-7-
公園のお姉さんのタイムマシンは、お姉さんがすぐにタイムマシンと判ったのが理解できるほどシンプルな造りだった。
骨組みだけに座席と操作盤。
座席の後ろには、ホバークラフトを思わせるプロペラがある。
そして操作盤には10ケタの数字を入れられるパネルと、レバーが一つ。英語でfutureとpastと書いてある。前へ押せば未来。手前に引けば過去ということだろう。
お姉さんの手紙には鍵と地図が同封してあった。
あたしが今いるのは、地図に書いてあった別荘だ。別荘の玄関を開けるとすぐにタイムマシンが目に飛び込んできた。
あたしはタイムマシンに座った。
お姉さんは手紙にあたしの決断を支持すると書いてあった。
タイムマシンをどうするか、結論はもう出ていた。
あたしは絶望していた。
父と母が離婚したから、だけでなく。
会社で頑張って出した成果が、大っ嫌いな上司に横取りされて、信じていた先輩も誰も味方になってくれなかったから。それでも歯を食いしばって頑張っても上司の嫌がらせは続き、みんな見て見ぬふりをしたから。
妹が死んだ時と同じだ。
ニュースで聞くより、実際に我が身に降りかかるとそれは、とても耐えられないほど辛いものだった。
タイムマシンの操作盤の数字を、ひと桁目から慎重に設定していく。
パネルに入れられる数字は最大で99億9999万9999。単位は年だと、お姉さんの手紙には書いてあった。
あたしには試してみたいことがあった。
もし、最大の数字を入れてこのタイムマシンを過去へ飛ばしたら、地球はいったいどうなるのだろう。
99億9999万9999年前は、地球が生まれるよりもまだ50億年以上過去だ。
このタイムマシンの作動原理がお姉さんの推測通りだとすると、もし、まだ地球が生まれていない、取り出そうにも何の情報もない過去までこのタイムマシンを飛ばしたら、果たして地球は元に戻るのだろうか。
それとも、ちっぽけなブラックホールのままなのだろうか……。