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第2話 今彼・元彼

契約書にサインをした孝は500万という大金を手にする。安易な気持ちと男のサガに左右されての行動であったが、契約によりと本当の恋人との距離を少しづつ感じていくことになる。

契約書にサインをした孝は

孝「あ、すみません!11時半からバイトがあるのでもう戻らないと」

あきな「それはごめんなさい。じゃあヒデに送らせるわ!」

そう言ってあきなはドアを開けた。さっきの運転手はドアの前に立っていた。

あきな「ヒデ!孝が帰るからお送りして!」

運転手「はい、かしこまりました。」

あきな「じゃあ、孝!また後でね!電話するわ」

突然、あきなは孝の頬にキスをした

孝「は、はい」

あの契約書を交わして、あきなの態度は一変していた。すでに恋人同士であるかのような振る舞いであった。

運転手「では、孝様!参りましょう。」

孝「あ、よろしくお願いします。」

孝とあきなはオフィスで別れて、運転手と二人でまた、一直線の廊下を歩き、さっきの駐車場へ向かった。

運転手「商談はうまくいきましたか?」

孝「商談?あ、あれね?だ大丈夫でした。」

運転手「そうですか〜。ビジネス、成功するといいですね?」

孝「そ、そうですね」

孝はビジネスの成功が何であるかわからなかった。そして、駐車場で車に乗り込み、また相変わらず後部座席はシャッターで仕切らて、どこを走っているかわからない状態で車は走った。孝は軽い気持ちでいた。車は、また銀座の時計台のところに戻ってきた。

孝「わざわざ、ありがとうございます。」

運転手「お疲れ様でした。がんばって下さい。」

孝「はい!」

孝は運転手の言ってる意味はわかっていなかった。流れで返事をした。

それから、孝はバイト先の洋食屋に行った。時間はまだ、11時前だった。

店に入ると

「来た来た!早く入って下さい!仕事はたくさんありますよ!先輩!」

と罵声を飛ばしていたのは、同じバイト先の同僚の女性だった。彼女は小川理香(おがわりか)、年齢は22歳で今年、就職活動中の大学4年生である。俺と同じ就職活動中である。と言っても彼女は新卒である。しかも、バイト先では彼女の方が全然、先輩であるが年齢が俺の方が上というだけで、俺は先輩と呼ばれている。

理香「先輩、早く入って下さい。大さん、結局来れないって!」

孝「え、そうなの?」

理香「だから私、今日突然呼ばれて10時半から来て、開店まで準備が大変で!間に合うかどうか」

そして、店長の木山さんがやってきた。

店長「白川、すまん!ちょっと急いでくれ!鈴木が今日、ガス屋の関係で来れそうにないから、小川に遅れてもいいからという事で急遽入って貰ったんだ」

孝「わかりました。」

その後、ドタバタしながら店はなんとか開店した。ランチ時には、定番のように、賑やかな雰囲気である。毎日の事であるがランチ時はある意味、戦場である。そして、今日もこの戦場を乗り切った。

理香「あ〜疲れた〜!今日の分は大さんに後で埋め合わせしてもらわないと!」

孝「まぁ、お昼時はいつも仕方ないけどね?」

理香「今日は特別ですよ!」

その時、孝の携帯にメールが来た。孝はドキドキしながら携帯を覗き込んだ。恵美からだった。

理香「先輩!誰からですか?」

孝「いや、何でもないよ」

理香「どうせ、恵美さんからでしょ?」

図星だった。

孝「あ、ああ!」

いつもなら、平然と振る舞えるはずだが、この日ばかりはあの契約書の件で少し俺は落ち着かなかった。

それから、店はランチ終わりの2時過ぎに一時閉まって、店は夕方6時からディナータイムに入っていた。

理香「やった!もうすぐ6時!あがれる。今日は忙しかった〜」

疲れきった理香は、厨房で独り言を言っていた。そこに、遅番で5時から入っていた「達也」がやって来た。彼は氷川達也(ひかわたつや)、20歳の大学生である。普通のさわやかな大学生で、いわゆるイケメンである。

達也「小川さん!すみません!あと、1時間残って貰えませんか?」

理香「え?なんで?」

達也「さっき当日の予約の電話があって、たくさんお客さんが来るみたいなんですよ〜。俺と店長だけじゃちょっと大変かもしれないので!」

理香「え〜信じられない!仕方ないな〜!」

店長「すまん!様子を見て、あげるから。今日はリ−ダ−の鈴木が結局休んだから、一人いないからな〜!白川もよろしくな」

孝「はい、わかりました。」

ちなみに、大さんはほぼ週に5日フルタイムで店長と入っている。バイトではあるが店長代行みたいな立場である。

理香「氷川、お客さんてどんな人達?」

達也「なんか、会社の集まりみたいでさっき電話があったんですよ!10人前後らしいです。」

理香「会社の集まり?なんか大変そう〜!」

それから数分後、店の外でざわめきが少しづつ大きくなっていた。

店長「そろそろ来たようだ!」

店のドアが開いた。ス−ツ姿の男性が数名、入ってきた。そして、茶髪でロン毛の男性がカウンターのところに来た。見た目はかなり遊び人のように見えた。

「さき程、お電話しました。平田と言いますが…」

店長「はい、お待ちしておりました。あちらに席を予約してあります。」

その時、俺は

「平田?」

昨日の恵美の言葉を思い出した。半信半疑で、同姓同名だろうと思った。しかし、どこか気になっていた。

理香「先輩!どうしたんですか?」

孝「何が」

理香「何かボーッと、たそがれた感じでしたよ。まぁ、仕方ないですよ!お客さんですから!」

孝「そ、そうだよな!」

ただ、孝にはその客が気になっていた。

時間が経つにつれ、店の中はにぎやかな雰囲気がだんだん、漂ってきた。お酒も入って客は出来上がってきた。そして、孝が厨房で皿を洗っていると、その客達の話し声が聞こえてきた。

