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47 引っ越ししてすぐ開けなかったダンボールは十年経っても開けることはない


「ルティー! こっち終わったよー!」


「じゃあこっち手伝って―!」


 僕達が何をしてるかというと、新居の引っ越し前大掃除。

 なんで大掃除かというと、家を維持するための最低限な掃除は組合でしてたみたいなんだけど、念入りな拭き掃除やなんかはしてなかったみたいで、場所によっては埃が固着してたんだよね。それだったら、まだ家具も運び込んでないし今のうちに綺麗にしちゃおうってことで、二人で雑巾とバケツをもってあちこち磨き上げることになったわけ。


 もうちょっと組合も掃除に力入れて欲しいかなぁなんて思ったけど、あんまり予算も組めるとも思えない上に、新築ってわけじゃないからこの辺はしょうがないのかな。


「ふぅ、ようやく半分てところかな。ちょっと休憩にしよっか」


「それじゃお茶でも入れるわね」


 まだテーブルも何もないので、野営セットを取り出して準備していく。

 室内でプチ野営準備……うん、こんな体験は中々できないと思う。


「それにしても、見て回ってた時はそこまで感じなかったけれど、掃除してみたら結構広いわねぇ」


「だよねぇ。どうしよう? 普段は二人で仕事なわけだし、お手伝いさんとか雇ってみる?」


「んー……。毎日全部の部屋をピカピカにしないといけないわけでもないし、とりあえずは二人でやってみない? まだまだ何が必要かもわからないし、お手伝いさん雇ってやっぱりいりませんでした、ってなったりすると悪いし」


 確かに。人にお願いするんだから、本当に必要なのがわかってからのほうがいっか。


「それに掃除だけじゃなくて、せっかくちゃんとした台所があるんだし私も料理しようと思ってるのよ。お手伝いさん雇ったらその辺も任せちゃうことになりそうじゃない?」


「なるほど、それなら二人で頑張ってみよっか。そういえば最近野営してないからルティの料理は久しぶりだね」


 そもそも料理するのは野営の時のみ、しかも基本は僕が調理担当だから、ルティの料理を食べる機会はかなり少なかったりする。

 それとルティの作る料理は、故郷特有のものなのか、僕の知らない料理ばかりだから楽しみなんだよね。


「そうだ、引っ越しして落ち着いたらさ、二人で料理作ってパーティーしようよ。みんなも呼んでさ」


「いいわね。いい機会だし、普段お世話になってる人達に楽しんでもらいましょ」


 よし、みんなを呼ぶからには念入りに掃除しなくっちゃ。





「長い間ご利用いただきありがとうございました。また機会があれば当店をご利用くださいませ」


 昨日は気合を入れすぎたせいか、日が落ちるまで掃除に没頭してしまった。

 今日は家具を搬入してもらって、そのまま引っ越しとなるので宿を利用するのは昨日が最後。少しばかり寂しさを覚えながら、鍵を返却し、お礼を言って新居へ向かった。


 新居に到着すると、すでに荷運びの人が待機していた。まだ割と早い時間なのに……待たせちゃったかな?


「おはようございます。ナツキ様でお間違いないでしょうか?」


「はい。早くからありがとうございます。今開けますからちょっと待ってくださいね」


 門と玄関の鍵を開けて、早速搬入してもらう。位置やなんかは決めてあったので特に問題もなくササっと搬入終了。経験者だったのか、荷運びの人も手際よくやってくれたので、細々したことも含めて午前中には終わってしまった。


「もうちょっとかかるかと思ってたけど、あっさり終わったね」


「早くからやってもらえたのも大きいわね」


 真新しいカップでお茶を飲みつつゆったり休憩。絨毯にテーブル、食器棚等が運び込まれたにも関わらず、ダイニングは程よい広さ。これでもお手伝いさん用のスペースに作られたのか、もう一つあるダイニングやリビングより小さめなんだけどね。二人で使うには十分な広さなので、人を招く時以外はここをよく使うことになりそう。


「広いリビングを希望したのは私だけど、二人だとこのダイニングくらいでも十分だったわね……。ちょっと持て余しそうかも」


 まぁ狭い家で四苦八苦するよりかはいいかな。結構後で物が増えたりもするしね。


「あ、ねぇ。時間も出来たことだし、お昼と夕飯二人で作ってみない?」


 色々と余裕を見て、昨日今日で丸二日休みを取ってあるし、作業が終わったので他には特に用事も予定もない。

 新しい家に慣れるためにもルティの案でゆっくり過ごしてみるのもいいかな。


「それじゃあまず食材買いに行こうか。でもさすがに帰ってきてからだと時間が微妙だろうし、お昼だけどこかで食べて作るのは夕飯だけにしようよ」


「んー、確かに今から買い出しだとお昼遅くなっちゃうわね。そうしましょっか」


 生鮮はもちろん、保存食もダメにならないうちにって、おつまみやらなんやらで消費しちゃって、食材自体のストックがないからしょうがないね。


 そういえばもう一般街区じゃないから基本は貴族街区で買い物することになるんだよね。普段魔法士団への行き帰りでしか通ってないから、大通りのお店とかしか知らない。散歩でもしたりして開拓しないといけないや。


 いや、テレポートで一般街区のほう行ってもいいんだけどね? 最近出来るだけ歩くようにしてるんだよね。ほら、少しでも歩くようにしとかないとお腹周りが……ちょっと……。そういう意味では時間かけて一般街区まで歩いたほうがいいんだろうけど、そこまですると他の都合が悪くなるし。

 ちなみにお腹周りの件は何気なくルティのお腹ぷにぷにしてたらふと気付いた。お互い顔を合わせて青ざめたのはここだけの話。


「とりあえずはいつも大通りで通り過ぎてるお店かなぁ」


「そうねぇ、さすがに新しいお店探すのは時間的に次回ね。あそこも通りすがりに見た限りでは、良い品物置いてそうだったから問題ないと思うわよ」





 そんなこんなでお昼や買い物を済ませ、帰ってから早速二人で夕飯の準備。肝心のお店の方は予想通り質はよかった。お値段がそれなりだからコスパがいいわけではないけど、品揃えも良かったし、バランスが悪いわけではないから今後も利用することになりそう。


「包丁なんて久しぶり」


「ずっと爪で調理してたものね」


 ちゃんとした台所で調理するんだし、どうせだからと自分の包丁も用意した。

 ……のはいいんだけど、包丁ってこんなに切れない上に頼りなかったっけ?


