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18 遠足


「ふわー、これは凄いね」


 翌日集合場所まで来てみると、参加者が百人規模で集まっていた。よくこれだけ集まったと思う。


「なぁに呆けてやがる。そろそろ出発になんぞ」


「おはようです。参加できたのですね、おめでとうです」


 カインとフィルが話しかけてくる。これだけの人数の中、知り合いがいるっていうのは安心感が違う。こんな大規模依頼は初めてなので、ちょっとほっとする。


「ところで何かアクセサリーはプレゼントしてもらった?」


 フィルにコソっと聞いてみたら、微笑みながら指を口に当てた。その手には指輪が輝いている。


「「おめでとう」」


「ありがとなのです」


 素直になれないカインには聞こえないようにコソコソとお祝いする。その時のフィルの嬉しそうな表情につられて、僕達も微笑んでしまう。


「もうちょっと素直ならいいのにねぇ」


「ふふ、あれでも大分素直になったのですよ?」


「あれで?信じられないわね…。あ、なんか動くみたい」


 騎士っぽい人が馬に乗って号令をかけてる。ぽいっていうか騎士でいいのか。あれ?騎士の人も行くの?


「ねぇ、騎士団動かせば僕達いらないんじゃないの?」


「騎士団を動かすと王都の守りがなくなるから、動かせないのですよ。今一緒にいる数名の騎士は駆除確認の立会人です。

それにこうして依頼としてお金を出すことによって、経済の活性化も兼ねてるですよ」


 おー、王様もよく考えてるんだなぁ。ともあれ出発だ。気張っていこう。





 気張る必要ありませんでした。

 出発と言っても安全な街道。危険なんてまずないわけで、さらに大人数が歩いてるから、なんていうか観光ツアー?遠足?そんな感じ。


「緊張感ないなぁ」


 ルティの腕に抱き着いてる僕が言えた義理じゃないけど。


「警戒して進むよりいいじゃない。とは言っても、さすがにのんびり過ぎて眠気が来るわね…」


「これが五日も続くのかぁ」


 普段は街から遠ざかったら飛んでしまうところを、今回は全て歩き。退屈しそう。

 あ、でもルティと散歩してるって考えればいいのか。それならいくらでも歩けそう。


「そういやお前達荷物持ってないな。なんか収納系の魔法でも使えるのか?」


 身に着けてるのは僕のウエストポーチくらい。普段も肩掛けポーチくらいで、基本はルティの影倉庫に全部入れてある。当のルティなんかはポーチも要らないので完全に手ぶらだ。


「私が影に空間作れるからそこに全部入れてるのよ。カイン達はそういうのないの?」


「あったらこんな荷物背負ってないだろ。俺もフィルも収納系は使えなくてな」


 背中の結構重そうなリュックを見せながら言う。


「それなら依頼中は私が持っておく?そのくらいなら余裕はあるわよ」


「お、じゃあ頼んでいいか?やっぱ重くてなぁ」


「夜になったらまた渡すわね」


 下ろした荷物を影に入れていく。慣れちゃって忘れてたけど、この魔法ないと色々不便だよね。






 先導していた騎士さん達が止まり号令をかけてくる。


「今日はこの辺で野営とする!各自明日に備えて休んでくれ!」


 夕焼けが綺麗な頃合いに野営となった。みんな慣れているのか、手早くテントを張っていく。

 僕達も準備してしまおうと、荷物を取り出していく。テントはルティ、夕飯は僕が基本の分担だ。


 早速冷凍しておいたお肉を、火と風の混合吐息で解凍していく。続いて軽く息を吹き、空中に水球を作り出してその中で野菜をじゃぶじゃぶ洗う。

 うん、やっぱりこの方が絵面がいい。今まではマーライオンのごとく水を…思い出すのはやめよう。直接口から出てるわけじゃないから汚いわけじゃないんだけど、ちょっとね。


 そして予め買っておいたパンに焼いた肉と野菜、チーズを挟んでサンドイッチの完成。マヨネーズが欲しいところだけど売ってないんだよね。今度作ってみようかな。


「ルティできたよー」


「ありがとう。それじゃ食べちゃいましょうか」


 そうして二人で座って食べようとしていた時、カインが干し肉を齧りながら、じーっとこっちを見ていることに気付いた。


「………何?」


「いや、うまそうだなぁと…」


 言いながら視線はサンドイッチから離れない。あ、隣でフィルが溜息ついてる。食べたいならそう言えばいいのに。こういう所でも素直じゃないなぁ。


「しょうがないなぁ、ちょっとだけだからね」


「サンキュ!さすがに生鮮系まで持って歩けないからな。ありがたい」


「ありがとです。なんか催促しちゃったみたいでごめんです」


 別にフィルは悪くないんだけどね。

 そのまま流れで一緒に雑談しながら夕飯を食べることになった。





 そんなこんなで同じような日を繰り返し目的地近くまで来た。結局カインには毎日夕飯を提供してた。お詫びに、とフィルが手伝ってくれたからよかったけど。


「カインて結構食い意地張ってるよね」


「いや、だってなぁ…あんないい匂いしてきたらそりゃ見ちまうだろうよ」


 まぁ確かに味気ない保存食齧ってるときに、隣からお肉の焼ける匂いがしたらそっち向いちゃうか。


「この先の開けたところをベースとする!一時間程の準備、休憩を挟んだら駆除開始となる!怪我の無いよう頑張ってくれ!」


 カインと話してたら号令がかかった。さーて、久しぶりに体を動かしますか!



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