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08 買い物


「「あつぅい・・・」」


 茹でダコになった僕とルティはベッドの上で転がっていた。


「ちょっと温まりすぎたわね…」


「久しぶりだったからね。仕方ないね…」


 軽ーく氷の吐息を部屋に出して涼む。


「「すずしーい!」」


「これからの暑い季節はナツキが欠かせなくなるわねー」


「人を道具みたいに…って夏あるんだ?」


「そりゃあるわよ。一年通して同じなわけないじゃない」


 どうやらちゃんと季節があるみたい。今は春で、もうすぐ暑くなるとか。

 

「だから服は薄手のものを買うわよ。もうちょっと涼んだら行きましょうか」


「はいよー」


 


◇◆◇




「いらっしゃいませ!ザンブルで一番の服飾店、プティベールへようこそ!」


 いきなりテンションの高い出迎えをされて、思わず間違えましたと言いかけたところをぐっとこらえた。

 そもそもこの街に二軒(それぞれ男物専門と女物専門)しかない服屋に来たのに、一番も何も…

 胡乱な目をしながらお姉さんを見る。


「何をお探しでしょうか!?当店では下着やパジャマから果てはドレスまで取り揃えております!」


「ああ、えとこの子の服を下着から一式揃えたいんですが…」


 さすがにルティも引き気味だ。


「かしこまりました!それでは早速採寸させて頂きます!」


 そう言っていきなり僕の外套を

 脱がせた(・・・・)


 途端に凍り付く店内。そりゃそうだ、だってそれ以外何も着てないんだから…


 店員さん(犯人)も変な汗を出しながら固まっている。さすがの僕も顔を熱くしながら外套を取り返す。いくら裸族経験者といえどこの状況はキツイ。


「…奥でお願いできますか?」


「…はぃ」


 消え入りそうな声で返事をする店員さんと一緒に店の奥に移動した。






「先ほどは大変申し訳ございませんでした…お代のほうを勉強させて頂きますので、どうかご容赦のほどを…」


「もう過ぎたことですから…でも値引はお願いしますね?」


 まだ熱いままの顔を若干俯かせながらそう答え、採寸をしてもらう。




「それではまずサイズに合った下着をお持ち致しますね」


「あ、出来ればブラはストラップレスのものにしてあげてください」


「あ!そうですね、ではそのタイプのものをご用意致します」


 店員さんがそう言いながら下着コーナーまで見繕いに行った。


「すとらっぷれす?」


 肩紐のないタイプのものだと教えてくれる。僕達みたいな翼のある人達は、着けるときに邪魔になったり、合わせる服の関係で肩紐が見えたりするので、ストラップレスを選ぶことが多いのだとか。


「お待たせしました。こちらなどいかがでしょうか?」


 店員さんが持ってきてくれたのは、薄青の無地の上下。涼し気でシンプルな感じがいい。

 気に入ったのでそのまま着け方を教えてもらい、鏡を見てみる。いい感じ。


 そう言えば鏡で自分を見たのは初めてだ。瞳が金色とか今知ったよ。瞳孔が縦長で竜っぽい。

 こんな顔してたんだなぁ…我ながらかっこかわいい。なんて自画自賛してると店員さんが次は服をもってきてくれた。


 白いホルターネックブラウスと、膝丈で淡い水色のフレアスカート。どちらも尻尾を考慮してスリットやボタンが付いている。最初はアレだったけど、この店員さん仕事はできそう…


 他にも予備などを選びながら、種類だとか色々教えてもらった。




「決まったー?」


 いつの間にかルティも買い込んでいたようだ。しかもすでに着替えている。

 白地に薄紅色の柄が入った膝上丈のホルターネックワンピース。それとスパッツ。胸元が結構開いているデザインなのは自慢に違いない。チクショウ…


「ナツキもこういうの履いとかないと、飛んだ時とか見えちゃうわよ?」


 なるほどそれでスパッツを履いているのか。そういえば今までも履いていたっけ。

 しばらく悩んだ末、七分丈のレギンスをチョイス。


 調子に乗って選んでいたら大分時間が経ってしまった。靴屋に行く時間が無くなるので慌てて会計をする。大分値引いてもらった上に、シュシュや櫛なんかの小物まで貰ってしまった。ないない尽くしなので素直に嬉しい。


「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」


 最初のハプニングも忘れ、結構いいお店だったなどと言いながら靴屋へ向かっていった。





 靴屋に着いて二人でぷらぷらと物色していく。

 

「たまにはこういうのも履いてみたいんだけどなぁ」


 ヒールの高いパンプスを手に取りルティがこぼしている。


「履けばいいじゃない」


「いやほら、こういうの履いてると咄嗟に動けないじゃない…」


 旅には使えず、仕事用としても使えず、飽くまでお洒落靴。履く機会が少なすぎるため買うのを躊躇うらしい。確かに飾っておくものでもないから、そういうことなら手は出しづらいなぁ。


「でもそういうこと言ったら、僕なんてもっと選択肢ないんだけど」


 なんで選択肢がないかというと、足の爪が関係している。つま先の出ている靴でないと、いざという時爪が使えないのだ。


 世の中うまくいかないもんだ、とお互い苦笑しながら、ヒールの低い靴が並んでいるコーナーに行き、ルティは編み上げのショートブーツ、僕はブーツサンダルを選んで今日の買い物は終了した。

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