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絶望に染まる少女と少女の幸せを願う青年 9




 俺達は歩き、やっと最後のアジトに着いた。

 ヴェノムは時計を覗き少し考えてから言った。


「ここが最後のアジト、遊技場だな。恐らく今回は中に客もいてるだろう。基本的に無視だが、邪魔な様なら蹴散らすなり殺すなりして行け。」

「ちょ!?無関係の人を巻き込むのか?」


 俺は焦ってヴェノムに尋ねるが、


「お前は俺達が正義の味方だとでも思うのか?そんな訳ないだろ。邪魔する奴は蹴落として行く。それがこの街で伸し上がる方法だ。覚えとけ。」


 そう言いヴェノムはタバコに火をつけると、


「作戦はさっきと変わらん。行ってこい。」

「じゃあ今回は俺から行くぜぇ〜。串刺しだぁ〜!」


 ブランが走って行き、黒服の近くに着くと地面に手を置き、


 ズドドドドッ!


「ごはっ!?」


 黒服の男は何が起こったのか分からず、串刺しにされた。

 オリヴィアも突っ込み、


「お前だけにはやらせねえよ!」


 ドカーン!!!

 銃をぶっ放し扉を破壊した。


「きゃーーー!!!」

「なんだ?なんだ?」

「どこかの組織が襲撃に来たぞー!」


 ワァーワァー。

 客が騒然とし、一気に場は混乱の渦と化した。

 黒服達がこちらに向かって来て、


「最近うちのアジトを襲撃してるのはお前等か!どこのもんだ!」

「どこの組織でもねえよ。ただ、依頼された品物を取りに来ただけだ!」

「ぎゃはは!お前達はやり過ぎたんだよ!粛清だぁ〜!」


 ドカン!ドカン!

 ズババババッ!


「おいロイド!ここは抑えとくからお前は科学者を探して来い!」

「了解!」


 俺は2倍強化を使用し、戦場と化した店内を駆け抜けた。




 遊技場地下……。


 ピチョン。ピチョン。

 どこかから漏れる水の音しか聞こえない。

 私は一体何日ここに閉じ込められているのだろう。

 後何回、痛みや恥ずかしめを耐えたら良いのだろう。

 ミリアはそう思ったが、考えても無駄だと思い思考を停止した。

 私は某国の諜報員として各国に潜入し、色々な機密情報を手に入れていた。

 しかし、とある国に潜入調査中、同じ部隊の仲間に裏切られ捕まってしまった。

 その後、誰にも見つからない場所で尋問を行うと言われ連れてこられたのがここ、アレックスファミリーだった。

 どうやらこの街は、地図上から消されている街らしく、簡単には発見する事が出来ないそうだ。

 ここに連れてこられてからは毎日が尋問の日々だった。

 黙秘をしていると殴る蹴るの暴行、更には女としての尊厳を傷つける行為をされる事もある。

 しかし、自分が傷付く分には耐えられたが、仲間が傷付けられるのを耐えるのはキツかった。

 自分の目の前で仲間が殴られ、蹴られ、そして最後には殺される。

 いくら国の為とは言えここまで耐える意味はあるのかと思ったが、偶然私の目の前の檻には恋人のアルがいた。

 アルも度重なる拷問により、身体中が傷だらけになっており更には、一部欠損している部分もあった。

 アルはその強靭な精神で耐え切り、誰もいない時いつも私を励ましてくれた。

 しかし、アレックスファミリーのボス、アレックスがこの街でしか手に入らない特別な薬物をアルに使用し廃人にさせた。

 今の状態のアルは、ヨダレを垂らしながら天井をずっと見続けている状態だ。


「ミ……リ……ア……。」


 時折私を呼ぶアルの声が何よりも耐えられない拷問だった。

 最初は心の中でアルに謝っていたが次第に、私は何も感じれなくなってしまった。

 それと同時に拷問されようが、陵辱されようが何も感じなくなってしまった。

 人形のようになってしまった私を見て男達は気味悪がり近付かなくなった。

 そうして最低限の食事だけが運ばれるだけの日々になってから何日経ったか分からないが、ある日……。


 ギィィ〜。


「なんだここ?臭せぇ!」


 一人の男の声が聞こえた……。




 俺は店内を駆け抜けターゲットの元へ急ぐ。

 黒服の奴等は、オリヴィアとブランの方を注目しており、こちらにはあまり目を向けておらず、順調に進んでいた。

 ひとまず物陰に隠れ、様子を見ている時にふと思った。


(あれ?ターゲットが囚われてる場所ってどこだ?確かフローリアは地下と言っていたが、入口はどこなんだろう。)


 無闇に探し回るより聞いた方が確実だな。

 と、そこに援軍として向かっている一団を見つけた。人数は6人ってところか。

 よし!あいつ等から聞こう。

 俺が隠れた物陰を通る直前に飛び出し、先頭を走っていた男を殴り飛ばす。


「なっなんだ!?」

「ここにも隠れているぞ!」

「撃てー!」

「撃たさねえよ。」


 ヒュン!