「社長!昨日の合コンどうだったんですか?会社もそろそろ軌道に乗って来た事ですし、そろそろあちらの方も決めた方が」

孝は無意識に耳を傾けていた。気になって仕方なかった。むしろ、その客の会話しか気にしていない状態になっていた。そして、ただ真実を確認したいだけだった。

そして、時間は7時を過ぎた辺りだった。

理香「先輩!先輩!」

孝「え!何?」

理香「何、ボケ−っとしてるんですか?店長がもう大丈夫だから、あがっていいって、言ってましたよ。私と先輩は」

孝「よし!」

理香「あれ?あがれるとなると急に元気になりましたね?」

孝「あ、そう」

理香「じゃあ、軽く飲みに行きますか?今日の埋め合わせとして大さんも呼んで!」

孝「あ、ごめん!これから恵美と約束があるんだ」

理香「え〜そうなんですか?それじゃあ仕方ないですね。あ、そうだ!私も付いて行っていいですか?3人で飲みに行きましょうよ!」

孝「今日は勘弁してくれよ!また、次に時間作るから」

理香「残念!次に期待します。お幸せに!じゃあ、一人寂しく帰りま〜す。では、お先に」

達也「お疲れ様でした。」

店長「お疲れ!」

理香は、愛嬌を振り撒きながら、帰って行った。

孝「俺もあがります」

店長「お疲れ!じゃあ、頼むよ」

達也「お疲れさまでした」

そして孝は店を出ようとした時、一人のドレス姿の女性が入ってきた。

達也「いらっしゃいませ」

そして女性は

女性「すみません!平田で先に入っていると思うのですが…」

達也「平田様はあちらになります。」

女性「ありがとうございます」

女性は、例の会社の集まりのところに入っていった。

達也「あの女性、何者でしょうね?例の会社の連中ではないですね!」

孝「何で、わかるの?」

達也「だって、ただの会社の飲み会にドレスを着て来る人なんていませんよ!たぶん、あの平田とかの彼女じゃないですか?」

俺は、少し無言で例の会社連中の方を見ていた。

孝「あ、ヤベーもうこんな時間だ。お疲れ!」

達也「あ、お疲れ様でした。」

孝は、前日の事もあってか遅れないように、急いで店を出た。

その後電車を乗り継いで孝は待ち合わせの渋谷のモアイ像に着いた。約束の7時半の10分前だった。まだ恵美の姿はなかった。孝は、二人の仲が最近、気まずくなっているのではという不安から今日のデートは緊張気味である。そして、数分もしないうちに白のコ−トに、赤いマフラー姿で恵美も待ち合わせの場所に来た。普通の服装ではあるが孝にとっては誰よりも可愛く見えた。

孝「…」

恵美「どこ行く?仕事終わって何も食べてないから、お腹すいちゃった。」

しかし、孝は今日のデートプランは何も考えていなかった。

孝「どっか、飯でも行こうか?」

恵美「どこに?今日は孝にごちそうになってもいいの?」

その時、孝はかばんの中の大金を思い出した。

孝「だ、大丈夫!今日は任せとけ!」

恵美「やった−!ごちそうさまで〜す。あれ?でも孝、今日の服って朝と同じじゃない?一回、家に帰ったんじゃないの?」

孝「え?帰ろうかと思ったけど、店が気になってやっぱり、早めに行ったよ!」

恵美「ふ〜ん」

孝はごまかすのに必死であったが、恵美の顔色を少しうかがっていた。そして、かばんに入っていた大金の事を考えると少し落ち着かなかった。

孝「とにかく、どっか入ろう!寒いから」

恵美「そうだね!」

二人は手を繋ぎ、渋谷のネオンとざわめきに溶け込むように消えて行った。

孝と恵美は、ちょっと洒落た感じのダイニングバ−に入った。そして、まさに二人だけの世界が描かれていた。二人はこの瞬間が永遠であるかのようにも感じていた。

恵美「なんか、デート!って感じがするようなデートって久しぶりだね?」

そう言って見せた恵美の笑顔は孝にとっては最高の宝物だった。

孝「本当、久しぶりだな!でも、こうやっていつまでも恵美の笑顔が見れるように、これから就職も決めて、がんばらないと」

恵美「な、何言ってるの?ちょっと大袈裟なんだから〜」

孝「ハハハ!」

恵美は嬉しさで照れていた。しかし突然、恵美の微笑みは止まった。

恵美「あ!」

孝「何?どうしたの?」

孝は恵美の視線の先を見た。そこには

孝「平田?」

恵美「孝、何で知ってるの?」

孝「今日、会社の飲み会で俺のバイト先の店に来たんだ!」

恵美「そうなんだ!」

店に来た男性は同姓同名でなく本人だった。そして、孝が店を出る時にすれ違ったドレスの女性も隣にいた。

孝「でも、俺は別に恵美を何か疑ってるとか、そんな事はないよ!」

恵美「だから、何もないわよ!」

少し怒り気味だった。孝のフォローは役に立たなかった。すると、向こうもこちらに気付いたのか、平田がこっちに来た。

平田「あ、これはどうも恵美さんじゃないですか?」

恵美「あ、どうも〜」

平田「こちらは〜、恵美さんの言ってた彼氏?」

孝「はじめまして!」

平田「はじめまして…あれ?どこかでお会いしませんでしたっけ?あ、それよりも申し遅れました。平田修二と言います。こういうものです。」

と言って、孝に名刺を渡した。

孝「株式会社メディアサンセット代表取締役?」

平田「まだ、小さなIT会社なんですけどね」

孝「すごいですね?俺も雇ってもらおうかな〜なんて…ハハ…」

孝は間が持たない感じだった。そして、正面にいた恵美は孝に呆れた表情をしていた。それを察した孝は話題を変えるつもりで

孝「そちらの〜、平田さんの隣の女性は彼女ですか?」

平田「紹介してなかったね、こちらは僕の元カノの奈津子」

孝「元カノ?!」

平田「そんなに驚かなくたって、僕だって過去に誰かとお付き合いぐらいはあるよ。でも、今でも全然モテないけどね!あ、奈津子にも紹介しておくよ。こちらの可愛い女性は合コンで知り合った野原恵美さんです。」

恵美「どうも…」

恵美は少し不機嫌そうである。

奈津子「へぇ、可愛い子ね?修二も女性を選ぶセンスが良くなったじゃんない?」

平田「彼氏がいるから、またフラれちゃうかな?」

孝には、何かわからない平田の余裕を感じていた。そして、恵美の彼氏である自分が何故か追い込まれているような感じだった。恵美は黙って少し下を向いていた。

平田「じゃあ、僕達はこの辺で!今は二人の邪魔をしちゃ悪いから」

平田は奈津子と二人で別のテ−ブルに着いた。

恵美はずっと無言だった。孝と恵美の間の静寂は店のざわめきとBGMで埋められていた。その時、孝の携帯が鳴った。孝は携帯を覗き込んだ。

非通知だった。もしかして!と孝は思った。

孝「ごめん!ちょっと携帯が」

孝は申し訳ない様子で、席を立った。そして、店の外に出た。

孝「も、もしもし!白川ですが」

「孝!今どこ?」

あきなさんだった。

あきな「孝!今からディナーに行きましょう!」

孝「あ、あの〜、すみません。今、ちょっと彼女と一緒でまた次回に!」

すると、あきなはさっきまでの甘い声とは逆に

あきな「言ったはずよ!これはビジネスよ!あなたのプライベートは私には関係ないわ!今すぐに銀座の時計台で待ち合わせよ」

孝「え?」

あきな「別にいいのよ!あなたが、契約を放棄して私に5000万払って終わりにしてくれても。」

孝は、あのおいしいと思った契約の内容に今さらであるが恐怖を感じた。

孝「わ…わかりました。今から銀座に向かいます」

すると、あきなは甘い声で

あきな「じゃあ、待ってるわ!」

電話は切れた。孝は恵美のいるテ−ブルに戻った。

恵美「電話!長かったね?」

ちょっと寂しそうな感じだった。

孝「あ、ああゴメン!今日は帰ろうか?」

恵美「もう帰る?来たばっかりなのに?」

恵美は何か力が抜けてがっかりした様子で、カクテルを飲んでいた。向こうのテ−ブルの平田は、元カノと一緒にいるようには見えず、まるで本当の恋人同士であるかのような光景であった。恵美は暗い表情でコートを着ていた。孝も少し気まずいと思いながら店を出る準備をした。

