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27 ダブルワーク


 ネラさんは採寸を済ませたらそのまま帰っていった。お茶くらい出すからゆっくりしていけばいいのに……。

 ちなみに授爵と説明(顔合わせ)の日時は次の休みの日だった。これでみんなに負担かけなくて済むね。

 あれ、でもこれって僕達が休めないって事なんじゃ。


「ルティとの時間が取れなくなるじゃん」

「ナツキとの時間が取れなくなるわ」


「二人してハモってもぉ、どうにもできないですよぉ?」


 貴重なデート時間が!仕事掛け持ちなんだからこういう事もあるんだった、うっかりしてた、ちょっと後悔。


「仕事終わりの夜のデートでも増やす?」


「そうねぇ、夜しか時間ないものねぇ」


 でも夜は開いているお店も少ないからなぁ。飲み屋とかばっかりだし。

 あー、お酒買ってきて部屋でゆっくり二人で飲むのもいいかも。それともやっぱり雰囲気のいいお店のほうがいいかな……。後でルティと相談しよう。




「ナツキちゃんどうした?なんかいつもより表情が暗いぞ?」


 常連のお爺さんの注文を取っていた時ふいにそんなことを言われた。どうやら休みが取れない憂鬱な気分が顔に出てたらしい。


「あ、うん、ルティと一緒に魔法士団てとこに入ることになったんだけど、そっちの仕事の関係で今度のお休み潰れちゃってさ」


「なるほど。ところで魔法士団てのはなんだい?」


 このお爺さん、確か王都生まれの王都育ちのはずなんだけど知らないらしい。

 この認知度の低さはちょっとやばいんじゃないかな。そしてそんな魔法士団を少しとはいえ知っていたリーズナーさんとは一体……。


「ん、簡単に言えば、剣や槍のかわりに魔法を使う騎士団ってとこかな?」


「え、じゃあそれって騎士団と同じ格ってことだろう?凄いじゃないか。おめでとう」


 あんまり興味ないから知らなかったけど、一般の人にとって騎士団っていうのは結構威厳のあるものみたい。


「ありがと。だから今後お店にいないことがあると思うけど、その時は魔法士団に行ってるってことだから」


「む、それは残念だな……。他の奴にも教えとかないと」


「他の常連さんで知り合いでもいるの?」


 常連さんはみんなバラバラで来るから横の繋がりなんてないと思ってたけど。


「あれ、知らなかったかい?ここの従業員のみんな、それぞれファンクラブ出来てるんだよ。だからその会員にね」


 何それ聞いてない。あ、まさか昨日クレーム出るどころか、凄く優しい眼差し向けてくれてたのもみんなそうだから?


「そんなのあったなんて知らなかったよ。誰が会長なの?」


「本当に知らないのかい。会長はリーズナーさんだよ?」


 思わずカウンターのほうを振り返ってしまう。一瞬リーズナーさんと目が合うけど、何かを察したのかすぐさま逸らされた。エスパーか。


「全くあの人は……。ところでお爺さんは誰のファンなの?」


 全くとか言っておきながら気になってしまう。そこはほら、やっぱり一人の女の子として、ね?


「儂はナツキちゃん一筋だよ。中にはナツキちゃんからルティちゃんに乗り換えた輩もいるがね」


 そんな事言われるとつい嬉しくなってしまう。それにルティ派になった人もしょうがないね。ルティは可愛いからねっ!


「ふふ、ありがとうお爺さん。それじゃ仕事に戻るね」


 サービスとばかりにウインクして手を振る。

 ファッ!?お店のあちこちから殺気が!?

 これは下手な行動取ると危ない事になりそう。気を付けとこ。


「ナツキ?後でちょっと話があるから」


「アッハイ」


 ルティさん笑顔が怖いです。うん、本当に気を付けよう。






「はぁ、本当ならお休みだったのになぁ」


 あっという間に約束の日になった。いつもならデートするところなのに…ぐぬぬ。


「いつまでも言ってないの。……ほら」


 しょうがないわね、といった感じで手を差し出してくれる。遠慮なく抱き着かせてもらおう。


「一日中こうしていたいなぁ」


「無茶言わないの。私だって我慢してるんだからね」


 ううん、仕方ないか。それにしても最近ルティと立場が逆転してるような。ん、細かいことはいいか、すりすり。


 待ち合わせ場所の貴族街出入門にはすでにネラさんが待っていた。でもなんか複雑な顔してる。


「お待たせしました。どうかしました?」


「あ、いえ……この後の男性団員の事を考えたらちょっと不憫になりまして」


 べったり(・・・・)くっついた僕達を見て何かに気付いたらしい。でも不憫てなんだろう?


「とりあえず向かいましょうか。まず本部で着替えてもらいますので」


「着替えるって例の制服ですか?でもネラさん着てないみたいですけど?」


「急ぎでナツキさん達の分だけ作ってもらいましたから、まだ私達の分はないんですよ」


 おお、なんだか悪いような。移動しながら聞いてみると、授爵式の際にわざわざ式典用のドレスなどを用意してもらうより、制服を着てもらったほうが僕達も楽だろうし、お披露目にもなるので急がせたのだそうな。意外に気が利くなぁあの団長。


 お城に着いてすぐに本部の一室で着替えることに。


「あれ、結構可愛い?」


「本当だわ。それに予想よりもしっかりしてる」


 突然制服なんて話になったもんだから、正直あんまり期待はしてなかったんだけど、これが意外にいい感じ。

 全体的に黒を基調とした制服で、下はキュロットスカートだけど、上はジャケットとカッターシャツにネクタイのオーソドックスなタイプ。

 あと帽子もついてた。ちっちゃくてヘアピンで留めるタイプのやつ。ちょこんと載せる感じで可愛い。でもブーツが普通のタイプになっちゃったから制服の時は足の爪使えないなぁ。まぁ最近使ってないんだけども。


 ううん、出来がいいからこれ仕事で汚したりするの躊躇いそうなんですけど。


 とりあえずこれで授爵式の準備はできた。緊張するなぁ。






お読み頂き有難うございます。

投稿開始してから丸一か月。累計PVも33000を超え、

ブクマ評価も着実に増えております。

ぐだぐだなお話ですが、これからも宜しくお願い致します。

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