グルメに恋とグルメな恋と
「えへへ~。美味しそうでしょ、どっちがいい?」
二つのお皿を前にして、満面の笑顔。
僕の彼女は、料理を作るのも食べるのも大好きなグルメさんだ。
僕としては彼女の気持ちが料理にばかり向かっているようで、ちょっと悔しい。
なので、料理ではなく彼女を指さしてみる。
「駄目だよっ。ちゃんと選んでくれないと!」
ちぇっ……駄目か。
ちょっとクサい行動だけど、どっちの料理よりも君が好き、みたいにしてみたかったんだけど。
「えっと、それじゃあそっちかな」
「はーい!それじゃあ多めによそってあげるね!さあ、召し上がれ!」
なんて言いながら彼女は、「勿論こっちも食べてね」と両方しっかり取り分け皿に盛ってくれた。
「ごちそうさまでした」
「美味しかった?」
「うん、すっごく」
食べ終えると、味について尋ねられる。
僕の答えに、彼女は満足そうだった。
「それじゃあ、どっちの料理の方が良く出来てた?どっちが好き?」
最初と似たような質問に、またも彼女を指さしてみる。
「もー!駄目だったら!ちゃんと答えてよー」
やっぱりこの答えはお気に召さなかったみたいで、むくれる彼女、可愛い。
「彼氏さんの好みはちゃんと把握しておきたいのにー」
なんて言うから、「僕の好みは君だよ」と伝えると、更にむくれしまった。
「むー」
なんて唸ってる。
……しまった。怒らせちゃったかな?
「料理扱いはイヤだもん」
言って、彼女は照れた顔で僕を見つめる。
「料理と比較して、好きじゃだめ。ううん、何かと比較して好きじゃだめ」
恥ずかしそうにしながらも、彼女は続ける。
「私のことが一番好きってこと、ちゃんと言葉にして欲しいな」
……成程。
どうやら僕の彼女は、恋も大変、グルメらしい。