そして、二人は店の出口のところまで歩いて行った。

孝「今日は俺が全部出すから、先に外で待ってて!」

支払いは全額、孝持ちであった。戸惑いながらかばんの中に入っていた例の500万を少し覗き込んだ。しかし、そのお金を使うまいと思いながらも、手持ちで足りない部分をそれに当てて会計をせざるを得なかった。孝は店を出た。恵美は寂しそうな感じであった。

孝「じゃあ、今日はここで帰るよ?」

孝は少し、顔がひきつっていた。

恵美「今日は送ってくれないんだ?」

孝「あ、今から用事があって…。」

恵美「今から?」

孝「あ、ああ」

いつもは、強気な態度の恵美だが、今はその様子は見られなかった。孝はいつもと違う恵美を見ているような感じだった。

孝「恵美、ゴメン!」

恵美「何で?何で孝が謝るの?」

孝「せっかくの久しぶりの二人の時間なのに…」

孝はそれ以上は言葉が出なかった。

恵美「孝…」

恵美の切ない表情の前で孝は動けなかった。

恵美「ねえ、孝!」

孝「な、何?」

恵美「私…。孝の事!好き!今でも、これからも、でも…」

孝「俺もだよ!でもって?」

恵美「でも、私…。何か不安で…、うまく言えないけど…」

孝は言葉の出ない恵美の言いたい事はなんとなくわかっていたが、自分の中にはそのはっきりした答えは見つからなかった。そして、何も言えずただ立ちすくむだけだった。孝もまた、今までにない、不安を感じていた。その不安の原因が何であるか、恵美との別れか、フリーターである今の自分の立場か、あきなさんとの事か、自分自身についても答えは出なかった。

恵美「じゃあ、ここで私帰るね」

孝「恵美!」

背中を向けて帰ろうとしていた恵美が振り返った。

孝「また、連絡するよ!今日は本当にゴメン!」

孝はただ謝るだけだった。しかし、孝の謝っている理由のすべてを孝は恵美にうまく言えるはずもなかった。恵美は無言で少し微笑んで帰って行った。その時、携帯が鳴った。非通知だった。たぶんあきなさんであると思った。そして電話に出た。

孝「もしもし」

あきな「今どこ?」

やはり、電話の向こうはあきなさんだった。

孝「すみません。今すぐ行きますから…。あと、15分くらいで!」

あきな「待ってるわ!早く来て」

電話は切れた。そして、孝は周りの人混みをかきわけるように走って地下鉄の駅に向かった。渋谷から銀座までは電車で約15分程であったが、移動の途中ずっと孝は落ち着かなかった。


孝と別れた恵美は、孤独を感じていた。そして、一人、駅に向かっていた。その時、携帯が鳴った。着信は平田からだった。普段なら、無視をするはずの恵美も何故か無意識に出てしまった。

恵美「もしもし」

平田「平田です。さき程は失礼しました。何か、僕悪い事したかなと思って」

恵美「いえ、別にそんな事は…」

平田「そうですか?さっき、僕が二人のところに行った後に、すぐに恵美さんが店の前で彼氏と別れたから、僕に何か問題があったのかな?と思ってちょっと、心配で」

恵美は孝と店の前で別れたところを平田に見られていたという事に気付いた。

恵美「え?見てたのですか?」

平田「いや、別にジロジロずっと見てた訳じゃないよ!たまたま、トイレに行った時に、二人が店の外で話をして別れたところが見えたから、何かあったのかなと思って」

恵美「そうですか?でも別に平田さんには関係ない事です!」

恵美は少し、怒り気味に言った!

平田「気にさわったらゴメン!謝るよ!よかったら今から会えないかな?お詫びに、僕がおごるから」

恵美「お気持ちはありがたいのですが、今日はお断りします。それに会うって、さっき奈津子さんっていう女性の方と一緒だったじゃないですか?」

平田「ああ、奈津子ならさっき別れたよ。今日はちょっと奈津子の仕事の事でいろいろ相談にのってただけで、それであの店に行っただけだよ」

恵美は少し心のすき間を突かれているように感じた。

恵美「とにかくごめんなさい。今日はそういう気分じゃありません。」

平田「わかった。また、フラれちゃったな!突然、電話してゴメン!じゃあ、おやすみ!」

恵美「おやすみなさい!」

恵美は自分から電話を切った。少し、途方に暮れていた。駅に向かっていたが、気を紛らすような一心で辿りついた場所は地下にあるショットバーの階段の前だった。

恵美はその階段を降りて店のドアを開けた。

「いらっしゃいませ」

ドアの開く音と同時に店のカウンターから聞こえてきた。そして、恵美はカウンターの端に座った。すると一人の男性が来て恵美に話しかけた。

「いらっしゃいませ!久しぶりだな!」

恵美の元カレである。早坂宏(はやさかひろし)31歳でこの店のオ−ナ−兼店長である。

恵美「来ちゃった!」

恵美は満面の笑顔で言った。

宏「おまえが、一人で来るなんてびっくりだよ!初めてじゃないのか?」

恵美「今日は、暇だったから、ちょっと寄っちゃった!」

宏「ゆっくりしていけよ!はい!」

宏は、カクテルを恵美の前に出した。

恵美「何?私まだ決めてないよ」

宏「俺のおごり!今、試作中のカクテル!」

恵美「へぇ〜!なんて名前?」

宏「名前?あ〜、全然決めてないな!気にいったら恵美に名前を付けさせてやるよ!」

恵美「え?私が?では、いただきま〜す。」

恵美は一口飲んだ!

恵美「おいしい!でも、ちょっと、アルコール感が強いね?」

宏「ハハ!大人用だから、恵美には少しきついか?」

恵美「また、子供扱い?」

宏「ハハハ!今度からはちょっと軽くして出すよ!」

そして、時間はゆっくり過ぎて行った。宏の試作中のカクテルを飲んだ恵美もまた、流れて行く時の余韻にたそがれていた。

その後、カウンターの隅で、恵美はカクテルを半分程飲んだところで、少しいい感じに酔っていた。それを見た宏は

宏「やっぱり、恵美にはまだ、そのカクテルは早すぎたか?」

恵美「また、そうやって子供扱い?」

宏「そう、かもな!」

恵美「そう、かもなって、いつだってそうだったよね?私を子供扱いして!そして、飽きたら捨てるのよね?」

宏「おいおい、ちょっと酔いが思ったより早いんじゃないか?」

宏は笑いながら言った。

恵美「酔ってなんか、いません。それが、最近になって突然会いたいとか言って、電話して来て!いったい何?」

恵美は、酔った口調で言った。それに対して宏は、平然とした態度で微笑んでいた。

そして、恵美はカクテルのまわりが早かったのか、深い眠りに落ちた。

宏「おい!寝ちゃったのか?しょうがないな〜!」

宏は気にしながらも眠っている恵美をそのままにした。

そして、新たな客がやって来た。

宏「いらっしゃいませ」

現れたのは、あきなの運転手をしていたヒデだった。

宏「今日は何になさいますか?」

ヒデ「ギネス一つ!」

宏「はい、かしこまりました。」

宏は、グラスを取った。そして、サ−バ−からギネスを注ごうとした時、ちょっと酔っぱらった感じの男性二人が入って来た。なかり、ガラは悪そうな感じには見えるが、服装はス−ツ姿であった。二人とも年齢は20代くらいである。

