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41 黄色い救急車を呼んでください


「ですから、そう言われても努力の結果としか言えないのですが」


「そんなわけないわ! きっと何か汚い手でも使ってお客を根こそぎ持って行ったんでしょう!」


 怒鳴り声が気になってちょっと耳を傾けてみると、どうもトリシャさんがどこかのおばさんと言い争ってるみたい。


「そうでもなければ私のお店にお客が一人も来なくなるなんて事あるわけないじゃない! 早く汚い事やってましたって白状なさいよ!」


 んん? 私のお店って事はどこか別のとこの店主とかかな?

 内容的に文句つけに来たっぽいけど、さすがにこのおばさんが言ってるような汚い事なんて、このお店がしてるとは思えないんだけど。


「私、市場調査の為に貴方のお店にもお伺いしたことがありますけれど、率直に言ってあれではお客様は来てくださいませんよ? 店内の造りはもちろん、肝心の品揃えもいまいちでしたからね?」


「そんな事言って、さも私に責任があるようにするつもりでしょ! ここが出来るまでは問題なかったんだから私のせいなわけないじゃない!」


 うわぁ、これは酷い。営業努力をしなかった事を人のせいにしてるだけじゃないの。

 僕達も王都に来てから服飾店は一通り回ったから、このおばさんのお店も行ってるはずなんだけど、これはって思えるお店なかったよ?

 店内は薄暗いところばっかりだったし、品揃えも変に偏ってたり……。これはただ単純に難癖つけに来たんだろうね。


「とにかく、営業時間ですし、他のお客様のご迷惑にもなりますのでお引き取り下さい」


 トリシャさんは落ち着いて真っ当な対応をしてる。こっちで店長になってからますます出来る女になってかっこいい。

 でもそんな態度がおばさんの癇に障ったのか余計にヒートアップしてきた。

 さすがに心配になって覗き込んでみると、熱くなりすぎたのかおばさんがトリシャさんに掴みかかってた。


「ルティ」


「了解」


 さすがにこれ以上はまずいので二人で止めに入る。

 熱くなり過ぎて、もはや何を言ってるかわからない状態のおばさんの手元を軽く叩いて、トリシャさんから引き剥がす。

 手錠とかあれば楽だったんだけど、そんな便利なものはないのでルティに氷の手枷を作ってもらい後ろ手に拘束。冷たいだろうけど、頭は熱くなってるから丁度いいかな?


「ちょっと! あんた達何すんのよ!」


 おお、拘束されてるのに勢いが収まらない。こんな状態の人を放っておいたら危なかったかもしれない。


「いたた……。すみません、助かりました。本当はこういうのも対処するのが店長の仕事なんですけど」


「いやいや、これはもう店長だからとかそういうレベルじゃないでしょ」


「そうよ。難癖だけならともかく、暴力沙汰にまでなったらもう衛兵とか私達の仕事になるわよ」


 やる気があるのはいいけれど、そこまで対処してたら店長業務は過酷すぎるし、衛兵がいる意味なくなっちゃう。


「そうよ! これは私達の問題であって、あなた達には無関係よ! なんの権限があって私を拘束してるか知らないけれど早く離しなさいよ!」


 関係はともかく、権限はあるんだよねぇ。経緯はともかく僕達一応魔法士団員だからね。


「僕達は王国直轄の魔法士団員です。言っては何ですけど、権限としては衛兵よりも上ですからね?」


「魔法士団? そんなもの知らないわよ! どうせ適当な事言ってるんでしょう!」


 おうふ……。認知度の低さがここにきて仇になるとは。今度制服で街中を警邏したりして認知度を上げるように団長に進言しよ……。


「ルティ、僕が抑えてるから衛兵呼んできてくれない?」


「わかったわ、ちょっと待っててね」


 そう言って虚空に消える。やっぱりテレポート便利そう……。色々制限ある身が恨めしい。


「せっかくのお休みなのに……本当にすみません」


「いいのいいの。知り合いを助けるのは当然でしょ」


 別に知り合いじゃなかったら助けないって訳じゃないけど、トリシャさんには普段からよくしてもらってるし、余計にね。


「知り合い? さてはあんた達グルね!? 私を嵌めようとしてるんでしょ! 観劇のお話みたいに!」


 被害妄想酷すぎぃ! これは衛兵に突き出すより、その手の医者に診てもらったほうがいいんじゃなかろうか。


 おばさんの言動に辟易しているとルティが衛兵と一緒に戻ってきた。


「おかえり。他の人も連れてテレポートできるんだ?」


「ただいま。だってそうじゃないとナツキと一緒に行動出来ないでしょ? だからテレポートのイメージに手を加えたわ」


 さらっと言ってるけど、それってすごい事なんじゃないかな……。それに昨日も今日も詠唱なんてしてないしね。教えた団長涙目じゃない?


「いやぁ、貴重な体験をさせてもらいました。大体のお話はルティ様からお聞きしていますが、被害者の方からもお聞きさせて頂きますね」


「了解です。こちらが被害者のトリシャさんです」


「プティベール王都支店長のトリシャです。ここではなんですから奥で……あ、店員に業務の引継ぎをしてきますので少々お待ちいただけますか?」


 そう言ったが早いか、店員にテキパキと指示を飛ばしていく。

 そしてお店を見渡せる位置から大声で話し始める。


「ご来店中の皆様! 本日は誠にご迷惑をおかけいたしました! お詫びと致しまして、ただいまご来店中のお客様に限り全商品二割引とさせて頂きます!」


 太っ腹! あちこちからお客さん達の嬉しそうな声やら悲鳴やらが聞こえてくる。これでお客さんの心証はプラスになったんじゃないかな。ピンチをチャンスに変えるなんて、さすが。

 こういう気配りやサービスが出来るから繁盛するって、このおばさんもわかればいいんだけど……さっきまでの言動を考えるとちょっと無理かなぁ。


 衛兵の聞き取りが終わり、おばさんを引き渡した後は僕達もちゃっかり割引価格でコートを買ったのだった。



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