「ううん、爪に慣れ過ぎたかなぁ? なんか力加減が難しい……っとぁ!?」


 いつもと勝手が違うせいで、力を入れすぎて結構な勢いでまな板に包丁を打ち付けちゃった。


「ちょっと大丈夫? 切ったりしてない?」


「大丈夫大丈夫。ちょっとやそっとじゃ僕の肌傷つかないし」


「とは言っても切れるときは切れる……わよね? 気を付けてよ?」


 まぁ森を駆け回った時に枝で擦ったり、訓練で魔法が当たったりした時に僕の肌が丈夫で傷つかないのはわかってるんだけど、実際刃物で切り付けられたことはないからどこまで大丈夫かは未知数なんだよね……。


 うーん、いまさらだけど治癒系の魔法覚えとこうかなぁ。ルティは普通に怪我するだろうし、僕も絶対大丈夫ってわけじゃないだろうし。

 まぁ制限のある僕が使えるかはわかんないんだけど。


 この世界、怪我は魔法で治療、病気は薬でって感じで発達してるから、練習して治せるようなればそのほうがいいんだけど、そもそも日常で怪我しないから優先度がどうしても低くなっちゃう。


「ナツキ、沸いちゃってるけどいいの?」


「っとと、危ない」


 考えながら作業してたらついスープを沸かしちゃった。ポトフだから味噌汁みたいに風味が飛ぶとかはないけど、ぐらぐら煮る必要もないからね。


 味噌汁……思い出したら久しぶりに飲みたくなってきた。でも味噌って調味料があるって聞いたことがないんだよね。他の国になら似たようなのあるのかな……なんてまたも考えながら調理しちゃって、ルティに呆れられた。しょぼん。






 その後は料理の練習も問題なく、新居での生活もある程度慣れてきたのでそろそろみんなを呼ぼうという事になった。

 本当は手紙とかで招待状を出すのがいいんだろうけど、全員の家を知ってるわけじゃないし、仕方ないので一人ずつ声をかけることにした。


「昨日フィルとカイン、それとチル、リーズナーさんに声をかけたから今日は魔法士団関係の人達かな」


「魔法士団のみんなも予定開いてるといいわね」


 フィルとカイン、チルの三人は快諾してくれた。忙しいリーズナーさんも、パーティーの時間が夜ということもあって少し遅れるけれど参加できるみたい。


「団長とネラさんは声かけるの決まってるけど、他のみんなはどうしよう?」


「できるだけ呼びたいところだけれど、さすがに何十人も呼べるほど広くもないし……。それに大人数になるとチルが委縮しちゃいそうな気もするから、ケリーとジェフあたりに声かけるくらいが丁度いいかもしれないわね」


 確かに。みんな気さくとは言え、魔法士団は騎士爵をもってるわけだし、たくさん来たらチルあたりは気後れしちゃうかもしれない。やめといたほうが無難かな。


「それじゃあまず団長とネラさんに話に行こう。ケリーとジェフが任務中かは団長に聞けばいいしね」


「……ねぇ、団長自身が出張してる可能性はないの?」


「あ……。ま、まぁ多分いるでしょ!大丈夫大丈夫」


 ルティの視線が若干痛いけれどキニシナイ。


 団長の部屋の前まできてノックをすると返事があったのでホッとする。

 そういえばいるかいないかくらいは念話で確認すればよかったんじゃと気づいた。もう僕はダメかもしれない……。


「団長ちょっと話があるんだけど時間ある?」


「ナツキ君達か。丁度休憩中だから大丈夫だが、どうした?」


 中に入ると、書類仕事に一区切りついたのか、団長がネラさんと向かい合ってお茶休憩してた。


「あ、ネラさんも一緒なら丁度いいや。実は引っ越しも終わって落ち着いてきたから、お世話になってる人を呼んでパーティーでもしようと思って」


「そういうことか。私に関しては明日明後日でもなければ予定を調整して時間はつくれると思う。予定はいつなんだ?」


「一応余裕みて今日から丁度二週間後の夜なんだけれど、大丈夫?」


「二週間あれば十分調整できるな。参加させてもらおう」


「私も突発の案件でもなければ参加できますね。他には誰に声をかけるんですか?」


「本当はみんなに声かけたいとこなんだけど、カフェの人達にも声かけてるし、それに二人で暮らす分には広いけれどさすがにみんな入れるほどじゃないからね。だから後はジェフとケリーの二人だけの予定」


「ジェフとケリーか。今丁度任務で出張中だから定時連絡が来た時にでも伝えておこう」


 ありゃ、二人は出張中なのね。団長が気を利かせてくれて助かった。


「ありがとう。それじゃあ僕達もう上がるね」


「はい、お疲れさまでした。パーティー楽しみにしてますね」


これで招待は大丈夫っと。

さて、あと二週間。ルティと二人で当日に出す料理考えなくっちゃ。

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