宏「いらっしゃいませ。どうぞ、空いているカウンターに」

男性客「いやぁ、今日は飲んじゃったな〜。おい、まずは水をくれ!」

宏「水ですか?」

男性客「水だよ!聞こえなかったのか?ちょっと、飲みすぎちゃってよ!」

宏「はい、かしこまりました。」

宏はタンブラ−に二人分の水を入れてだした。

男性客「おお、サンキュー!悪いな!」

宏は洗い物をしながらその男性客を意識していた。

ヒデ「かなり、面倒そうな客が来ましたな?」

宏「仕方ないですよ!こういう業界は、いつもヒデさんのような紳士的な客ばかりじゃありませんから」

ヒデ「私が、紳士なんて!人は見かけによりませんよ!おや、あちらのカウンターの反対側で、女性が眠られていますが…」

宏「ああ、昔の女ですよ。今は何もないのですが…」

ヒデ「宏さんの元カノという事ですか?」

宏「まあ、そういう事ですが、この店に一人で来て、俺の今の試作中のカクテルを飲んで、眠りに入ってしまったんですよ!」

ヒデ「一人で?ですか?」

宏「そうですね!しょうがないやつですよ。すみません。見苦しいところをお見せしてしまって…。」

ヒデ「いえいえ、私は全然結構ですよ。ただ、不思議ですね!女性がショットバーに一人で眠ってしまうなんて!」

宏「不思議と言いますと?」

ヒデ「女性が一人で来て眠るなんて、あまりに無防備です。もしかして、ここで眠りに落ちても絶対に大丈夫という何かがあったのでしょうか?もしかして、宏さんにまだ未練があるとか、または宏さんがいるから大丈夫という安心感をまだ持っているかもしれませんね!」

宏「そうですかね〜」

ヒデ「いや、これはあくまで私の個人的な見解ですが…そう言えば、あの女性は彼氏とかおられないのでしょうか?」

宏「いやぁ、それが全くわからなくて!俺も別れたのは3年以上も前の事で…」

ヒデ「そうですか〜」

ヒデと宏は眠っている恵美の姿を見た。

宏「ところで最近、仕事の方はどうですか?」

ヒデ「不況ですね?会社というのはいつまでも同じ事をしていては進歩がない。常に時代の変化を見ながら新しい事をしていかないといけませんね?」

宏「なるほど!すると、また新しいビジネスを?」

ヒデ「まぁ、ここでは言えませんが!」

宏は聞き入っていた。すると、後から来た男性客が

男性客「すみません。ちょっと注文いい?」

宏「はい、どうぞ!」

男性客「あちらの眠っている女性に僕達からカクテルをプレゼントしたいんだけど!」

そう言って眠っている恵美を指さした。

宏「すみません!そういうサ−ビスはやっていないのですが…」

男性客「じゃあ、いいよ!とりあえず、ジントニック3つ持って来て!」

宏「ジントニック3つですか?」

男性客「そう!早くして」

宏「はい、わかりました。」

宏は嫌な予感がしたが、客からの注文だったのでしぶしぶ受けた。

そして、冷静さを保ったまま普通にシェイカーを振りジントニックをグラスに注ぎ、後から来た2人の男性客の前にジントニックを3つ置いた。宏は気になっていた。2人の客に3つのカクテルが非常に不自然に見えた。2人は何か小声で話しているがよく聞こえない。カウンターの隅で、恵美は眠りに落ちたままだった。そして、その反対側でヒデは一人、もの思いにふけながら飲んでいた。その時、2人の男性客のうちの1人が

「ちょっと〜トイレってどこ?」

宏「そこの左の付き当たりになります。」

そして、立ち上がった瞬間、よろめきながら眠っている恵美のところに行き、わざとらしくぶつかった。

恵美「キャー!」

恵美は何が起こったのか、わからず目を覚ました。

男性客1「おっと、ごめんね!大丈夫?」

恵美「あ、いえ別に」

恵美は少し驚いた様子だった。すると

男性客2「はい、これは目覚めの一杯!どうぞ、僕のおごりです。」

恵美「え?ど、どうも」

と言いながらも恵美はそのカクテルには見向きもしなかった。

男性客2「ねえ、一緒に飲まない?」

恵美「すみません!そんな事言われましても」

男性客「ちょっとだけでいいから、店を代えて飲み直そうよ。お金は出すからさぁ〜」

そう言って、男性客は恵美の肩をさわった。

恵美「ちょっと、やめてください。」

それに見兼ねた宏がやって来た。

宏「お客様、申し訳ありません。他のお客様にご迷惑になりますので!」

男性客2「うるせぇ〜な!他の客に迷惑?他の客ったって、後はそこで飲んでる中年のオッサンだけじゃないか?」

そう言って男性客はヒデの方を見た。

宏「でも、女性の方も嫌がってる事ですし…」

男性客2「おまえには関係ないだろう!」

男性客は軽く宏の胸倉を掴んで押した。

宏「やめろって言ってるんだ!」

宏は男性客の腕を掴んだ。

男性客2「このヤロ−。客に向かって」

恵美「宏!後ろ!」

宏「え?」

その時、宏は後ろから腕を掴まれた。トイレから戻って来たもう一人の男性客だった。

男性客1「邪魔するなよ!おまえには関係ないだろう?」

宏は両腕を取られた状態になった。すると、反対側のカウンターの隅にいたヒデが

ヒデ「ちょっと、君達!私の静かな時間を邪魔をするのはやめてくれないか?」

男性客2「なんだ?お前?」

その時、突然ヒデの蹴りが男性客の腹に入った。

男性客は、後ろの壁に背中をぶつけるくらいに飛ばされた。

ヒデ「静かにしろ!聞こえないのか?次はそれだけじゃすまないぞ!」

一瞬、店内は時が止まったような雰囲気になった。

ヒデ「次は君の番かね?」

男性客1「い、いえ!今日はちょっと酔い過ぎちゃいまして…。」

男性客2人は逃げるようにして店を出て行った。

宏「ヒデさん!」

宏は、人は見かけによらないと言ったヒデの言葉が一瞬、浮かんだ。

ヒデ「すみません。店の雰囲気を壊してしまいましたね?今日はこの辺で帰ります。これは、今日のお代です。釣りは結構です。これで、さっき出て行った連中の分も足りるでしょう。」

ヒデは一万円を宏に渡した。

宏「これは、ちょっともらい過ぎですよ!」

ヒデ「店の雰囲気を壊した分のお代も入っています。では、私はこれで!」

そして、ヒデが店を出ようとした時に

恵美「あ、あの〜!ありがとうございました。」

ヒデ「あんまり、夜一人で出歩いて、すきを見せてはいけませんよ!マスターが困ってましたよ!」

ヒデは一言残して店を去った。

店の中はBGMだけが流れて沈黙状態になった。店には宏と恵美の二人きりだった。宏は無言でグラスを拭き始めた。そして、眠りから醒め、酔いからも冷めた恵美は目の前の宏の試作段階のカクテルを見つめていた。しばらくして宏は沈黙を破った。

