33 この人達もう結婚しちゃえばいいんじゃないかな
制服破れちゃったから私服だけどしょうがないね。とりあえずの準備が出来たので団長の部屋まで移動する。
「ようやく来たか。随分時間がかかったな」
「ちょっとトラブルがあったから。あ、制服の再支給お願いしていい?」
「かまわんが……ん? ああ、そうかさっきの状況からすると破けたな?」
変に察しがいい。でもデリカシーないね、普通わかってても言わないと思うんだけど。
ネラさんが溜息ついてるってことは前からそうなんだろうなぁ。
「さて、それじゃ説明をしてもらおうか」
「説明の前に、そのー、団長ごめんね」
「何がだね?」
「いや、ちょっと今まで冷たくしすぎたかなって」
「……デレ期か?」
「違うから! 色々悪かったと思ったから言っただけ!」
これじゃ本当にツンデレじゃないか。団長ニヤニヤしてるし。まったくもう!
「で、さっきの説明なんだけど」
説明と言っても僕がちょっとはっちゃけただけなんだよね。騎士団が過剰反応しちゃっただけで。
その辺をサラっと説明すると、団長が軽く呆れていた。
「出来そうだからって軽く出来てしまうのがまた凄いが、そういうのは相談してからやってくれ。とりあえず被害も植木くらいで済んだからお咎めは無しとしておくが、今後は気を付けるように」
そう言ってお茶を一気に口にした。
次の言葉を待っているとネラさんがジトーっと団長を見ていることに気付いた。団長もそれに気づいたのか眉を顰める。けどちょっと考え込んだ後に愕然としたような顔に。なんだろう?
「ま、まさか、これも癖だというのかね!?」
「やっぱり気づいてなかったんですね。これから相手が嫌がるであろう話題を出すときはそういう飲み方するんですよ」
へー、ネラさんそんな癖把握してるんだ。これも、なんて言ってるから他にも知ってるのかな。でもいくら部下だからって、普通は気づかないと思うんだけど? うーん……まさか、ねぇ?
「それで内容としては以前ナツキさんとお話合いしたいと言っていた件ですか?」
「それもあるんだが、もう一つあってな。……どちらから話そうか?」
えー、他にもあるの? 聞かないって選択肢はないだろうしどうしようかな。
「んー、じゃあ団長が前に言ってたお話合いのほうから」
「わかった。まぁ話し合いといっても、こっちの言い訳というか話を聞いて欲しいだけなんだが」
団長曰く、僕達を魔法士団に誘ったのは、もし僕達が他国に行った時に敵対されたら怖いというのと……
団のアイドルが欲しかった……だと……。
「呆れた……。他国の件はわかったけど、アイドルって何よそれ。そんな事の為に無茶な契約押し通したわけ?」
「いや、大半の理由は前半の部分なんだ。本当だからな? だからそんな目で見ないでくれ……」
本当かなぁ? それに、そんな事言われても自然と視線はじっとりとしちゃうよねぇ。
まぁ懸想されてるわけじゃないなら、とりあえず安心なんだけどさ。
口を湿らすようにお茶を飲んでるけどこれも何かの癖なのかな?
チラっとネラさんを見ると、ジト目だけじゃなくて眉まで顰めてるからそうなんだろうね。
「それでもう一つの話っていうのは何かしら?」
「それなんだが、賊が北西の山間部にアジトを作ったという噂があってな。噂だけならともかく、実際に賊がちらほらと出てきているんだ。そこでネラ君とナツキ君の二人で調査をお願いしたい」
なんですと? ルティは? 三人じゃダメなのかな?
「なんで私が入ってないの? あと騎士団に任せられないの?」
「騎士団は集団行動に特化してるからな。少人数での行動に向いてないんだ。その点魔法士団は少人数での行動に向いている。魔法で機動性も高いしな。だから偵察、調査はもっぱら魔法士団の仕事になってる。
あと、ルティ君を数に入れてないのは隠密性を考えて出来るだけ人数を絞りたいからだ。そこで経験豊富なネラ君と、いざという時の近接に強いナツキ君を選定させてもらった」
「理由はわかったけど、その噂の場所っていうのはどのくらいかかる場所なのさ?」
あんまり遠いと嫌だな。ルティとそんな長い間離れたことないから、どうしても不安になる。
「歩いてだと最寄りの街まで二十日くらいか。その街から噂の場所までは約二日。
ただ今回は街周辺の飛行許可を出しておくから飛んでいけばもっと短くなるな。その場合、ネラ君は飛べないからナツキ君が抱えることになるが」
うげ、精々、前のスライム遠征くらいかと思ってたらそれどころじゃなかった。ネラさん抱えて全力で飛んでいくしかないかなぁ。今なら大分速いだろうし、相当短縮は出来そう。
「……ねぇ、他の人にお願いは出来ないの? もしくはやっぱり私も一緒に行くとか。
私もいれば戦力的には十分だと思うし。調査じゃなくて別に殲滅してしまっても構わないのでしょ?」
ルティさんフラグらめぇぇぇ!? 僕任務から戻ったらルティと結婚するんだくらいヤバイ。
「調査だと言っただろう? 賊の規模も何もわかってないんだ。団長として殲滅戦だけは許可できん。リスクが高すぎる。
それに他の者も別の任務があったりして都合がつかないんだ。聞き分けてくれないか?」
「でも……」
「ルティさん、私が一緒なので納得してもらえませんか? これでも隊長なんです。団長の無茶ぶりも何度もありましたけど、なんとかしてきましたし」
ネラさんもルティを説得するけどやっぱり不安は拭えないみたい。
ここは僕が直接言わないと納得しないかな?
「大丈夫だって。ささっと行って、ささっと終わらせて帰ってくるから。
だからルティはここで待ってて。それに戻ってきたらなんでも一つ言うこと聞いてあげるから」
「…………わかったわ。でも無茶はしないでよね? 怪我して帰ってきたりしたら駄目よ? 絶対よ?」
「わかってるって。心配性だなぁ。ネラさんもいるんだし何事もなく帰ってこられるってば」
ルティが抱き着いてくる。よっぽど心配なんだろうね。よしよし、落ち着かせるために頭を撫でてあげる。
でも、なんとか納得はしてくれたけど、何でも聞いてあげるは言い過ぎたかな……。
ルティの為だから何でもしてあげるつもりではあるけどね。
「ストレートティーなのに甘ったるくてしょうがないんだが……」
あ、ごめん団長忘れてた。
お読み頂き有難うございます。
次回は土曜の更新予定です。
そろそろペースが掴めそうです。
まぁ色々油断は出来ないんですがw




