吼える鼠4
「はぁ!?本気で言ってんのか?」
キングは事情を聞き困惑する。
「それしか方法がないんだと。」イワトビはジェーンを見た。
「沖合いに停泊するタンカーに全てが有るんです。そこを狙わないと何の解決にもなりません。」
「だからって、襲撃かけるなんて狂気の沙汰としか思えない。」
「近く迄乗せてくれればいいさ。おやっさんは俺達を降ろしたら、とっとと逃げてくれて構わない。
キングはどうするべきか悩む「しかしだな......。」
「まっ、どうにかなるさ。」イワトビの余裕が余計怖かった。
真っ暗な海を進むとタンカーが見えてきた。
異様な雰囲気は直ぐに感じられ、寒気さえあった。
「今なら引き返せるぞ。」
「そうだな......ジェーン、どうする?」
「......行きます。」
「きゃ!!」
「うぉ!」
捕まったコガタとマカロニは暗い部屋に押し込まれた。
「すまない。守ると言いながらこれとは......。」
「う~ん。金塊恐るべしですね。」
コガタの金塊発言にマカロニは困った。
おそらく彼女は勘違いをして、その事で自分も勘違いし、巻き込む形になってしまったのだと......。
今さら言いづらく、どうしたものかと。
「......あのさ、イワトビの事を心配してくれてるのは分かるんだけど......なんでそんなに?」
「えっ?......同僚......先輩......?」
何故なのかコガタにもよく分からなかった。
「君がいい娘だってのは分かったよ。」
「......ありがとうございます。」
状況を確かめる様にマカロニは辺りを探る。
「あの、イワトビさんとはどういう関係なんですか?」
「前に話した通り軍の同期でね。空軍だよ。」
「空軍!って事は。」
「パイロットなんだ。」
イワトビの過去、訊いていいものかと思ったが好奇心が......。
「どんな人なんですか?イワトビさん。」
「......戦闘機に乗る為に産まれた様な奴だった。」
マカロニは懐かしそうに話す。
「トップクラスのパイロットで才能の塊だった。俺はそんなアイツに嫉妬して必死だったが、結局追い付けなかった。」
「......それで?」
「何年か経った頃、街で偶然会ったアイツは軍を辞めていたんだ。」
「何があったんですか?」
「詳しくは知らないんだが、訓練中の事故らしい。」
思わぬ過去、コガタはイワトビを知る。
「何をやっとるんだ!!!」
その怒声は、自らの失態と雇い主への畏怖で身を縮ませる。
「しかし、あの男を追えと言ったのはボスじゃないですか。」
「捕まえてこいとは言っとらん!しかも奴は警察なんだぞ!!」
迷彩の男が言う「バラせばいいだろ。」
「貴様も同じだ!女一人捕まえられんとは!!」
廊下を駆ける足音、男が部屋を開ける「侵入者です!!!」
「向こうだ!追え!!」
イワトビとジェーンは逃げる。
「静かにやるんじゃなかったんですか!?」
「甲板で見つかったのはアンタだろ!!」
忍び込むつもりがあっさりと見付かる2人。
狭い廊下を突き進むとジェーンが気付く「こっち!!」
逃げ込んだ場所でコンベヤーが薬を詰めて運ぶ。
「ここは......。」
「精製所のラインです。」
「心臓って事か。」イワトビはその量に驚く。
「こんなに作っていたなんて......。」
「罪を消したいなら、ケジメを付けなきゃな。」
研究者の欲、それが世界を苦しめても探求する。
「......欲の被害者だなんて、言えません。」
ジェーンは側のPCに座るとラインを止め、椅子を掴み叩き壊した。
部屋の外が騒がしい事にマカロニとコガタは気付く。
「何かあったんですかね?」
「分からないがチャンスかも......。」
「キャー!!」
男が1人部屋の中から聴こえた悲鳴に耳を傾ける。
「......どうした!?」部屋からの応答はない
