吼える鼠2
夜も更けて来た頃
パトカーが『ドストエフスキー』の周りを囲む。
野次馬が集まる中にコガタが居た。
状況に驚き戸惑う「えっ!?」
踊り子達が、中から出て来たマカロニを問い詰める。
「どういう事なのか説明してよ!!」
「あの女でしょ!!」
「そうだよ!イワトビは関係ないはずだ!」
その名前を聴いた時コガタはこの場所が彼の家で合っているのだと確信を持ち、同時に何があったのか気になって仕方なかった。
「イワトビさんに何があったんですか!!!」警察の静止も聴かず割って入る。
その姿にマカロニは踊り子達とは違うと感じ、アイツの女かと思った。
「君は......。」
「同僚、後輩です!」
少し離れた場所でマカロニは話す。
「ごめん、ごめん。アイツの彼女かと思った。」
顔を赤らめる「はっ!!ち、違います!!!」
「同僚か......案外、潜水士も悪くないか。」
潜水士という事も知っていて、イワトビに対する話し方から知り合いなのかと思い訪ねる「......友達なんですか?」
その問いに考える「ん~......同期のライバルかな?」
今の仕事に着く前、何をやっていたのか知らないし、話した事もない。
「同期?」
「あぁ......聞いてないのか。俺から話すのもなぁ~。」
知りたいという思いはあったが訊いていいものか。
「それより、アイツがどこに行ったか知らないかな?」
今の状況それが最優先だった「何があったんですか?」
〜数時間前〜
ジェーンは人を探していた。
この界隈に困り事を助けてくれる徳のある人物が居ると聞いた。
「あ、あの......。」「すいません。」
通りを歩く人は珍しい者を見る様に過ぎて行く。
場違いである事は分かっているが、時間がないと彼女は焦っていた。
「YO、YO、姉ーちゃん、俺のホットドッグは世界一旨い!」
ワゴンから呼ぶ声につられ近付く。
「あ、あの、訊きたい事が。」
「俺のホットドッグは世界一美味い!!」
「ある人を探していて......。」
「俺のホットドッグは世界一ウマイ!!!」
聞いているのかいないのか彼は続ける。
「俺のホットドッグは世界一うまい!!!!」
しぶしぶお金を払いホットドッグを買った。
「無償の人助け?」DJ風の店主は考える。
「はい、困り事を解決してくるって。」
「そんな奴居ないよ。この辺がどーゆーとこか分かる?」
歓楽街、貧困、そんな事は承知していた。
「でも、居るって。もう、時間がないんです。」
必死さに店主は教える「......そんな話し聞いた事もないけど、『ドストエフスキー』そこに居るイワトビって旦那を訪ねてみな。」
手掛かりに感謝する「ありがとうございます。」
ジェーンを追い掛けていた2人組は経緯を説明した。
「バカ野郎!わけの分からない男にやられただと!!」
「でもボスあの野郎本当に強くて!」
「そんな事言ってんじゃねー!!!あの女がどれだけの価値があるか、お前らも知らん訳じゃないだろ!!!」
2人が直立のまま動けずに居ると男が話す「どんな野郎だ?」
迷彩服の下で盛り上がった筋肉が動く。
「ひょうひょうとした、変な男で。」
「ボス、そいつは俺がやる。」
「......分かった。お前らもとっとと女を探せ!」
ライトアップされたステージで踊るその姿に、ジェーンはただ綺麗だと感じていた。客席の声と音楽が五月蝿く感じたのは始めだけで、後は見惚れる様に......。
ハッとして気付く、ここに来たのは目的があっての事で、その人物を探す「どうしよう誰に訊けば。」
キョロキョロとする客に踊り子は怒り詰め寄る「アンタね、アタシのステージは退屈だとでも言いたいの!!」
「ち、違います!人を探していて......!!」
「?」
「イワトビ目当てで店に来るとはね。」
踊り子はステージを終え2階へと案内する。
「あ、あの、本当に助けて頂けるのでしょうか?」
「人助けなんてやってたかな?そういう柄じゃないと思うけど。」
噂はウソだったのかもと思い始めていた。
「まっ、いい奴には変わりないし頼んでみたら。」