宏「全く、相変わらず世話がやけるな!」

宏は笑顔で言った。

恵美「ゴメン!」

恵美は沈んでいた。

宏「今日はもう閉店!」

恵美「え?」

宏は、恵美の前にあったカクテルを下げた。

宏「これは、失敗だな!作り直し!」

そう言いながら、恵美に微笑んでいた。

恵美「私、もう帰るね?」

宏「待てよ!」

恵美は逃げるように、椅子を立っていたが、宏の突然の真剣な言葉に止まった。

宏「まだ、帰らなくていいよ!」

恵美「え?なんで?」

宏「店は閉店だけど、これからは恵美のために貸し切りだよ!」

恵美「何言ってるの?そんな事したら、この店、赤字になって…」

宏「本当にこのまま帰ってしまうのか?おまえが一人で、ここに来るなんて…。」

帰ろうとしていた恵美は一瞬、止まった。恵美は、心の底にある不安を、宏に悟られているみたいだった。宏は、優しい笑顔で

宏「何か、悩み事があったら聞くよ!まあ、解決できるかどうかは別だが」

宏は店の閉店準備をしながら言った。そして、店内に流れていたBGMを切った。店内一面に静けさが立ち込めた。

恵美「私、今、彼氏がいるんだ」

宏「ほお〜!」

恵美「でも全然、宏とは違うタイプで、なんか頼りなくて、不器用で!」

宏「俺と違うタイプねぇ〜!」

宏は恵美に水を出した。

恵美「でも、好きなんだけど私、わからなくて、何か不安で、本当にこのままでいいのか?そして…。」

宏「相手も私の事をどう思っているかわからなくて!という事だよな?」

宏は言葉の詰まった恵美

のフォローをするように言った。すると、恵美は一瞬開き直ったように

恵美「すごい!なんでわかったの?」

宏「俺は4年もおまえの事を見てきたんだ。それぐらいはだいたい、わかるよ」

恵美「宏!」

宏「って言うのは冗談で、さっきおまえを助けてくれたヒデさんが、眠っているおまえを見て、なんか抱え込んでいる感じみたいな事を言ってたから、そうじゃないかと思ってな!」

恵美「なんだ、そうなんだ?私、そんな風に見えてたのかな?」

宏「その前に、おまえの方から俺に会いに来る事の方が、何かあったのかと思ったけど!」

宏は軽く微笑んで言った。そして、それを見た恵美は何かわからない安心感を感じた。その時、店のドアが開いて誰か来た。

宏「すみません!もう閉店なんですけど、あら?」

そこには、若干、痩せ気味の知的な感じの一人の女性がいた。彼女は根本美幸(ねもとみゆき)、年齢は29歳、宏の彼女である。

美幸「あらあら、婚約中なのに店を閉めて浮気かしら?」

美幸は腕組みをして歩いて来て、カウンターの椅子に座った。

恵美「婚約中?」

宏「ハハハ!恵美には、まだ言ってなかったな!俺もうすぐ結婚するんだ。」

恵美「え?そうなの?」

恵美は突然の事で意外そうな表情をしていた。

宏「こちらが俺の婚約中の相手の美幸!それで、こちらが恵美!」

恵美「はじめまして…。」

美幸「恵美?宏!この子が?」

宏「その通り!」

美幸「じゃあ、もう渡したの?」

美幸は少し、けだるそうな態度で言った。

宏「ああ、そうだった。まだだった。」

宏は、カウンターの奥の棚の引き出しを開けて小さな包装された箱を出し、恵美の前に置いた。

恵美「え?何?」

宏「開けたらわかるよ」

恵美は、少し警戒するような感じで開けた。

恵美「これって?」

それは、アメジストの埋め込まれたハ−ト型の銀のネックレスだった。

宏「約束だったからな?付き合い当初の2人の約束」

突然、恵美は、忘れていた記憶が少しづつ甦ってきた。

宏「もう忘れたか?それぞれの夢が叶った時!その年のクリスマスに相手の誕生石を送る。それが、俺達付き合い当初に夢を語りあった時の二人だけの約束だよな?」

恵美は、すっかり忘れていた。確かにそういう約束をしていた。恵美は以前、役者になりたかった。その忘れていた、夢を思い出した。

宏「思い出したか?二人の約束は、それぞれの夢に近づく事と、お互いの成長を願っての誓い!そして、俺は店を持った。夢を叶えた。まだ、一つだけだが…。」

その時、恵美の目から涙がこぼれた。

宏「そして、そこにあるネックレスは、自分の成長と自分を支えてくれた相手への感謝の証」

恵美は涙が止まらなかった。宏との思い出が頭の中で駆け巡っていた。恵美は宏のひたむきさ、自分の夢に対するまっすぐな姿勢に魅かれて、付き合っていた事を思い出した。宏には笑顔はなかった。

宏「だが、3年前、おまえは俺と結婚したいと言った。ただ、それも自分では悪くないと思ったが、まだ、その時はそれぞれの約束は果たせなかった。」

その時、恵美は一つの答えに辿り着いた。

恵美「私…。それでフラれたの?」

しかし、宏は微笑んだ

宏「さあな」

宏は言葉を濁した。

宏「でも、俺が店を持った年のクリスマスが来る前に俺達は別れたけどな!」

恵美は固まった。

美幸「宏って、それをずっと持ってたみたいよ。この前の引越の荷造りをしてる時に、私がかわいいネックレスだなぁ〜と思って発見したら宏が突然、おまえにはやらないって!全く、男って未練がましいわ!」

美幸は呆れた感じで言った。すると宏は真顔で

宏「未練?バーカ!何言ってるんだ。これはケジメだよ!」

美幸「またまた〜。結局、かっこ付けてるだけでしょう?しかも、このネックレスって特注なんでしょう?いいな〜!」

美幸は笑いながら言った。

宏「これは、俺と恵美の事だ!。」

すると、恵美は、涙をこぼしながら、

恵美「本当!かっこ付けてるだけでしょう?男って、勝手よね?約束が永遠である訳がないでしょう?ハ、ハハ…」

苦笑しながら突然、恵美はカウンターの椅子を降りた。そして、溢れ出る涙を抑え、顔を隠すように走って店を出た。

宏「お、おい、ちょっと…」

宏の恵美を止めようとした言葉も虚しく、恵美は既に店を出ていた。宏は一瞬、美幸を見た。

美幸「追い掛けた方が良いんじゃないの?たぶんもう、会えないよ!」

美幸は宏から顔を反らしたままで言った。

宏「ああ!ちょっと店の片付け頼む!」

宏はカウンターから出た。そして恵美を追い掛けようとして店のドアを開けようとしたところ美幸が

美幸「ねえ、宏!2つの交わらない関数の答えってどうなると思う?」

宏「2つの交わらない関数の答え?」

宏は一瞬考えはしたが…。話を反らした。

宏「さっき、先生が来てたよ!」

美幸「そうなの?久しぶりに会いたかったな〜!」

そう、言い残して宏は店を出て恵美を追った。


美幸「正解は虚数。<存在しない>が正しい答え!でも存在しないはずの数、すなわち<虚数で2つの関数が交わる>も答え。」美幸は宏の居なくなった静かな店の中で独り言をつぶやいた。


