21 新装
「「「いらっしゃいませ(ぇ)」」」
修理を終えて再開してから数日。ちゃっかりリニューアルと称して営業している。
観葉植物の代わりにぬいぐるみとかを置いてファンシーにしてるけど、リニューアルと呼べるのか……。
お店の雰囲気がファンシーになったので、男性客が減って楽になるかなぁと思っていたら全然減らなかった。むしろ増えてる?何がそう彼らを駆り立てるのか……。いや、確かに制服可愛いけどさ。
カインとフィルはザンブルに帰らず、暫く王都で活動することにしたらしい。今日はお店に来てくれている。
「はい、コーヒーお待ち遠様」
「ありがとさん。それにしても凄い制服だな。まぁ悪くはないぃいててて!」
「顔が緩んでるのです」
また耳引っ張られてるよ。後、カインが僕を見てそういう反応するのは色々複雑なんだけど。
「はぁ……。引っ張られすぎて、そのうち森人みたいになっちゃうんじゃないの?」
「なるかもなぁ」
割と真顔で答えられた。反省してないのか……。こういうとこで素直になるんじゃなくて、フィルの前で素直になってあげればいいのに。
そんなやり取りをしてたら、すいませーんと他のお客さんに呼ばれる。
「はーい、少々お待ちくださーい。……それじゃまた後でね」
「おう」
「お仕事頑張ってくださいです」
そういえば暫く王都で活動するって言ってたけど、狩猟系の仕事ほとんどないけどどうするんだろう?まぁまた後で聞けばいっか。
チルが来てくれたおかげで大分楽になった。ちょくちょく休憩も入れられるし、リーズナーさんの調理補助にも入れる。一人増えるだけでかなり違う。
お店が終わって着替えている時にそんな会話になった。
「チルが来てくれて大助かりだね」
「本当だわ。前まで満席になるとてんてこ舞いだったものね」
「そうですかぁ?役に立ってるなら嬉しいですぅ」
褒められて嬉しいのか、ニコニコしながら私服に着替えていく。私服もフリルが沢山ついた可愛らしいものだ。
「私服も可愛いね。どこで買ってるの?」
「これですかぁ?これは最近オープンした服屋さんですよぉ。デザインもそうですけどぉ、品揃えが凄くいいんですぅ」
「へぇ、じゃあさ今度の休みの日にでも案内してよ。僕達も秋物買い足したいし、冬物も今のうちから見ておきたいし」
「いいですよぉ。どこで待ち合わせしますぅ?」
「このお店の前でいいんじゃないかしら?その方がお互い楽でしょうし」
「わかりましたぁ。それじゃぁ今度のお休みの日にぃ」
首尾よく約束を取り付けられた。
王都の新規オープンのお店かぁ。正直王都の既存のお店はいまいちだったので、期待してしまう。今着ている秋物も結構妥協してるしね。
宿に戻り、夕食を取るために食堂に。夕食時にはちょっと遅い時間なのにカイン達がいた。表情がちょっと渋い。
「あれ?二人とも遅いね。何かあったの?」
「いや、あの後組合に行ったんだけどな?依頼がな……」
あ、これは僕達と同じパターンかな。どうせだし、同じテーブルについて食べながら話を聞こう。
「狩猟系がほとんどなかったんでしょ?」
「そうなんだよ。まさかここまでないとは思ってなくてなぁ。あれこれ見たがどうにもな」
「諦めて日雇い系で探すしかないよ。だから僕達もカフェで働いてるんだし」
「まじかー。荷物運びでもやるかなぁ」
「よかったら聞かせて欲しいんですけど、ナツキさん達のカフェって報酬どのくらいなのです?」
特に問題もないだろうから素直に教える。あれ、目をまん丸くしてこっち見てる。
「今日見た依頼のどれよりも遥かに高いですよ?まだ雇ってくれるなら私も行きたいです」
パラパラっとめくって報酬がいいからって決めたけど、まさか他が軒並み低いとは知らなかった。
「フィルがいいならオーナーに紹介してみるけど、制服結構際どいの着せられたりするよ?今はロリィタ系で露出ないけど」
「その時はその時です。まさか水着はないでしょうし、大丈夫ですよ」
いやぁわかんないけどねぇ……。ハッ!フラグ建てたくないからここまで!やめやめ!
「じゃあ明日にでも会ってみる?」
「はい、お願いしますです」
まだ人手は欲しいところだから多分雇ってもらえるかな。後はカインがどうするかかな。
「カインはどうするの?オーナーに会ってみる?」
「いや、俺は接客って柄じゃないしいいわ。さっき言ったように荷運びかなんかで探すよ」
「客としてフィル目当てでお店くるんですね、わかります」
「……」
うわ、スルーだよ。図星だからってよくないよね。目もちょっと泳いでるし。
とりあえずカインは何とかするって言ってるし、フィルが採用されれば問題はないかな?
翌日フィルを連れてお店まで。リーズナーさんと話をするので気持ち早めに宿を出た。
「「おはようございまーす」」
「お、おはようございますです」
「はい、おはよう。今日は早めだね。ところで、そちらのお嬢さんは?」
「私、フィルと申しますです。ナツキちゃんに話を聞きまして、ここで働かせてもらえないかなと」
「リーズナーさんどう?料理とかもできるから、調理補助もできるよ?」
「ふむ……」
あれ?フィルをじーっとみて黙っちゃった。もしかして三人でいっぱいいっぱいで雇えないのかな……。
「……よし、制服も似合いそうだし採用!明日からでも大丈夫かな?」
おお、もう……。この人それしかないのか。このお店の売りなのはわかるんだけどさ、もうちょっとこう…なんというか……無理か。
この間も思ったけど、一日でサイズぴったりの制服を用意できるのも謎すぎる。でも、聞いたりしたら変なの着させられそうだから聞かない。世の中知らないほうがいいこともあるよね。
翌日フィルに手渡された制服は僕達と同じデザインで水色だった。フィルの明るい茶髪とよく合っている。本当そういう目だけは確かだよね、このオーナー。
気付いたらブクマが100件を超えてましたありがとうございます。
そういえば誤字とか脱字なんかはないですかね?
気を付けてはいますけど自分だと案外気付かないもんなので……




