25.5 魔法士団の事情
「ふう、危なかった。あ、ネラ君お茶入れてくれないかね?」
「ご自分でお入れになってください」
素気無く断られた。上司だと言うのに全く敬われていない。
しかし、相当無茶な契約をねじ込んだせいか、かなり時間がかかってしまった。
通常の契約を結んですんなり進むと思っていたから少々予定外だ。
「団長、どうしてあんな無茶な条件で二人を採用したのですか?」
「……ネラ君は現場の状況を見ていないんだったな。
私は報告を受けてから確認するために現場に向かったんだが、いや、あれは酷かった。普通なら複数人で術式魔法を行って付くような跡が、いくつもあってね。
最初は報告が間違っているのかと思って、駆除に随伴した騎士を問い詰めたんだが、間違いなく竜人と魔人の少女がそれぞれつけた跡だと言うんだ。
それを聞いたとき、そんな強大な魔法を使える者が、もし他国へ流れたらと想像したら恐ろしくなってね。
大分長い間戦争など起きてはいないが、この先何があるかなんてわからない。だったら今のうちに我が国で囲い込んでしまえば将来の不安はなくなる、そう考えたのだよ。」
自分で入れたお茶を含み、口を潤す。
「なるほど。条件は二の次だったわけですね……」
「うむ。それに必要であれば呼び出して作戦に従事させたりすることは可能だ。単純に考えれば不利な契約だが、今言った事も含めると問題ない範囲だろう」
「それで」
「ん?」
「何を隠していらっしゃるんですか?」
思わず一瞬ピクッと動いた。しまった、動揺が出てしまったか。
「何の事だね?」
務めて冷静に返す。
「何年あなたの部下をやってると思ってるんですか。話し終わった後、口を湿らすようにお茶を飲むときは大体嘘か裏の理由があるときですからね」
やだ、この部下怖い。本人も気づいてないような癖を覚えてるとか、まさか監視されてるんじゃないのか。
「な、なにを言っているのかわからないな」
いかん、どもってるじゃないか。これでは何かあると言っているようなものだ。
「……ナツキさんもルティモさんも可愛かったですねぇ?」
ビクッ!
うっかり持っているお茶をこぼしてしまった。
「そそそそそれがどどどうしたというのだね?」
ネラ君の視線が突き刺さる。くっ、もう取り繕うのは無理か。
「だって…だってしょうがないじゃないか!あんな可愛い子見たら部下に欲しくなって当然だろう!ちょっとは我が団にも癒しが欲しいんだよ!」
「ほー……、私達は癒しにならないと……」
あ、まずい、女性団員敵に回したか?
「あ、いや、誤解しないで欲しいんだが、ネラ君達はほら、可愛い系じゃなくて綺麗系だからちょっと事情が違うというか、ね?」
「そうそう、団長最近訓練の方が御無沙汰ですよね?たまには私と手合わせ致しませんか?」
「待ってくれ!最近事務仕事続きで体が鈍ってて、ネラ君達の訓練にはついていけぐぇ!」
爽やかな笑顔を浮かべながら、私の襟首を掴み引きずり始めた。
明日の朝日が拝める事を祈ろう……。
いつもお読み頂き有難うございます。
最近気づいたんですけど、
大体三日で一話書けてるんですね。そして投稿間隔は二日。
/(^o^)\