不審に思い扉に手を掛ける。
ゆっくりと開く扉、暗い部屋に光が入ると中央に女が居た。
「ッ!!!」首もとの衝撃で男は倒れる。
「よし。」マカロニは男の懐を探り拳銃を奪う。
「上手くいきましたね!」
「離れない様に着いて来て。」
2人は部屋を出て行く。
いくつもの足音が船内に響く。
息を潜め、目的地を目指すイワトビとジェーン。
最後の扉。
「......ここに製造法と証拠があります。」
頷き手を掛ける。
例の2人組が銃を構え待ちぶせていた「動くな!!」
奥から厭らしい笑い声が聴こえた「クックッ......。」
「親玉の登場か。」イワトビは睨む。
「探す手間が省けたぞ、ジェーン。」
「アナタの為に戻ったわけじゃない!」
「黙れッ!!貴様は私の為に働けばいいのだ!ペットの様に懐けば今回の事は大目に見てやってもいいんだぞ。」
ギラギラとした目はジェーンの足を下がらせる。
イワトビは言う「気持ち悪ッ。」
「なんなんだ貴様!!」
「モテない男の僻みにしか聴こえねーよ。」
「なんだと......!」
「女を口説くその1、まずは楽しませる事だ。」
「なら、俺を楽しませろ。」迷彩の男がイワトビの前に現れる。
「......男とボックス踏む趣味はないんだけど。」
「さっきの借りは返させてもらう。」
「......どっかで会った?」
「うらぁぁ!!」回し蹴りがイワトビを狙う。
それを容易にかわし後ろへ飛ぶ。
「ほぉ。改めて名乗ろう、戦場の電光石火リ......。」お返しとばかりにイワトビの回し蹴りが入る。
「あ、ごめん。まだ途中だった?」
迷彩の男は構える「もういい。貴様は一瞬で終わる!見せてやろう我が必殺の一撃!!音速ラッシュ!!!」
波打つ巨体がもの凄い速さで襲いかかる。
が、イワトビには一発も当たらない。
逆にカウンターをくらい、その巨体が下がって行く。
男の右ストレート、それに合わせたクロスカウンターが決まり呆気なく崩れ落ちた。
「なにが音速だ、パイロットなめるな!」
「なッ!う、撃て!!そいつを撃ち殺せ!!!」
2人組がイワトビを狙い撃つ。
物陰に逃げ込むが止まらない銃声に動けず「めんどくせ~。」
「キャー!」腕を捕まれるジェーンにボスは言う。
「逃がさんぞ!貴様は金のなる木なんだ!!」
弾切れを待つが止む事がなく考えるイワトビ。
「やーーッ!!」2人組を襲う影。
あっという間に倒すと、そのシルエットが現れる。
「......お前、コガタ?」
その正体にイワトビは拍子抜けした声をあげた......。
「押忍ッ!!」
「押忍じゃねー!何やってんだお前!!」
「助けに来ました!」
「は!?」
「ピンチでしたね。」
「ピンチじゃねー!今から倒すとこだったわ!!」
「黙れ!!貴様ら!!!」
ジェーンに向けられた銃、怯えた表情。
「好き勝手やりやがって!!」
「......ジェーン、罪の代償だな。」
「そうですね......。」
「何を言ってる!!!」
覚悟を決めたその顔は怯みなど微塵もない。
「撃つなら、撃ちなさい!私は逃げない!!」
引き金に手を掛ける。
一発の銃声が部屋をこだました。
ジェーンは自分が無事な事に気付く。
「......え?」
「ぐあああああ!!!」ボスは腕を押さえのた打ち回った。
「......間一髪だな。」撃ったのはマカロニだった。
警察の船がタンカーを囲み、慌しく動き回っていた。
「ありがとうございます。」
深々と頭を下げるジェーンにイワトビはそっけなくする。
「......どうするんだ、これから?」
「すべてを話します。」
「......そうか。」
「お礼は必ずしますので......。」
「ホットドッグ。アンタの奢りだ。」
ジェーンは警察と共にその場を去って行く、何度も頭を下げながら......。




