XX3 リア充爆ぜるべし、慈悲はない
らんらんらーん♪ らんらんらーん♪ らんらんらーんららーん♪
街中によく聞く音楽が流れ始め、冷たい空気も手伝ってか今年も嫌な時期がやってきたことを苦々しくも認めざるを得なかった。
「もうそんな時期なんだなぁ……。こっちは彼女もいないしバイト先のケーキ販売ノルマもキツいしいい時期じゃないよなぁ」
ケーキを売るのはいいけれど、なんでノルマなんてものがあるのか。
去年、売れ残ったケーキを他のバイト仲間と買い取って何とか取り繕った記憶が蘇ってくる。
甘いものは嫌いじゃないけれど、一人で何ホールも食べるのはさすがに拷問かと思えるくらいしんどかった。
「今年はちゃんと売れる量で計画してくれればいいけれど……でもあの店長じゃなぁ」
強気なのかそれとも計画性がないのか、とにかくうちの店長は無茶な数字を掲げてくる。
普段はそんな無茶を通すことはないんだけれど、時期ごとのイベントにはそういう数字を出してくる。
もしかして系列会社の圧力でもあるんだろうか……。
平の、それもバイト風情ではさすがにその辺の事情はわからない。
「とりあえず考えてもしょうがないし、家に急ぐとしますかね」
久しぶりの休日に嫌な事を思い出したと軽く溜息をつきつつ家路を急いだ。
………
……
…
「…………ツキ。ナツキ。ねぇ大丈夫?」
「……んぇ?」
ルティに揺さぶられて起きたその場所は見慣れた我が家だった。
「あー……夢だったのかぁ……」
「ちょっとうなされてたみたいだけど……悪い夢でも見たの?」
悪いといえば悪いんだろうか? まぁあのまま続きを見ていればノルマでヒィヒィ言っていたはずだから悪い夢にはなるかな。
「ん、昔のことが夢に出てきてさ。憂鬱な内容だったからうなされたのかな。……でもちょっと懐かしかったなぁ」
当時としてはただ憂鬱なだけだったはずなのに、なぜか時間が経つと美化されるのかそれなりによかったような思い出になってしまうアレだろうか?
ケーキで胸焼けした思い出も懐かしく感じるんだから人間て不思議な生き物だよね。
「……ねぇ、やっぱり戻りたいって思ったりする?」
「ないない。今の方がよっぽどいい生活送れてるし、なによりルティがいるし。だからそんな顔しないでってば」
昔の話を出したせいか、自分を置いていってしまうかも、なんて考えたのかもしれない。
少し不安気な様子だったので、頭を撫でながらきっちり否定しておく。
「そういえばこの世界では年の終わりごろにお祭りとかやったりする?」
普通に考えれば前の世界の宗教があるわけでもないし、そんなお祭りはないはずなんだけど、もしかしたら何か別にあるかもしれないと思って聞いてみた。
「? モイスにはなかったし、ここアリストでもないはずよ? 秋の収穫祭が終われば年末年始のお祝いくらいで、お祭りっていうようなものはないはずだけれど。
ああでも、ハーヴェストでは年末年始のお祝いを結構盛大にやるらしいから、お祭りと言えばお祭りなのかも。聞いた話だからはっきりとは言えないけどね」
んー、やっぱりないかぁ。ちょっと残念な気もするけれど、仕事が忙しくなるようなことはなさそうだからその辺は安心かな。
「でも突然どうしたの?」
「いや、さっき見た夢が年末にあるお祭り……って言っていいのかちょっと微妙だけど、まぁそれで仕事が大変だったからさ。こっちでも何かあるのかなって思っただけ」
「なるほど、そういうことなのね。それなら大丈夫だと思うわよ。
ほら、今日はカフェのほうだからそろそろ支度していきましょ」
「ん、りょーかい」
年末年始のお祝いの時はさすがに忙しいだろうけど、それまでは平常通りかな。
と思っていた時期が僕にもありました。
「どういうことなの……」
「私に言われても困るわよ……」
カフェに着くとリーズナーさんが嬉々として新しい衣装ならぬ仕事着を出してきた。
これがまた俗にいうミニスカサンタ服にそっくりで、まさかこの人も地球からきたんじゃあるまいかと「地球って知ってます?」なんて思わず聞いちゃったよ。
まぁ「チキュウ? えっと、変な意味じゃなければ聞いたことはないかな……」なんて言われた。
一瞬変な意味って何だろって思ったけど……思いついて、恥丘ちゃうわ! なんで朝っぱらからそんな単語知ってますかって聞かなあかんのや! なんてエセ関西弁で心の中で毒づく始末。
とりあえず、あの表情からして嘘じゃないとは思う。多分、きっと、メイビー……。
で、新衣装お披露目なんてすぐに広まるわけで……お客さんが来るわ来るわ。やっぱり忙しいじゃないか!
どこにいようと僕はこういう時期に忙しくなる運命なんだろうか。とほほ……。
お久しぶりでございます。
短いですが何とか番外は書けたので……本編はもう少々お待ちください(;´ω`)