宏は、泣きながら店を出た恵美を追いかけたが見つけられなかった。短時間で、そんなに遠くへは行けるはずもなく、宏は恵美を見つける自信があったが、夜の人混みとざわめきの中で見つけられなかった。

宏「駄目だったかぁ〜!」

さすがに、この寒さの中で走ったため、白い息が途切れがちでやまなかった。そしてさっきの美幸の質問を思い出した。

宏「2つの交わらない関数の答えか〜!始めから問題に交わらないと言ってるじゃないか!ハハハ!」

宏は一人、つぶやき虚しさを感じた。そして、店に戻った。店の中では美幸が一人で片付けていた。

美幸「見つかった?」

宏「いや、駄目だった」

美幸「そう!」

美幸はそれ以上は聞かず全く、興味のない様子だった。

宏「美幸、答えがわかったよ!」

美幸「答えって、何の?」

宏「さっき、お前が言ってた、2つの交わらない関数の答え」

美幸「あ、それね?」

美幸は少し微笑みながら言った。

美幸「で、宏の答えは?」

宏「答えは問題の中に入っていた。始めから問題に交わらないと!」

美幸は、勝ち誇った表情になった。

美幸「フフ!それでは、50点!私達の結婚式まで、宏の宿題よ!」

宏「宿題?この歳になってもか?」

美幸「そうよ!」

宏「俺の中では、これ以上の答えは出ないよ」

そして、美幸は嬉しそうな笑顔で

美幸「宏!ありがとう!」

宏は美幸の思っている完全な答えを本当に理解していなかった。美幸のありがとうの意味もわからなかったが

宏「あ、いや別に…。お礼を言われる程でも」

美幸は喜んでいた。

そして、

美幸「そう言えば、店の入り口に名刺が落ちていたけど」

宏はその名刺を見た

宏「名刺?株式会社メディアサンセット?聞いた事ない会社だな?代表取締役、平田修二って」

美幸「今日来たお客さん?」

宏「わからないな〜!ヒデさんの会社の名刺かな?」

美幸「先生の?」

宏「別におまえが先生と呼んでも、どこかで講義してたり、学校で勤務してるわけじゃないんだろう?どこかで働かないとメシ食えね〜だろ?」

美幸「そうだけど…。」

宏はその名刺の意味する事はわからなかった。そして、美幸はその名刺を見つめていた。

美幸「ねぇ宏!」

宏は無言で美幸を見た。

美幸「私にも、ネックレス買ってよ!」

宏「ネックレス?」

美幸「そう、世界に2つとない私だけの!」

宏「じゃあ、結婚式の時までには渡せるようにするよ」

美幸「本当?ありがとう!」

美幸はかなり喜んでいた。今度のありがとうは、宏は理解できた。そして、宏はカレンダーを見た。美幸との結婚式の日付ではなく…。


その頃、恵美は宏から貰ったネックレスを眺めながら、帰りの電車に揺られていた。

恵美「誕生石か〜」

静かな、電車の車内で、そのアメジストは悲しい輝きを放っているように恵美には見えた。


一方、あきなからの強制的な呼び出しを受けた孝は待ち合わせの銀座の時計台に向かわざるを得なかった。恵美とのデートを途中でキャンセルしてしまった孝であったが、電車の中での移動中ずっと、恵美の事が気になっていた。そして、あきなの事も…。

渋谷から15分くらいで銀座に着いた。渋谷とは違う、高級感が漂う雰囲気の夜景が広がっていた。そして、例の時計台の前には、その夜景の中に光のような白のス−ツ姿のあきながいた。道を挟んで、孝とあきなはお互いに気がついた。あきなは笑顔で小さく孝に手を振っていた。それに対して孝は少し照れたような笑顔である。

孝「ど、どうもお待たせしてしまい、あの…」

孝はかなり緊張していた。

あきな「嬉しい!来てくれるなんて」

孝「え?」

突然、孝はあきなに抱き着かれた。あきなの強制的な呼び出しであるにもかかわらず、まるでずっと待っていたあきなを孝が迎えに来たというシナリオであるかのような感じであった。たくさんの人込みの中で孝はあきなに抱き着かれたままで、通り過ぎる人達は見て見ぬふりの状態である。

孝「あ、あきなさん!」

あきな「あら、ごめんなさい。私つい!」

孝「いや、僕は大丈夫です。」

あきなは、初々しい女性のような振る舞いを見せた。

あきな「おいしい、フレンチのお店があるの。一緒に行きましょう。」

孝「はい…」

孝は、はにかんだ笑顔で返事をした。

そして、あきなは孝の左腕に抱き着いた。

孝「あ、あきなさん!」

あきな「何?」

孝「いや!な、何でもありません!」

孝は自分の左腕に、あきなの胸が当たっている事に意識が集中していた。

あきな「孝!そこを左に曲がったところよ!」

孝「左ですか?」

二人は、アンティークな感じの建物の前に来た。

あきな「ここよ!」

孝「なんか、少し古い感じの建物ですね!でも、メニューも看板もないですよ。なんか、隠れ家みたいな雰囲気ですね?」

あきな「そうね?まさに私達だけのためのお店よ。さあ、入りましょう。」

二人は腕を組んだまま入った。ドアを開けると、中は中世のお城のような内装になっていた。正面には一人のウェイタ−が立っていた。年齢は30代前後といったところだ。

ウェイタ−「いらっしゃいませ!お待ちしておりました。あちらに席を用意してあります。では、ご案内いたします。」

あきな「ありがとう」

孝とあきな腕を組んだまま、ウェイタ−に着いて行った。途中にはたくさんの壁画が飾られていた。もちろん、孝にはその壁画の価値はわからない。そして、階段を降りた。地下1階の手前くらいの階層だった。

ウェイタ−「どうぞ、こちらでございます。」

孝「ここですか?」

誰もいない広い部屋にテ−ブルが一つだけだった。

ウェイタ−「本日は貸し切りでございます。」

あきな「さあ、座りましょう。いつものお願い!」

ウェイタ−「はい、かしこまりました。」

ウェイタ−は階段を登って行った。

孝「いつもの?」

俺は心の中でふと思った。あきなさんはこの店の常連なのだろうか?しかも、なぜ、貸し切りなのか?そもそも、ここは本当にレストランなのか?

