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間違いのフェイト  作者: 青木りよこ
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「元カノが腐女子で本出してて、今結婚して島根とか誰が想像した?理さん面白すぎなんだけど」


月曜日理さんを送り出すと一番に空ちゃんに電話した。

聞いてほしいことは山ほどあったけど、まずはこれだ。


「面白くないよー。もうびっくりしてさー、正直立ち直れないかと思ったんだよー。朝起きたらもうどうでも良くなったけど」

「眼鏡取ったら意外とカッコいいイベあった?」

「そんなのないよ。普通。寧ろ眼鏡取ったら集合写真とかじゃ見つけられなさそう」

「それは残念だね。でも野球オタクでアニメも見るし、腐にも理解あるとか最高じゃない?しかも公務員」

「うん。そう思う。優しいし」

「優しんだ?」

「うん。優しいよ。それに緊張しない」

「宮原さん緊張したの?」

「多分。結構慣れるの時間かかった気がする」

「それは嫌だね」

「いっつも何か話してくださいって言うの。でもさー、そんなこと言われても何話していいかわかんなくない?こっちはアニメとゲームと漫画の知識しかなくってさー。細胞何か興味ないし」

「細胞の話すんの?」

「ううん、しないけど。理さんはさ、勝手に喋っててくれるから、すっごく楽」

「野球の話ばっかり?」

「漫画の話もするし、アニメの話もする。同い年だとやっぱり同じ物見てるよね」

「あー。そうそう」


宮原さんは見てなかったけど。

私達の世代で読んでなくてもタイトルくらいは知っていると思われる単行本累計一億冊の漫画を知らなかったし。

あの時は少し驚いた。

一体あの人何をして生きてきたんだろう。

勉強か。

そうだ、私達が遊んでいる間あの人はずっと勉強し続けてきたのだ。

聞かなかった勉強が趣味だったんだ。きっと。


「ゲームする人?」

「うん。同じのやってた。ブルファン。課金はしないみたいだけど」

「いいじゃない。うちのは結構してるよー。まあ自分の稼いだお金だからとやかく言わないようにしてるけどー。少しは貯金したいよね。子供のこともあるし」

「できたの?」

「ううん」

「病院どうする?」

「義務じゃないし行かないよー。三年くらいはほっとく。家のお母さんもお姉ちゃん産んだの結婚して三年後だし」

「そっかー」

「あんまり考えすぎてもね。二人の生活楽しいし」

「最初から楽しかった?」

「うん。オタクだったし。持ってない漫画いっぱい読ましてくれて最初部屋行った時感動した。それに大阪やっぱ便利」

「そうだろうねー」

「岡山じゃ交通費かかるしねー。やっぱりオタクやんなら都会だよ」

「うん」

「元カノさん島根でも本描いてんのかな?」

「聞いてないよー。あんまりしつこいと面倒だなって呆れられない?」

「可愛い巨乳嫁が言うことなら何でも許せると思うけどー。ねえ、理さんて凄い強運の持ち主じゃない?」

「え?」

「だってフェイト・システムの誤作動そのままにされてたら一生一人で野球だけが趣味の寂しい人生だったわけじゃない。それが今やHカップ美人嫁だよ。幸せすぎない?何なの?異世界にカボチャ持って行って国一個くらい救ったの?」

「何でカボチャ?」

「栄養あるでしょ」

「確かに」


そう言われるとカボチャ食べたい気がする。

今日はカボチャをひじきと蓮根といんげんと煮て、魚食べたいって言ってたから煮魚にしよう。

理さんはお魚の骨を抜かなくても平気だ。

鯖の小骨も鯵の小骨もめんどくさがらずしっかりお箸で取り除いて食べてくれる。

たった二人分だし、別に骨を抜くのなんか簡単だ。

時間はいくらでもあったのだから、にしんの骨抜いてあげれば良かったな。


「でもさー、本出してるってそれだけでオタクとして一段上な気がするよねー?」

「そうだね」


確かに妄想はいくらでもできるけど、それを文字に起こしたり、ましてや絵にするなんてとてもじゃないけどできない。

それだけでまだ顔も見たこともない元彼女さんが自分よりずっと素晴らしい女性に思え、悔しいと言うより悲しい。

嫉妬より同人誌出してるってだけで尊敬が勝る。

こんな可愛い鞘師を書いてくれて有難うございますという。


「何描いてる人なんだろ。インテで会えたりして」

「聞いてないし、聞かない方がいいでしょ。蒸し返したくない」

「そりゃそうだ。逆カプだったりして。もしくは買ったことある作家さんだったら面白すぎない?」

「面白くないよ・・・」

「まあ、上手くいってるみたいで良かったよ」

「うん、後ね来月の試合一緒に連れてってくれるって」

「自らのホームに連れてってくれるわけだ。じゃあ愛人いないね」

「最初からいないと思ってたけどね」


電話を切り洗濯物を干して掃除をして、自転車に跨り家を出た。

今日は一人で彦根を探検しようと思っていた。

携帯の地図も見ないで唯ひたすら自転車を走らすと滋賀大学と書かれた建物に出くわした。

此処に通っていたんだ。

どうせなら彼の解説付きで来たかったなと思い、急に一人の寂しさがこみあげて来て、彼の働いている市役所の前をわざわざ通り駅前の平和堂で買い物をして帰った。









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