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間違いのフェイト  作者: 青木りよこ
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夫がお風呂に入ったので岡山の母親に電話し、フェイト・システムの誤作動と再来週から彦根に住むことを一気に話した。


「じゃあ、来月桃送ろうと思ってたんだけど、送らない方がいいのね?」

「うん」

「でも楓さんにはお世話になったことだし一年間のお礼を込めて送る?」

「いらないと思う。あの人果物の皮なんて剥けないし」

「じゃあマスカットは?皮ごと食べれるやつ」

「いらないよ。もう家と関わりたくないだろうし」

「そう?まあこんなことあるのね。何だか信じられない」

「この百年で十件だって」

「じゃあ少ない方なのね」

「多分」

「こんなこと言っちゃなんだけど、何か納得するわ。だって楓さんとあんたじゃこう、釣り合わないっていうか、正直申し訳ないって思ってたのよ。家は本当に普通だし」

「そうだよね」

「京大入った知り合いすらいないもの」

「ねー」

「今度のお相手はどんな人なの?」

「背高くて眼鏡かけてる」

「それ楓さんじゃない」

「でもイケメンじゃない」

「酷いの?」

「酷くないよ。感じのいい人。少なくとも私はいいなと思ったよ」

「何やってる人?」

「知らない」

「ちゃんと聞きなさいよ。楓さんと違って大した収入があるわけじゃないだろうから、また働くことになるかもしれないわよ」

「それはいいよ」

「まあ何事もやってみなくちゃわからないしね。まあでも贅沢はできないと思っときなさい。一度一緒に帰って来なさいよ。お盆じゃなくていいから」

「お盆じゃない方がいいの?」

「暑いし、お姉ちゃん達も帰ってくるから泊めるとこないし」

「うん、まあ追々相談して」

「まあもう子供じゃないんだし、二度目だしね」

「二度目じゃないよ。初婚になるんだって」

「そうなの?」

「うん」


父の話と姉と甥の話を少しして電話を切り、オタ友の空ちゃんに電話する。

空ちゃんとは推しが一度もかぶることはなかったけど、それが逆に良かったのか高校、専門学校と二人とも現実の一時的彼氏より二次元だったので結婚するまでいつも一緒に遊んでいた。

空ちゃんは結婚して今は大阪にいる。

相手の人もオタクだったから、互いの趣味に干渉せず、でも共通する面白さは伸ばしつつ、楽しくやってるみたいだった。

母に言ったようにフェイト・システムの誤作動と再来週から彦根で暮らすことになること、理さんの容姿、現在の奥さんとは別居婚だということなどを報告する。


「また眼鏡なんだ?」

「うん」

「まあ、大丈夫だよ。日本の眼鏡男は大概巨乳好きだから」

「ホントに?どこ調べ?」

「独断と偏見。まあ今度は絶対上手くいくよ。Hカップなんて全人類救済できるカップじゃない。大丈夫」

「空ちゃんいつも言うよねー。そんなに巨乳好き?」

「好きだねー。ロリ以外の貧乳とかいらないじゃない。成人女性の貧乳とか誰得よ。美弥子には絶対わかんないだろうけど私なんか70Aカップでガバガバだからね。まあ大丈夫。心配いらないよ。向こうも絶対美弥子見て当たりだと思ったって。私が男ならHカップ美人とか嬉しすぎて死ねるもん」

「美人じゃないよー」

「美人ではないかもしれないけど、可愛いよ。こういう子がお嫁さんだったらいいなっていう可愛さだよ。家帰って美弥子いたら私嬉しいもん」

「でもすぐ帰っちゃったよ」

「だっていきなり連れて帰るわけにもいかないでしょ。部屋だって片付けなきゃいけないし。嫁さんバリキャリだから別居してるんだろうから、奥さんに未練はないだろうから、上手くいくよ」

「そうかなー。でも瞳さんて凄く美人なんだよ」

「絶対に手の届かない美人よりいつでも手伸ばせばおっぱい触らせてくれるそこそこの方がいいと思うけど。しかもHカップ」

「Hカップ言いたいだけでしょ」

「結婚してから一回も会ってないよね。そろそろ会いたいねー」

「会いたいよー」

「でもこれからは会えるんじゃない?旦那さんのお休みに出かけるの悪いからって言ってたけど、今度の人はそんなに気を使わなくていいんじゃないの?エリートってわけでもないだろうし、オタクだし」

「アクキーでオタクって判断するのはどうかなあ。お土産に貰ったかもしれないし」

「でも付ける?あとキャラクターTシャツ」

「それこそもらい物かも」

「オタクじゃない方がいいの?」

「別にどっちでもいい。ただちょっとは気が合ったほうがいいかなって」

「じゃあオタクだ」

「空ちゃん旦那さんと上手くいってる?」

「腐女子と百合好きだよ。変態の星取り合戦だよ」

「上手くいってるんだね」

「上手くいかなくてもしょうがないし。だって所詮他人なんだから過度な期待しちゃ駄目でしょ。でも相手に不満があるからって不倫する人達の気持ちはわかんないかな。そんなことする暇あるならソシャゲもっと増やすわ」

「だねー」

「オタクの性だから想像すんなって言うのは無理だけど、あんまり期待しちゃ駄目だよ。美弥子のことだから今度こそ上手くいくといいなとか、好きになれたらいいなとか思ってたりするだろうけど」

「うん、そうだよね」

「でも大概の日本人男性は生粋のロリコンじゃない限り美弥子の容姿は好きだと思うから美人な元嫁は気にしなくていいよ。Hカップなんだから」

「うーん」

「DVとか心配してる?」

「ううん、全然」

「ホモは?」

「それなら逆に凄く上手くいく気がする」

「そうね。寧ろ彼氏に会わせて言うし、二人の恋を全力で応援するよね」

「するする」


夫がお風呂から上がったので電話を切った。


「空さんですか?」

「はい」

「お風呂入ってきたらどうですか」

「はい、そうします」


お風呂から上がるとテーブルの上にルーズリーフが一枚置いてあって、綺麗な字で、びっしりと馴染みのある料理の名前が箇条書きされていて、何だか少し可笑しかった。













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