わからない事だらけである。

孝「あの?」

あきな「何?」

孝「あきなさんは、よくこのお店に来るのですか?」

あきな「なぜ、そんな事聞くの?」

あきなは、少し不機嫌に言った。孝は少し、焦った感じで、

孝「いや、答えたくなかったら、別にいいです。あ、あの…、なんかここってレストランというより、隠れ家みたいなお屋敷という感じで…」

あきなは無言で微笑んだ。その時、料理が運ばれてきた。

ウェイタ−「お待たせしました。あきな様用の定番のメニューを用意しました。」

さっき案内してくれたウェイタ−の服装が変わっていた。シェフのかっこうになっていた。孝は、ウェイタ−がシェフも兼任しているとわかった。しかも、ウェイタ−があきな様と呼ぶ事から、やはりあきなさんはこの店の常連なのだろうと、孝は勝手な推測をしていた。その後、二人は料理を楽しんだ。孝はお腹がいっぱいであった。数時間前までは、恵美とご飯を食べていたから当然である。

あきな「おいしかった。孝、どうだった?」

孝「はい、もうあまりのおいしさでお腹がいっぱいです。」

あきな「よかった〜!気にいって貰えて!では、行きましょう!」

孝「はい!」

すべては契約通り、デートはあきなのペースで進んでいった。そして、店の出口に来たところで、

ウェイタ−「ありがとうございました。また、お待ちしております。」

あきな「じゃあ!」

孝「?」

料理の精算がなかった。

そのウェイタ−はタキシードを脱いで、店の明かりを消した。

孝「あの、お会計は!」

ウェイタ−「あきなさんと一緒の方がいる時はただでいいですよ!」

孝「え?そうですか!ありがとうございます。」

ウェイタ−は閉店の準備を始めた。タキシードを脱いだウェイタ−はタンクトップだったが、体中には焼けど?のような跡なのか、体中の皮がむけたような跡がたくさんあった。孝は、ウェイタ−とシェフを兼任して、しかも店を一人でやっている苛酷さからこうなったのかとまたも、推測した。そして、孝とあきなは店を出た。

あきな「孝、今日はありがとう!」

孝「いや、そんな〜」

と遠慮がちに言う孝だが、すべてはあきなのシナリオ通りにしか進まない事をわかっていた。

孝「あの、明日の朝ご飯もあるので、コンビニによってもいいですか?」

孝は無意識のうちに、あきなに許可を求めるような口調になっていた。するとあきなは

あきな「いいわよ!」

孝は少し、ホッとした。二人は恋人同士のように腕を組み、コンビニに入った。

孝「パンのコ−ナ−のところに行きます。」

あきな「どうぞ!私は雑誌を見てるから」

あきなは微笑んだ。孝はまたも許可を求めるような口調になっていた。孝が店内のパン売り場のところに行くと、バイト帰りの達也がいた。

達也「あ、白川さん!」

孝「達也!」

孝はまずいところで会ったと思い意外な表情で、達也を見ていた。

達也「白川さん。どうしたんですか?デートの帰りですか?」

孝「デート?そう…、デートの帰り!」

孝は雑誌コ−ナ−で立ち読みをしているあきなを少し意識して答えた。すると、孝は達也の手に持っている封筒が目に入った。

孝「達也!その封筒は?」

達也「あ、これですか?本ですよ。」

孝は目を細めて

孝「へぇ〜、達也君!その封筒の厚みから、かなり買い込んでますねぇ〜!」

達也「ちょ、ちょっと待って下さいよ!白川さん!何か、変な本と勘違いしてませんか?」

孝「いやいや、い〜んだよ!まあ、男ならそういう本!いや、写真集を見たくなる時もあるから隠さなくても!」

達也「だ、だから、これは違いますよ。あまり大きな声で言わないで下さいよ!」

達也は、中身を見せないが、否定し続けた。そんな、やりとりをしていたら孝の後ろからあきなが近づいて来て

あきな「あら孝の知り合い?」

孝は、後ろを振り向いた。達也は、少し驚いた表情で

達也「すっげー、美人!」

少し、小声でささやいた。孝は平常心を保つ努力をしながら

孝「同じ、バイト先の…」

達也「氷川達也です。」

孝が紹介する前に自分から名乗った。あきなは、無言で微笑んでいた。そして達也は、

達也「あの〜、白川さんのお友達ですか?」

二人を探るように見ながら言った。するとあきなは優しい笑顔で

あきな「はい、孝とお付き合いをさせて頂いてます。」

孝「え???」

あきなは孝の腕に抱き着いた。

達也「なんで…?」

達也は低い声で、ささやくように言った。なぜなら、達也の頭の中には、孝の彼女は恵美である事を知っていたからだ。

あきな「ねぇ!孝!」

孝はあきなの優しい笑顔の中に威圧的なものを感じた。

孝「そう、俺達付き合ってて…。」

達也「でも、白川さん!恵美さんは?」

達也は、不思議そうに見ていた。

孝「え?いやいや、今は…、いや数時間前は、恵美が…」

達也「白川さん、そういうのって、もしかして…。」

孝「アハハ…」

達也は二股とは言わなかったが、孝には達也の言いたい事はわかっていた。

あきな「じゃあ、達也さん!私達はここで!」

孝「達也!また今度な!」

孝は、冷や汗が止まらなかった。そして、孝はコンビニで何も買う事なく、強制的にあきなに連れられてコンビニを出た。また、あきなは孝の左腕に掴まった。

あきな「今日は、本当にありがとう。」

孝「いえ、そんな!」

あきな「遅くなったわね!お礼に今日は孝の家まで送らせて」

孝は断ろうとしたが、自分に権限がない事を理解していた。

孝「悪いなあ〜!じゃあちょっと甘えちゃおうかな?」

あきな「本当?うれしい!今日、待ち合わせをした時計台のところに車が来てるはずだから、それで一緒に帰りましょう」

孝には、あきなの喜ぶ姿が純粋な少女のように見えた。がしかし、それもあきなのシナリオの一部であるとも感じていた。


数分程歩いて、孝とあきなは時計台のところに着いた。一台の車が止まっていた。そして、ス−ツ姿の男性が立っていた。

孝「あれ?」

孝は運転手が前と違う事に気付いた。

運転手「お疲れ様でした。」

あきな「孝の家まで送りたいからお願い!」

運転手「はい、かしこまりました。」

孝とあきなは、前回同様に後部座席に座った。

孝は、これでやっと帰れると安心した。結局、デートは無事に終わったが孝にとっては、謎だらけのデートだった。かと言って、あの契約書により、すべての権限があきなにある事から今は何も知る術が思いつかなかった。ただ唯一、孝がわかっているのは、美しいバラにもトゲはあるという事である。そして、帰りの車の中で沈黙が続いた。あきなは、外の景色を見てたそがれている。そして、あきなは携帯を取り出し誰かに電話を始めた。

あきな「お疲れ様です。どうでしたか?…そうですかぁ〜。はい、わかりました。」

そして、あきなは電話を切った。

孝「敬語?」

孝はふと心の中で思った。そしてあきなの携帯の相手は目上の人?という推測をした。その時、孝は、あきなが運転手付きの車に乗る程の地位の人なのに?とも思った。あきなはまた、窓の外を見ながら考え事をしていた。外は大渋滞になっていた。

運転手「すみません。渋谷で渋滞に捕まってしまいました。」

あきな「嫌な街!なんか混み混みしていて!」

一人、冷酷な表情でつぶやいた。孝は、あきなの中に一瞬、怖い女を見た 。孝は目をそらして、あきなと反対の窓の外を見た。その時、歩道を泣きながら走っている女性を見つけた。恵美だった。

