表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/61

34 飛べるってさりげなくチート


 訓練したり、カフェで働いたりしてたら出発の日になった。

 朝早くなのに門までカインとフィルまで見送りに来てくれた。チルも来てくれるはずだったんだけど、昨日お店が大変だったので寝坊してるっぽい。昨日も大盛況だったからなぁ……。


「おう、気を付けて行って来いよ」

「お店の方は私達が頑張りますから気にしないでくださいです」


 カインも忙しいだろうに、来てくれて嬉しい。それとフィルは頼りになるね。僕も戻ったら頑張らないと。


「気を付けてね? 何度も言ってるけど怪我とか駄目だからね?」


「今生の別れじゃないんだからそんな顔しないで。すぐに帰ってくるから」


 安心させる為に軽くキスをしてぎゅっと抱きしめる。

 僕も今のうちにルティ分溜めとかないとね。


「それじゃそろそろ出発しましょうか」


 今日から暫くネラさんと二人きりだ。でも実は荷物は少ない。ルティがいないから大荷物になるかと思ってたんだけど、ネラさんがマジックポーチなるものを持っていた。中が魔法で拡張されてる鞄らしくて結構物が入る。テントとか押し込むようにしたらにゅるにゅる入っていった。あれか、青狸のポケットか。

 さすがに僕も欲しくなって思わず羨ましそうに見ていたら、なんと団の支給品らしい。量産が中々できないからまだ僕達には渡されてないだけで、そのうち渡されるとか。今から楽しみ。


「それじゃみんな行ってくるねー!」


 飛行許可は出てるので、門を出てからすぐに翼を大きくして飛び始める。


「ネラさん、僕の腕掴むだけじゃなくて、尻尾もお腹辺りに巻きつけといてね? 多分落っこちると死んじゃうから。《鳥より速く、矢より速く、我が身は空を切り裂く弾丸なり》」


「わかりまし……え? 詠唱? 何をおぉぉぉぉぉぉ!?」


 吐息以外使えないと思ってたけど、飛ぶのに魔力を使ってるんだからその延長で詠唱重ねられるんじゃない? と思ったらいけた。

 え? この間出来そうだからって安易にやるなって叱られたばかりだって? アーアーキコエナイ。


 全力の魔力循環の合わせ技もあってぐんぐん加速していく。凄い勢いで景色が流れていく。

 これなら街までそんなにかからないはず!






「ぜぃ……ぜぃ……」


 十分も飛んだら息切れした。そりゃそうだ、全力疾走するマラソン選手とかいないもんね。急ぐあまりその辺全然考えてなかったよ。


「あれだけの速度出したんですから、当然ですよ。でもおかげで大分短縮できましたね。ええと、この位置なら……徒歩の場合に比べて五日くらい短縮できてますね」


 周りの風景から現在位置を考えて、そこそこ短縮できたみたい。十分飛んだだけにしては上出来かな? でもこの先は体力的にちょっと速度落とさないと駄目だろうなぁ。


 小一時間休憩を取った後、長く飛べるように割とゆっくり飛んでいく。とは言っても高速の車位の速度は出てるんだけどね。


『あ、そうだ。ネラさんも今のうちに念話使えるようになっておかない?調査とかにも便利そうだし』


「私も使えるんですかね? 使えれば確かに便利だと思うんですけど。イメージとしてはどんな感じで?」


 竜化の一件以来念話の練習を重ねて、集団相手、個人相手それぞれできるようになった。飛行に続き、僕の貴重な吐息以外の魔法。でも飛行は魔法の範疇なんだろうか? まぁ細かいことは良いよね。


 ただこれだけだと僕から一方的に話すだけになっちゃうから、他の人にも覚えてもらいたいんだよね。個人相手の場合、端から見ると独り言になっちゃうし。

 ちなみにルティは習得済み。街中くらいなら念話は届くから、もし何かあっても安心。まぁこの距離だとさすがに届かないんだけどね。しょぼん。


『詠唱したらメリットあんまりないから、イメージだけで行使してね。で、肝心のイメージだけど、僕の場合、集団相手は声の波紋が広がっていくイメージで、個人相手は自分と相手を糸で繋いで、その糸に声を通す感じかな』


 例えるなら水の表面を波立たせるのと、糸電話のような。糸電話この世界にもあるのかな……あるなら説明楽なんだけど。


「簡単に言いますね……。でも団員全員が覚えれば連携も大幅に取りやすくなりますし、難しくても習得する価値は十分ありますね」


 とりあえず私が使えるようにならないとどうしようもないですね、と早速僕に抱かれたまま練習を開始する。

 でも普段イメージだけで魔法を使ってた僕達と違って、詠唱を前提として魔法を使っていたネラさんにとっては中々勝手が掴めないようだった。


 ちょこちょこ僕の休憩を入れながら平原を飛んでいく。この国は大半が平原だから、休むところがたくさんあるのは楽でいい。ちょっとした草くらいなら刈り取っちゃえばいいし。森の上を飛んでるときはかなり場所選ばなきゃいけなかったからなぁ。


 そんな何度目かの休憩の時に、ネラさんがじっと僕を見つめてきた。


『ん、こうですかね……。聞こえますか?』


 おお、なんだかんだでもう使えるように。


『うん、聞こえてるよ。案外すぐできるようになったじゃない』


『半分隊長としての意地ですけどね。調査の前に使えるようになって一安心です。

そろそろ街も見えてくる頃合いでしょうし、少しでも念話に慣れるように反復練習しますね』


 念話の反復練習イコール雑談。ただ飛んでいても風切り音で邪魔されることがないから快適な雑談だ。

 練習とばかりに団長の愚痴を言い合っていると街が見えてきた。時間はお昼を大分回ったくらい。結局一泊もしないで街に着いちゃったな。徒歩二十日とはいったい……。





ほら油断したー!(何

本作品は自転車操業でお送りしております。


で、今後は基本水曜と土曜の更新で行こうと思っております。

(私事などで余裕がない場合は土曜のみで。その際は活動報告で告知します)


また次週宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