えばそれだけ需要があるんですよ。読まれない話なんて書きたがる人はよほどマニアックなのか自信があるのかのどちらかです。婚約破棄を絡めるだけでPVが2倍になるのであれば、多くの書き手は利用するでしょう。
これは「もう遅い」なんかも同様ですね。人気だからテンプレになりテンプレだから人気になる。
では何が読者を引きつけるのか。私にはかけない王道の婚約破棄はシンデレラの進化系だからだと思っています。
シンデレラは言わずとしれた世界中で最も知られた物語です。内容は私が今更話すまでもないことですが簡単にいかにまとめると
・拾った宝くじで1等を当てるような幸運以外何も持たないドアマットにされた底辺主人公
・謎の魔法使いにチートをもらってダンパに参加
・イケメン王子を魅了しガラスの靴を捨てて撤退
・王子に追いかけさせることでマウントをとり事実上カースト単独トップに君臨する
これが大体のシナリオです。要するに底辺が頂点に駆け上る女版太閤立志伝なわけです。秀吉さんもびっくりするレベルですね。
シンデレラストーリーとも呼ばれますが批判もあります。
①シンデレラ症候群と言われるように本人の努力はほぼなし。
②魔法やガラスの靴など非現実的
多くは①に関することで、目的を持って努力することが正しい人のあり方なのではというもの。このへんは『正しい行いをしていれば良い結果が訪れる』というカトリック的な価値観と、『努力こそ正しい行いでありそれにより良い結果が訪れる』というプロテスタント的な価値観との根源的な問題で両者が和解することはないでしょう。
逆に②に関しては夢見る乙女が憧れる話ではある一方で、現実ではないのだとの暗示でもあるので一長一短であったりするのだと思います。
それらを前提にしたところででは婚約破棄とはと考えると
・主に冤罪などでの断罪を含む婚約破棄により王子に捨てられ底辺に落ちる
・王妃教育や知識チートを含む努力?を経て復権する
・断罪返しでざまあする。
・何故か現れる更に上位の王子を捕まえてカースト単独トップに君臨する
シンデレラからの変化は単純な増加関数から、V字構造の減少関数からの増加関数しかも極大値はエンディングという折返し構造になっている点です。
絵にすると(*^^*)/が\(^o^)/になった感じ。
両者ともに不遇の少女が駆け上がっていることには変わりはないのですが、落としてあげることによりよりインパクトが出てきます。お相手に関しても一段上のイケメンが出てくることでカースト上位の更に上になったということになります。大抵の読者はシンデレラを知っているわけですから、続編の登場人物がよりハイレベルになったと感じることでしょう。ザクがハイザックになったようなものです。
これに加えて
・ざまあが入ることでの復讐譚としてのストーリーの取り込み
・努力しないヒロイン像の払拭
・善行にのみ焦点を当てたキリスト教的なものから因果応報的な仏教的価値観への変更による日本人受け
という要素を追加しています。初代とZでそれぞれファンが居るように進化系と言っても必ずしも後者が優れているわけではありませんが構造は複雑になっています。
複雑化している一方で新たな問題も出てきます。
一つは王子の劣化です。物語の類型の話なので皇子であったり公子であったりは問いません。
シンデレラであってもよく考えれば王子は嫁探しのために国中を引っ掻き回すアホボンなのですが、婚約破棄を言い渡す王子はそれに輪をかけたアホっぷりをさらさざるを得ません。有能を騙るケースもありますが、少なくともヒロインよりは低能でなければ話が成立しません。
「こんな王子で大丈夫か?」
との問に対して
「大丈夫だ!問題ない!」
と作者は答えなければならないのです。「王子以外の取り巻きもアホとかこんなん国が滅ぶやろ」という疑問(実際に滅びるケースも有り)を持っていてそれがリアリティの喪失に繋がります。作者に至っては顔を背けながら王子を踏み台にしたあ!とやっているわけです。
もう一つは世界観との矛盾です。婚約破棄ということは婚約が当然の世界観ということになります。にもかかわらずハイプリンスは何故かフリー。なんでそんな優良物件が売れ残っているの?おかしいですよカテジナさん!
第二王子に断罪されるのに第一王子はフリーとか、おもしれえ女以外は興味なさそうな皇帝とか、実家に戻ると権力を取り戻すのに冒険者をやっている王子とか、石を投げれば王子に当たるレベルでそこかしこにいるフリーの優良物件。それを射止めるのはハイアホボンに捨てられる程度のヒロインですよ。
バイオセンサーで何もかも台無しにされるヤザンとかサイコフレームでコロニーレーザーを防がれてしまったりとか、ファンタジーすぎやしませんかねと思うのも当然でしょう。
私にはこれがどうにも受け入れられなくて王道がかけない。チート持ってたりハイレベルの教育受けてたりするんだから自立しろよ。今更男にすがるなよとか言うのもあります。結果斜め上の話になりニッチにしかなれない。大衆が望んでいるのはトヨタなのだ。スバルやマツダはマニアの乗り物だというのにこの有様である。(関係者の方ごめんなさい。)
優良物件がそこかしこに転がっている弊害がもう一つ。それは婚約破棄で齎されるヒロインの傷が限りなく小さくなるということにもある。婚約が当たり前の世界でかんたんに次の相手が見つかるようならそもそも傷になっていない。致命傷からの奇跡の復活劇を見たかったのに実際は注射針のあとレベル。30分ほど消毒液を含んだ脱脂綿を当てておいてくださいでは事故物件を捨てて自由恋愛バンザイになっただけ。
前にも述べたように進化系であるのはV字機動のジェットコースターであるからで、登るだけのロープウェイでは夢のようなおとぎの世界から現実の汚さが見え隠れすることで退化している。しかももともとが高位貴族であることが多いため、標高差のあるロープウェイどころかエスカレーターで上階に登っただけというレベルにも・・・。
この辺の設定を詰めないで書くと駄作に成り下がる。設定が複雑化する分、短編では分量的に盛り込みきれない部分にもなると思う。結果は粗製乱造のテンプレ婚約破棄逆転劇もどき。批判が巻き起こるのもむべなるかな。
一方で物語を読むのは非現実の世界に浸りたいからなのだから、現実を持ち込みすぎるのは良くないというのもまた真実なので、ある程度は飲み込むのが正義なんでしょうけどね。
なんだかんだ言ってこの手の王道話を好んで読むのは大人の階段登っちゃう歌に見られる少女たちが中心なわけです。要は憧れるイケメン王子様に追いかけられればそれでいい。
「悪いのはイケメンの重力に魂を引かれた人間たちだ。けど、そのためになろうを否定するなんて、間違ってる!」
というわけで結局粗製乱造でも需要はあるし婚約破棄物はなくならないよねと思うこの頃です。
多くの作者がこのお題に挑んでいるのだから、これらの矛盾や批判を解消しいずれはさらなる地平が開拓されるのだと思います。
それまでは批判しつつも温かい目で見守るのがいいのではないでしょうか?
余談ですがガンダムのツノって王冠のイメージなんですかね。白基調で白馬に乗った王子様というかカラーリングはリボンの騎士みたいな気がします。こんなところにもイケメン王子が・・・。
6/1このエッセイのPVが2日で689
前作の連載の不遇は非公開にしてしまいましたが1週間で154
婚約破棄の人気の高さがこんなところでも証明されてしまった。
週末公開予定の短編は婚約破棄ものじゃないんだよなぁ
今から結果にビビってます^^;
6/14、12作目の余波でこのエッセイのPVが2000を超えました。
非公開にした王太子の話が500、その他は200行かないくらいなのに・・・
婚約破棄と異世界恋愛おそるべし