XX5 A5ランクのお肉
こっそりと……
リハビリです(またか
鶏、豚、羊……あ、珍しく兎もある
「今日はどれにしようかなぁ……揚げ物……いや、煮込みも捨てがたいなぁ」
僕は夕飯のメニューを考えながら、肉屋の前であーでもないこーでもないと、うんうん唸っている。
「ナツキったら、ちょっと悩みすぎじゃない?」
「えー、だってせっかく明日お休みなんだし、ちょっと手の込んだの作ってガッツリ食べたいじゃない」
「まぁわからなくはないけど……」
確かに悩みすぎかと自分でも思うけど、若干呆れたような顔しなくてもいいじゃない……
本当に食べたいものなら、食べる時だけじゃなくて、食材を買う段階から幸せになれるんだから。
「ううーん、今日は訓練で目いっぱい体動かしたし……よし、カツにしよ。おじさん豚肉くださーい!」
卵は買ったし、パン粉も昨日の残りのパンを削れば作れるし、他に買うものは野菜くらいかなぁ……
ん? そういえば……
「オークって美味しいのかなぁ? ルティは食べたことある?」
僕の発言を聞いた瞬間、ルティの表情が固まる。んん?
「……ナツキってゲテモノもいけるクチなの?」
あっれぇ? 前の世界だと、よく小説とかでオーク肉をカツにして美味しそうに食べてる描写があったりしたんだけど、こっちだとゲテモノなの?
「ゲテモノて……豚っぽいから食べられるのかなぁって思ってたんだけど」
「食べられるか食べられないか、で言えば食べられるんでしょうけど、そもそも魔物だし、豚っぽいっていっても頭と足先の蹄くらいじゃない。しかも二足歩行だし。普通は食べないわよ。
アレを食べるって……私はちょっと考えたくないわよ?」
むぅ、そういわれると確かにゲテモノだなぁ。
豚っぽい頭と蹄がなかったら、他の部分はちょっと太った人間みたいなものだし。
…………でもそう言われると逆にちょっと食べてみたくなってくる。
癖はあるかもしれないけど、もしかしたら美味しいかもしれないし。
「ナツキ、もしかして変なこと考えてない?」
表情に出ちゃってたのか、ルティが何か察して聞いてきた。
「ソンナコトナイヨー?」
「絶対噓よね。目がすっごい泳いでるもの」
ソンナコトナイノニナー。
「はぁぁぁぁぁ…………」
「そんなため息つかないでよ……ルティも納得してくれたじゃない」
僕たちが今いるのは、ザンブルからちょっと行った大森林の麓。
オークを食べてみたくなってしまった僕は、渋るルティを色々な手段で説得し、なんとかオークを狩る同意を得た。
そして善は急げと、翌日に決行。でも休みが一日しかないから、ザンブルまでテレポートして、そこから僕がルティをおんぶして全力ダッシュ。案外行けるもんだね。
「だって、あんな焦らし方されたら頷くしかないじゃない、バカ」
ちょっと顔を赤らめながら、モジモジしてそんなこと言うのは可愛すぎます、ルティさん。
まぁ、いつもは僕がやられてるからたまには、ね?
と、そんなこんなでイチャイチャしながらオークを探すこと数十分。街から十分離れたので、飛びながら探したせいかそんなにかからず見つかった。
運が悪いと見つからないこともあるからホッとしたよ。
そしてサクッと頭を刎ねて血抜き。
うーん、頭のない人型が逆さに木に吊るされてるのは……こう、何とも言えない気持ちになる。
「本当に食べる気なのね……」
「うん、ゲテモノっていうけど、実際どんな味なのか気になっちゃってさ。でも確かにこうして見るとゲテモノ感すごいね」
「ゲテモノ感もそうだけれど、これ、夜に見たい光景ではないわね」
あー、確かに夜こんな光景を見たら腰抜かしそう。猟奇殺人事件現場にしか見えない。
ん? この後バラバラに解体するんだけど、もう完全に猟奇殺人のそれなのでは?
……細かいことは気にしないようにしよう。そうしよう。
とりあえずロースとバラと、モモ……はギリギリいけそうかな? 蹄ついてるからまだ見た目がマシ。
腕肉はさすがにやめとこう。ぱっと見、人とあんまりかわらないから、流石に食べると言い出した僕でもアウト判定。
ざっくり切り出したので、野営セットで簡単に焼いてみる。味付けは塩オンリー。
「さてさて、どんなお味でしょ?」
期待半分、不安半分。ちょっとドキドキしながら、えいやっとばかりに齧りつく。
もぐもぐ……む、これは……
「どう? 舌が痺れたりとかしない? 大丈夫?」
「んぐ……ふぅ、これ……普通に、というかかなり美味しいよ? 苦味とか痺れも感じないから、特に毒とかもなさそうだし」
「えぇぇぇ……本当? ちょっと信じられないんだけど……」
あ、これはかなり半信半疑ですね? 実際美味しいんだけどなぁ。
「試しに一口食べてみる? 念のため、何種類かの解毒薬と腹痛用の薬はもってきてあるし」
「変に用意がいいわねぇ。……うぅん、じゃあちょっと怖いけど一口だけ」
恐る恐るほんの一口、本当にちょびっとだけ齧ってもぐもぐと。
「……っ! え、本当に美味しい。ちょっと臭みあるけど、すごい濃厚な味だわ」
「確かにちょっと臭みはあるね。もうちょっと血抜きしっかりすればよかったかな。まぁ今回塩だけだったのもあるしね。ハーブとか香辛料使えば気にならなくなると思うよ」
臭みと言っても猪とどっこいどっこい。ちょっと強いかな?くらい。全然許容範囲だと思う。むしろ野性味を感じられるから、人によっては猪より好きかもしれない。
結局二人であーだこーだと品評しながら、切り出したお肉はもちろん、アウト判定した腕肉も焼いて食べきってしまった。見た目とか倫理観とか、食欲には勝てなかったよ。
「けぷっ、いやぁ美味しかったぁ。ちょっと無理して狩りに来たかいはあったね」
「確かに美味しかったわねぇ。色々と複雑な気持ちもあるけども……」
「細かいことは気にしない気にしない。美味しさは正義」
周りの人にもこの美味しさを伝えたいけど、多分すごい目で見られるんだろうなぁ。なんとか美味まではいかなくても、珍味みたいな感じで流通に乗らないかな……難しいかなぁ。
食後の余韻に浸っているうちに、日もとっぷりと暮れてきたのでテレポートで帰宅。テレポート様様。
さぁ明日からまたお仕事、頑張ろー。




