50 ブラックお断り!
決行日当日、小分けにされた部隊がアジト近くの街まで出発した。
大部隊で行動すると目立つので小部隊ごとにルートをばらけさせて移動。
通常、徒歩で片道二十日の距離だけど、そこは流石にみんな鍛えているし、作戦行動なので十日ほどで集合が完了する予定。
……なんだけども
「いや、まぁ、作戦行動だし? わかるんだけどさぁ? 僕がいくら丈夫だからってこれはないんじゃないのぉぉぉ!?」
我らが隊長、ネラさんに悪態をつきながら頑張って飛んでいる僕。
他の飛べる隊員同様、籠みたいなものに飛べない隊員を詰め込んで一生懸命飛んでるんだけど……僕だけ他の隊員に比べて運んでいる隊員の数が明らかに多い。
いやさぁ? 確かにたまたま、うちの部隊飛べる人多いからこういう作戦になるのもわからなくはないけどね? ちょっと無理させすぎじゃないですかね!?
『ナツキさんは膂力がありますから……。私としても心苦しいのですが、これも作戦命令ですので、何とか飛んでください』
えぇ、えぇ! そりゃ丈夫ですよ! でも、いくらなんでも僕だけ倍の隊員運ぶってないんじゃないですかね!?
そう思いつつルティが大丈夫かと見てみると、そっちはそっちで通常の二割増しくらいの人員を運んでいる。
膂力としては並だけど、他隊員より飛行が達者ということで多めになってる模様。
『ルティ大丈夫!?』
『大丈夫は大丈夫だけど、まぁ楽ではないわよね……』
割となんてことない風に言うけれど、明らかに疲労感は出てきている。
速度が重要なのはわかるけど、ちょっと飛行部隊に負担かけすぎじゃないですかねぇ!?
「ぜぇ、ぜぇ……」
「ナツキさん、その……お疲れ様でした。他部隊よりも早く着いたので、その分休息が取れますので……ゆっくり休んでください」
くそぅ、普段お世話になってるネラさんにそう言われたら強く言えないじゃないか……!
頑張った結果、他部隊よりも四日ほど余裕をとれたけど、これは割に合ってるのか微妙な気がする。
「ふぅ……ルティお疲れ様」
「ナツキもお疲れ様。四日後までに疲れは取れそう?」
「んー……まぁ、他の団員が着くまでには回復してるかなぁ?」
拠点となる街で時間が取れたのでルティと散歩。
ルティがそこまで疲れてなさそうなのは幸いだけど、やっぱり酷使しすぎじゃないですかねぇ。
まぁ、あまり飛ぶのが得意でない隊員も頑張って飛んでたから、あんまり僕たちが文句言ってもしょうがないか。
「とりあえずせっかくの休憩時間だし、露店とか見て回る?」
「そうねぇ。何があるか知らないし回ってみましょっか」
といって回ったのはいいけれど、そこはほら、地方都市ならぬ街。
大したものがあるわけでもないし早々に宿に戻る羽目に。
「ある程度はわかっていたつもりだけど、ザンブルに比べても露店がちょっと少なかったわね」
「僕も前にここは来たけど、個人的に回ってみるほど余裕なかったからねぇ……ごめん、もうちょっと探せていれば見所も見つけられたんだろうけど」
「そこはしょうがないわよ。私だってあの時余裕なかったから気持ちはわかるし……」
必要以上にお互いにお互いを気にしあうのは、うーん……共依存? なのかな?
でもそれでもいいかなぁ……お互いに思いあっているってことだし。
悪くない……ないよね?
そんなことを思いつつネラさんには内緒でお酒を買って、部屋でルティと過ごした。
ま、まだ他の団員集まってないしね!?
ちょっと頑張ったしいいはず、多分、きっと……
「諸君、これから本格的に作戦行動に移る。戦力差を勘案するに、諸君が普段通りの実力を発揮すれば問題はないだろう。だが、かといって油断のできる状況でもない。しっかりと気を引き締めて欲しい」
全ての団員が揃っての最後の号令。討伐に足る人数は揃えているけれど、余裕とまではいかないんだろうね。確かに、万全を期すなら三倍の戦力差は欲しいだろうし……。
とはいえこちらも日ごろから訓練を重ねた集団。有象無象の賊にそうそう負けるような……言い方は悪いけど「へたれ」はいないわけで。
いよいよとなったせいか、全員気分が高揚し始める。
緊張感もあるし、精神的状況はいい感じ。
「よろしい! ではこれより行動開始となる! 捕り漏らしがないように注意しろ!!」
おぉ!!! と各団員が発し、作戦の本格的な実行となった。