部屋のドアを開け中へと通される。
「適当にくつろいでなよ。そのうち帰ってくるだろうし。」
「すいません。」
「んじゃ、アタシは仕事があるから。」
「ありがとうございます。」
ドアを閉め部屋を見ると、その散らかりぶりに座る事さえ躊躇う。
「うわ......汚......。」
階段を昇るイワトビは散々な1日に疲れていた。
部屋のドアを開け、冷蔵庫のビールを取る。
一口飲み視線を変えると女が居た「ぶーーッ!!!」吹き出すビールとむせる返る喉、よく見れば昼間の女だった。
「あーー!!お前、ホットドッグ!!」
「こんばんは。」ジェーンは気付いていないようだった。
「なんで、ここに居るんだよ!後でも着けたのか!?」
まだ気付かない様子で首を傾げる。
「......昼間、襲われてたろ。」
「あ!あの時の!!」
「なんでここに居る?」
思い詰めた目で訴える「助けて下さい!!」
「......はっ?」
「時間がないんです!今すぐにでも!!」
必死の訴えに困惑するイワトビ、理解が出来ない。
「ちょ、ちょ、ちょっと待てて!なんなんだよ急に!!」
「このままじゃ大変な事になるんです!」
その形相から嘘でない事は分かったが、何故自分なのかと考える。
「よく分からんけど、1から説明してくれないか。」
ジェーンは重い口を開く。
「『syt』という薬はご存知ですか?」
「薬物中毒に見えるか?」
「火星移住に伴い開発され、環境に合う様に作られた薬です。」
「酔い止めみたいなもんか。」
「そうです。でも、後遺症が出る事が分かったんです。」
キナ臭くなると思い聞くのを止めたかった。
「精神を不安定にさせ依存性があり、最悪死に繋がる。」
「火星でドラッグパーティーでもやる気か?」
「笑い事じゃないんです!それを意図的に組み込んだんです。」
いよいよもって終わりだと話しを切り上げる。
「止めだ!止めだ!!」
「待って下さい!まだ、話しの続きが!!」
「いきなり現れて、ワケわからない話しされて、助けて下さい?そういうのは警察の仕事だろ!!だいたい、なんで俺が。」
「噂で聴いたんです。無償で人を助ける方がいるって。」
「そんな人間は居ない。神様だって祈れって求めるんだぞ。」
急ブレーキで止まる車の音が聴こえた。
「なんだ?」窓から外を見るとあの2人組が車から降りる。
またか、そう思った2人の手に握られたマシンガンが火を吹く。
「伏せろ!!」彼女に覆い被さると発破音と共に部屋中に穴が開く、その弾みでプレスリーの『A Little Less Conversation』がレコードから流れる。
部屋を貫通していく弾丸、古い映画のポスターが破れ、お気に入りの灰皿が割れ、買うのに迷ったベロアのハットが宙を飛ぶ。
止む事のないそれは開けたばかりのビール缶を撃ち抜き溢れた。
撃ち尽くした2人は手榴弾を手にピンを抜き投げ込む。
「はっ!?」部屋の中に転がったそれを見てイワトビはジェーンの手を引き逃げる。その瞬間凄まじい爆発音が聴こえ、煙が辺りを包んだ。
煙の中から脱け出し1階へ降り、すぐさま路地裏へと逃げる。
その先で、迷彩服の男が待ち構えていた。
「クククク......よく生きて」イワトビの蹴りが顔面にヒット、最後まで話す事なく男は崩れ落ちる。
そのまま、夜の闇の中へ走り続けた......。
「爆発!!」コガタは何があったのか聞いていた。
「それに無数の銃弾、何やってるのか。」マカロニは溜め息を吐く。
「銃って?狙われたんですか!?」
「だろうな。」
「え?まさか!?」盗んだ金塊が原因なのではと考える。が、友達とはいえ警察にその事は話せないと思った。
「何か知ってるの?」
「いえいえ!知りません!!」
隠しているのは丸見えだったが流す事にした「そっか。」
「とにかく、アイツから連絡があったら教えて欲しいんだけど。」
マカロニはサラッと連絡先を訊き、捜査へと戻った。
コガタは考える。金塊問題は終わっていないんだと、だとすれば自分も関係がありイワトビを先に捕まえなければと......。
「よし!私が見付ける!!」