 ドカッ!バキッ!ボコッ!

 あっという間に5人をぶちのめし残りは1人になった。

 1人になった男は慌てながら銃を構えるが既に俺はおらず、


「動くな。動いたり騒いだりしたら首の骨を折るぞ。」


 俺は男の首を絞め、警告した。

 男はコクコクと首を縦に振り両手を上げた。

 その体勢のまま俺は、


「人質が囚われてる場所を教えろ。」

「そんなもん教えられるかよ!」

「そうか。じゃあ死ぬしかないな。」

「まっ待て!教えるから殺さないでくれ!人質のいてる場所は、ここから突き当たりの扉の手前に隠し階段がある!その中だよ!」

「わかった。殺しはしないがしばらく寝てろ。」


 グッ!

 首を絞める力を強め、男を気絶させる。


「さて行くか。」


 急いで隠し階段のある場所まで走って行った。

 そして、言われた通りの場所を探すと、


「おっ!あったあった。ここだな。」


 ギィィ〜。


「なんだここ?臭せぇ!」


 色々な悪臭が混ざった臭いがして鼻が曲がりそうだった。

 俺は覚悟を決め、階段を降りて行くと、

 ……見つけた。

 両腕を鎖に繋がれている少女を発見した。

 ……なんだよこれ。

 少女は全裸で鎖に繋がれており、顔や身体が青アザだらけで明らかに殴られた形跡があった。


「おい!君がミリアか?助けに来たぞ!」


 俺がそう言うと、少女は1度頷き俺を見た後、再び目線を下げた。

 やばい。もしかしたらこの子は壊れる寸前なのかもしれない。


「今出してやるからな!」


 カチャリ。

 壁に牢屋の鍵が掛かっており、それを使い牢屋の鍵を開ける。

 そして少女に取り付けられていた鎖も外すと、


「これで大丈夫だ!さあ行こう!」


 俺は手を差し伸べながらそう言った。するとミリアが、


「……ア……ル。」


 アル?誰だ?

 そう思いミリアの視線の先を見てみると、反対側の牢屋にも捕まっている男がいた。

 見た感じ薬物中毒のような雰囲気を出している男がいた。


「あいつは知り合いなのか?」


 コクッと一度頭を頷いた。

 アルの牢屋の鍵を開け、鎖を外すとアルは這いつくばりながら俺の足元に辿り着き、


「ミ……リ……ア……。」


 ミリア、とうわ言のように何度も繰り返し呼んでいた。

 意識があるのかないのかも分からず確認の為に、


「お前の名前はなんだ?」


 と、尋ねてみたが、意識が混濁しているようで返事がない。

 相当キツい薬を打たれたか、何度も繰り返し打たれたんだろうな。

 なんて酷い事しやがる。

 俺はまだ見ぬアレックスを考え、腹が立った。

 さて、とりあえずは2人を逃がさないといけないがまずは、ミリアの服をどうにかしないとな。

 流石に全裸の少女を連れたまま歩いていたら捕まっちまう。

 それどころか、捕まる前にオリヴィアにぶっ飛ばされそうだ。


「ミリア、君の服を探してくるから、一旦牢屋の中に戻っていてくれ。」


 そう言い、もし黒服が来ても良いように2人を戻し牢屋の鍵束からミリアの部屋とアルの部屋の鍵だけ抜き取った。それをミリアに渡し、


「この鍵は君が持っていてくれ。他の鍵は元の場所に戻しておく。」


 それだけ伝え、俺は急いで服を探しに戻る。

 隠し階段を上がると、戦闘が落ち着いたのかオリヴィアがこちらに向け走って来ていた。


「ロイド!見つけたか?」

「あぁ!」

「じゃあ早くずらかるぞ!今、ブランが幹部と戦ってる!」


 そう言いオリヴィアが階段を降りていくと、すぐに怒った表情で俺を蹴ってきた。


「お前!服くらい貸してやれよ!」

「俺のかよ!」


 言われて反論するが、時間がもったいない為俺は服を脱ぎミリアに着させる。

 身長の低いミリアは俺の服を着ただけである程度は隠れるが、なんと言うか……なんかエロい。

 オリヴィアが俺を睨み、


「変な事考えてんじゃねえだろうな。」

「さっ行くぞ!」


 オリヴィアと目線を合わせないようにし、俺は脱出ルートを考える事にした。




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