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02 これから


「うう…ん…」


 ひんやりとした土の冷たさで目を覚ました。どうやら朝のようだ。

 周りは昨日の記憶と変わらず鬱蒼とした森。


「…夢じゃなかったんだなぁ」


 爽やかな空気を吸い少し落ち着いたことで、改めて僕の体を確認しなおす余裕ができた。

 白く滑らかな肌、控えめな胸、息子の失踪した股間、そして銀色の鱗の生えた尻尾。ここまでは昨日の時点で見た通りだ。

 まだ他にも何か変わってしまった部分はあるだろうかと、ぺたぺたとあちこちを触ってみる。


 (背中のこれは…ちょっと小さいけど翼かな?あとなんか角っぽいのもあるなぁ)


 翼らしきものは俗にいう竜の翼をそのまま小さくした感じで、角らしきものは前から後ろにかけて短くはあるがまっすぐ左右二本ずつ生えている。

 鏡があるわけではないので正確にはわからないが、手触りと形からまず間違いはないだろう。


 (髪も伸びて…ああ、尻尾と同じで銀色なんだ。角と翼も恐らく同じ色なんだろうなぁ)


 腰より上くらいまで伸びている煌くような銀髪を触りながら溜息をつく。尻尾が生えている時点で、どう考えてもここは地球ではないだろうし、僕は人間ではなくなったであろうことがわかる。


 (角に翼に尻尾。鱗があるし翼の形から竜っぽいなぁ。リザードマンとかだったら翼はないだろうし。ということは僕は異世界にきて竜人にでもなっちゃったのかな)


 ファンタジーな漫画や小説はよく読んでいたが、まさか僕が当事者になるなんて思いもしなかった。再度溜息をつく。


「へこんでてもしょうがない。前向きに行こう」


 夢も希望もない底辺フリーターより、未知なる世界を満喫できるかもしれない今のほうがマシかもしれない。そんなふうに考えているとキュルキュルとお腹が鳴り始めた。


 (とりあえず食糧を探さないと…あと水も…)


 と思い、辺りを散策することにした。

 適当に歩きながら食べられそうな野草やら木の実を探す。


 (んー、これとか食べられるかな?)


 比較的柔らかそうで毒のなさそうなものをちぎって食べてみる。

 ピリッとするが食べられなくはなさそうだ。香辛料がわりに使えるかもしれないといくつか採取していく。他にも大丈夫そうなものを味を見ながら集めていった。

 団栗の様な木の実もいくつか見つけた。辺りを見るとそれなりに量はありそうなので、味はともかく飢えることはなさそうだ。


 あとは水があればとりあえずは何とかなりそう、と適当な大きい葉っぱで集めた木の実などを包んでいると、どこからか音が聞こえてきた。

 さらさらと何かが流れるような音。恐らくは川だろう。これは幸先がいいと食糧を抱え、音のする方へ駆け出す。暫くすると予想通り川が見えた。

 やった!と喜び川に近づくと澄んだ水の中に魚が泳いでいるのが見えた。


 (水もそのまま飲めそうだし、ここで生活していけそう!)


 衣もなければ住もないが、一番肝心な食が一応クリアできたのでホッと胸をなでおろす。抱えていた木の実などを鳥に食べられないように近くの岩場の影に隠し、川に近づき水を飲む。


「おいしい…!」


 こんなにおいしい水を飲んだのは初めてだった。どこぞのミネラルウォーターなんて目じゃなかった。喉が渇いていたのもあって思わずゴクゴクと飲み、満足するとゴロンと仰向けになる。

 尻尾が岩場に当たり若干痛かったが、安心したのと、ぽかぽかした日差しのせいもあって瞼が落ち始め、そのまま寝てしまった。








「ふぁぁ、つい寝ちゃったな」


 起きてみると、すでに日は暮れ始め、空は赤く染まりかけていた。なんだかんだで疲れていたんだな、と思いながらグッと体を伸ばし起き上がる。

 すると水を大量に飲んだせいか催してきた。


 (う…そういえば僕今女の子なんだっけ…)


 以前の様には出来ないため、適当な場所を探し、尻尾を脇から抱え込むようにしてしゃがみ込む。




「ふぅ…あっ」


 そういえば紙とかないから拭けないんだ、と仕方なく川に入り洗っているとガサガサと音がした。

 恐らく動物だろう。森の中なんだからそりゃいるよねと思い、と音のする方に目をやってみると――


 そこには、それはもう立派な猪がいた。


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