孝「恵美!泣いてる?」

孝は、何か動揺を隠せなかった。隣に座っているあきなは、孝の動揺を見逃さなかった。

あきな「かわいい彼女ね!」

子悪魔のような、表情で言った。デート中のような、初々しさがある女性の雰囲気は既に、なかった。さっきの電話以降、態度が違っていた。

孝「え?」

なぜか、見透かされていた。

孝「なぜ、わかったのですか?」

あきな「あなたが、そういう態度を出したからでしょう。」

嫉妬?いやそんな事はない!女の勘?それとも自分の心を読まれていたのか?孝はいろいろ考えたが

孝「すみません。彼女が心配なので、ここで結構です。」

あきな「あなた!まだ勤務中でしょう!」

と言いながら、あきなは左足で孝のすねを蹴った。

孝「いて〜!」

孝は、俯いて右足をさすった。ハイヒールの先だったため痛みも倍増である。そして、孝は若干スカートがめくれた状態のあきなの細い足に目が行った。足の先から上半身へ視線を少しづつ上げて行くと、太ももの辺りに大きなアザを発見した。

あきな「どうしたの?何見てるの?」

あきなは、少し色気のある声で言った。

孝「いや、何もないです。」

孝の中で疑問とドキドキ感が交差していた。

そして、あきなは、自分の足に孝の視線が来ている事に気付いていた。

あきな「どうしたの?触りたいの?」

孝「え、それは…」

孝はスカートから伸びる細い足に対するドキドキ感とその足にある尋常でないアザまたは、焼けどのような跡に疑問を感じた。

あきな「足だけなら、触ってもいいよ!」

あきなは、何かを企んでいるかのような口調だった。それに対して孝は、高鳴る鼓動を感じていた。

あきな「足だけじゃ、不満?」

孝「いえ…。そ、そんな…」

あきなの子悪魔のような表情に、孝は飲み込まれそうだった。その時、突然、車が止まった。

運転手「着きました。」

車の窓の外を見ると孝のマンションの前だった。すると、あきなはめくれ上がったスカートを戻して

あきな「フフ!アハハ…ハハハハ…ハハハ!」

あきなは、笑い出した。そして、しばらくはあきなは笑いが止まらなかった。すると、豹変して

あきな「今日の勤務は終わりよ!帰っていいわよ!」

孝は、少し安心した。運転手は車を降りて、まわり込んで後部座席のドアを開けた。そして、孝は車から降りようとした時、後ろからあきなに抱き着かれた。

あきな「ごめんなさい!」

孝「え?」

今のあきなは、清純でかわいい女性になっていた。というよりは、演技?していた感じだった。さっきまでのプライドの高い女性ではなかった。

あきな「さっきは蹴ったりして…私そんなつもりはなかったの。本当にごめんなさい!」

孝「あ、あの…僕は、別に大丈夫ですので、気にしなくても…」

孝は恐怖感を感じた。

あきな「本当にごめんなさい。今度はお詫びに私にご飯でもおごらせて!いい?」

孝はまたも、どこかで出来上がったシナリオのような物を感じた。本当は遠慮したかったが、

孝「ありがとうございます。」

無難な返事をした。

あきな「本当?嬉しい!じゃあまた電話するわ、今日はおやすみなさい!」

孝は安心した。解放されるという安心感だった。

孝は車を出た。

運転手「お疲れ様でした。」

孝はドアを開けてくれた運転手を見て、無言で会釈をして、マンションの自分の部屋を、少し早足で一心不乱に目指した。途中、振り替えるとあきなが微笑んでいたので、社交辞令で孝も微笑んだ。そして、孝は逃げるように自分の部屋に入った。部屋の明かりも付けないまま真っ暗な状態で玄関のところから、まっすぐ、布団の上に倒れた。

孝「助かった!」

孝は無意識のうちにその言葉が出た。外から、車の発車する音が聞こえた。孝は今日一番の安心を感じた。

孝「イテ!」

孝は、あきなに蹴られた足の事を思い出すように痛みを感じた。

孝「あ〜、まさか蹴られるとは…。多分、青血になっているんだろうな」

独り言を言いながら、電気も付けない部屋で蹴られたところをさすっていた。孝は携帯を取り出した。帰りの車から渋谷で泣きながら走っている恵美の姿を思い出した。

孝「恵美に電話をしておこうかな?」

しかし、孝は何度も恵美の番号を鳴らしたが出なかった。

孝「出ない!もう、寝たのか?」

そう言って孝は携帯を投げ出し大の字になって、そのまま眠りに入った。



しかし、孝からの着信があった時に恵美は起きていた。恵美は意図的に携帯に出なかった。ベッドの中で涙を零しながら、宏から貰ったネックレスを眺めていた。

恵美「私の誕生石!」

そう独り言を言いながら眠りに入った。



孝と別れたあきなは例によって車で帰っていた。あきなは後部座席で、考え事をしていた。

あきな「ねえ、(つとむ)?」

運転手「はい、何ですか?」

あきな「さっきの男性はどう?」

運転手「どう?と言いますと?」

あきな「一年、持つと思う?」

運転手「一年ですか〜!?長いですね〜」

あきな「あ〜あ、全くもうやってられない。なんで私が…。知らない男達と」

運転手「ハハハ!先輩、かなりストレスが溜まってますね?」

あきな「そりゃ溜まるわよ。また、ダラダラ恋愛ごっこなんかしてたら、結婚できないかも…」

運転手「あれ?先輩って結婚願望があったのですか?」

あきな「当たり前よ!あ!いや、少しだけ…」

運転手「ハハハハ!」

あきな「何、笑ってんの?」

運転手「かわいいな〜と思って」

あきな「もう、聞き飽きた!」

運転手「じゃあ、なんて言ったらいいんですか?美人!でいいですか?」

あきな「それも、同じ!もういいわよ。」

あきなは呆れ顔とともに少しフクれていた。

運転手「先輩、ちょっと聞いていいですか?」

あきな「何?」

運転手「さっきって、やっぱり足だけだったら触らせてもよかったのですか?」

あきな「バカ!駄目に決まってるでしょう!」

運転手「ハハハハ!じゃあ、俺だったら?」

あきな「あなたも駄目に決まってるでしょう!あんまり、からかうとクビにするわよ!あなたは運転に集中しなさい。事故らないでよ!」

運転手「へい!すみません!先輩!いや社長!」

車内は和やかな雰囲気だった。

運転手「でも、先輩どうするのですか?あの男性との一年?並行してあとその他にも13人の方とお付き合いしてたら、体の方が…。

その時、あきなが少し睨んだ。

運転手「いや、肉体関係とかそうじゃなくて、日程的にですよ!」


あきな「わかってるわよ。」

あきなは少し、考え込んだ。

あきな「やはり、このままじゃ時間が足りないな!」

運転手「そうですね。どうするおつもりで」

あきな「探すしかないかな?」

運転手「今からですか?」

あきな「まあ、心配しなくてもだいたい見当はついてるから」

そう言って、あきなは笑顔で自分の足のアザを見ていた。。


人の価値とは様々なもの。それぞれの、人生の中で人は何に価値を見出し、何を手に入れる事がその人にとっての幸せか?その答えは、誰にもわからない。現実で起こったすべての事が答えである。

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