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4話 少女に絶望を突き付けるがそれも日常でしかない

 場所は先ほどの神社。公園のほうがベストだったかもしれないけど、先ほどの連絡で、救急隊員は公園で気絶しているかもしれない少女を探しているのかもしれない。だから少女の提案で再び神社で話すこととなった。

 神社にあった自販機で買ったジュースを少女に渡す。意外と神社に自販機あるよな。理由ってやっぱり、利益があるからなんだろうか? まあ、どうでもいい。

 僕たちは今、神社の休憩する場所にいる。長方形テーブル一つ。椅子は、長い辺に沿うように二つ――つまりは計四つ椅子が置いてある。

 正面に少女。荷物はテーブルの上。

 僕と少女はジュースを飲む。


「どうして私の荷物持ってくれたのかな?」


 唐突に少女は問う。僕はその少女の問いかけを聞いて、少しばかり安心する。

 変わらず笑顔だったが、それでも平凡な質問を投げかけてくれたからだ。得体の知れない少女ではないと知れただけで、この少女に対する畏怖感というものは既に払拭されている。

 だから躊躇せずに、僕は答える。


「君が荷物を重そうに持っていたし、何より小学生があの量を持つことはありえない。筋力的にも持久力的にも、何より精神的に辛い。――人間は助け合って、楽に生きるべきだ。だから、誰に何を言われたってあの量を買い物する筋合いはないと思うんだ。――そう言っても、君は買い物袋を持って家に帰るだろうから、代わりに僕が荷物を持つ選択をした」


「私は私が買い物をしたくてあれだけ買いたいと思っただけだよ。それに、お兄ちゃんはさ、私とは関わらない――そういう話だったけど、そこのところどうなのかな!?」


 笑うように問いかけてくる。初めてその表情を見たときは、この笑顔が狂気に見えたが、今はただただ辛いと思ってしまう。


 少女の日常はこんなのばかりなのかと、少女の性格――行動から、様々な考えを妄想してしまう。少女の常識は異常識。だからこれほどの異常さも、少女にとっては日常。僕にとってもまあ、日常の謎程度だろう――いや、既にある程度分かっているから――解き明かすことができてしまったのだから、日常の謎程度だったのだろう。

 家庭にはそれぞれの日常がある。少女の日常も、恐らくは普通の日常でしかない。少女と同じ状況であれば、それが日常にしか思えないだろう。どんな異常な家庭も、謎として問いてしまえば家庭の日常にある事件程度でしかない。


 と、戯言に思考を持っていくべきではない。今は少女の状況も一刻も早く解決させないといけない。

 『私とは関わらない――そういう話だったけど』だったか。


「それはね、君の勘違いだ。僕はあのとき――口封じを迫られた際、『さっきのことは忘れるよ』と言ったわけで、それは僕が電話したときを忘れるのかもしれないし、君が倒れる前の瞬間を忘れるだけかもしれない。だから、君と僕の間に相違が発生した。君はたしか――私を見たことを忘れてほしいと、あのとき言っていたけど、僕はさっきのことは忘れると言ったまで。要するに、会話文を成り立たせなかった。だから君とは話しても問題ない。そういう考えなんだけど、どうかな?」


「ずるいなあ」


 笑う。どんな窮地に陥っても笑う。まあ、どんな窮地もっていうのは嘘かもしれない。僕は真実を確かめる。少女に絶望を叩きつける。


「僕はね、君の秘密を知ってしまったんだ。手首から先――肩までにどれほどのアザがあったのか、見てしまった」


 少女は絶望していた。初めて笑顔を完全に失った瞬間だった。

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