6話 少女の異常識は常識に変化し始めた
後日談を話そうと思う。
正直、神社で救急隊員に見つかるかは賭けだった。
この神社の回りは公園が多く存在する。それは、道路らしき道路がないとも言える。つまり、公園を横切ったほうが目的の近道となる場合が多い。だから少女と公園に出会ったのは、僕も少女も公園で遊んでいたのではなく、ショートカットとして使っていてたまたまばったり会って、少女がばったりと倒れただけなのだ。だからその要領で、救急隊員もショートカットのように神社を突き抜けて公園で倒れている少女を探していたのだろう。そしてその途中で僕たちを発見したのだと思う。
まあそれはどうでもいい。
結論から言おう。
少女は警察に保護された。
僕が救急隊員に事情を説明し、少女のあざを見せると、「とりあえず警察署まで」と言われ、僕と少女は連れていかれた。
事の経緯を話すにあたって、ストーカー紛いの行為をしたことを渋々話したが、思ったより警察官は熱心に僕の話を聞いてくれた。理由としては、少女の様子のおかしさを感じて、それで少女を助けるための行いをしたからだそうだ。
その後警察官は少女の家に行ったらしい。
少女の親は二人とも――父とも母とも暴行を加えていたようで、またその証拠も比較的簡単に見つかり、だから二人とも逮捕された。
少女はというと、児童養護施設で教育を受けることになったそうだ。
少女にとっては嫌なのかどうか分からないが、とにかく、親の暴行から逃れられたのは良いのではないかと僕は思う。
まあ、少女はこれを機に、なるべく親を思い出さないような生活を送ってほしい――いやそれは関係ないのかもしれない。とにかく、少女には普通に育ってほしいと願っている。多感な時期の暴力は、大人になっての四十年よりも価値が有る子ども時代を駄目にしてしまう最低な行為だと僕は思っている。
だから少女を助けたかった……と思っている。
歯切りが悪いのは分かっている。僕もどうしてここまで少女のことを知り、助けようとしたのか、未だによく分からない。それでも、後悔ではないが、気になる点はある。
それは少女が幸せになってくれるかどうか。
児童養護施設でも暴行のような事件はあると聞いているし、何より友達ができるとは限らない。それらを考えると少女は、異日常を過ごしていたほうがある意味では楽であり、良かったのかもしれない。
となると、やっぱり僕のした行為は悪かったのだろうか――そう思ったとき、インターホンが鳴った。
玄関を開けると宅配業者がいて、僕は手紙をもらった。
その手紙はあの少女が書いた手紙だった。
手紙の内容はあまり量自体は多くない。でも、僕にとっては嬉しい内容だった。
『お兄ちゃんへ
私は今、お兄ちゃんのお陰で幸せになりました。
ありがとう。
○○より』
ハッピーエンドだったようで安心した。
これで少女の異日常は、日常になるわけだ。
少女には日常をかみしめて生きてほしいと心から願った。