15 心機一転
三日間二話更新これで終了です。今後も宜しくお願いします。
鳥の囀りで目が覚めた。王都にも小鳥はいるんだなぁなんて益体もないことを思いながら体を起こす。
「ルティ、ルティ起きて」
「ん、ふぁ……おはようナツキ」
隣で寝ていたルティも眠そうにしながら起き上がる。そして視線が合い、どちらからともなく唇を触れ合わせた。
「……お風呂入ろうか」
「…そうしましょうか」
いい雰囲気になりかけたけど、お互い体がべとべとなのに気づいたのでお風呂に入ることにした。今日も仕事だしね。
さっぱりした後、手を繋いでサンルークへ。
「「おはようございまーす」」
「おはよう。今日も混むだろうから頑張って…」
リーズナーさんが振り返りながら言いかけて、恋人繋ぎになっている僕達の手を見て止まる。
「……おめでとう?」
「ありがとうございます?」
なんか変なやり取りになったけど、まぁ僕としてはめでたい事に変わりはないのでいっか。
オープンして暫くすると席が大分埋まってきた。午前中からこんなに来るって、みんな仕事どうなってるの。とりあえずまだそこまで忙しくなっていないのでゆっくり注文を取っていく。
「カフェオレですね。かしこまりました」
手慣れた感じで、あるお客さんの注文を取って戻ろうとしたときだった。
ゾワワッ!!
お尻のあたりを一瞬だけどまさぐられる感触。
触られた!そう認識したとたん、全身鳥肌が立つような感覚と凄まじい嫌悪感に襲われる。
慌てて振り返るけど、触ったと思わしき犯人は素知らぬ顔をしてる。他に気付いた人もいなさそう。これじゃ騒いでも言い逃れされちゃう…。悔しいけどとりあえずその場を離れた。
「……ナツキどうかした?」
「う、ううん、なんでもないよ」
しまった。顔に出てしまっていたのか。でも心配をかけたくないから誤魔化した。
痴漢してきた犯人に注意しながら立ち回る。もう触られたくないけど、もしまた触られたら絶対締め上げてやる。というか中々帰らないなこの人…。
カランカラン
忌々しく思っていると、新しいお客さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ」
そうして入口を見てみると見覚えのある人物がいた。
カインとフィルだ。ザンブルにいるんじゃなかったのかな。王都観光とか?久しぶりだし、注文取る時にでも聞いてみようかな。
そんな風に考えて一瞬気を抜いてしまった。
ゾワッ!
やられた!でもこの機会を逃すわけにはいかない。体中に走る気持ち悪さを我慢し、掴みかかろうと振り返る。
ドゴォ!!
「………はい?」
突然大きな音がし、腕を伸ばそうとした先にあるテーブルと犯人が…吹っ飛んだ。代わりにテーブルのあったところに氷柱が生えている。
御柱祭で使えるんじゃないかと思えるほど立派な柱だ。惜しむらくは氷という事か。やっぱり木じゃないとね。
…うん、現実を見ようか僕。
「あんた、私のナツキになんてことしてくれてんのよ?」
僕が呆けているとルティが犯人に近づいていく。
うわ、女の子がしちゃいけない表情になってる。見下すような視線で殺気が半端じゃない。魔物や魔獣より凄くて、僕の尻尾の鱗が逆立つような感覚を覚える。ちょっとちびりそう。
「様子がおかしいから注意していたらまさか痴漢にあってるだなんて……あんた、万死に値するわ」
「――っ!!!??」
容赦なく犯人の股間を思いっきり蹴り上げる。なんか嫌な音がこっちまで聞こえてきた気がする。つい昔を思い出して思わず股間を抑えてしまう。当人じゃないのになんか涙が。
「ル、ルティ?」
「大丈夫?他に変な事されてない?胸揉まれたりとか頬ずりされたりとか舐めまわされたりとかされてない?」
あれぇ?ルティモさんなんかキャラ変わってませんかね?というかそれはルティがやりたいことじゃないですかヤダー!
「大丈夫!大丈夫だかんむぅ!?」
ルティの勢いは止まらず、僕の口がキスで塞がれた。あ、駄目、舌はらめぇぇ!
「っぷぁ、ルティ落ち着いて!みんな見てるから!」
他のお客さんや、カインもフィルもポカーンとこちらを見ている。そんな中ルティを宥めていると、リーズナーさんが僕とルティの肩に手を置いた。
「ちょっと奥に行こうか?」
ニコニコとした笑顔を崩さずにそう言われる。
…あ、これあかんやつや。
結局その後お店は臨時休業となり、犯人は衛兵に突き出された。そして僕達は滅茶苦茶説教されている最中である。
「理由も気持ちもわかるけど、やりすぎだよ。あれ以上やっていたら逆にルティちゃんが捕まってるんだからね?そういう時はちゃんと私に相談をすること。ナツキちゃんもだよ?
お店の修理が終わるまでお休みにするからしっかり頭を冷やすように。いいね?」
「「わかりました…」」
被害者なのに叱られるという…。まぁ報連相を怠ったのは事実なので仕方ない。
その後店内の壊れたテーブルなどを片付け、宿に戻ることにした。
無言で歩いていたら、丁度宿に着く頃にルティが話し始めた。
「ごめんなさいナツキ、でもどうしても許せなくて…」
「ううん、確かにやりすぎちゃったけど、ルティが怒ってくれたのは嬉しいよ。
僕もルティが同じ事されたら多分吹っ飛ばしてるしね」
「ナツキ…ありがとう……」
「ううん、ルティこそありがとう…」
いい雰囲気になり、お互いの顔が近づいていく。
「あー、そういうのは部屋でやってくれないか?」
いいところで声をかけられる。このタイミングで声をかけるとか無粋な事をするやつは誰だ、と声のする方へ目を向けるとそこにはカインとフィルがいた。
「「気の利かない男…」」
「今の俺が悪いのか!?誰だって言うと思うぞ!?」
僕とルティでじっとりとした視線を送る。フィルは手で顔を覆いながらちゃっかり隙間からこちらを見ている。
「ゴホンッ!ともかく二人とも久しぶりだな。元気にしてたか?」
「まぁなんとかね。カフェではごめんね、ちょっとトラブルが合ったもんだから。
でも二人はどうしてここに?」
「宿をここに取ったのですよ。お二人もこの宿なのですか?」
「ええ、そうよ。宿はわかったけど王都にはなぜ?」
「それは依頼絡みだな。まぁ立ち話もなんだし、一緒に飯食いながら話さないか?あん時の礼もあるからな、奢るぞ」
そう言えば結局ご飯奢ってもらわずにザンブルの街出ちゃったんだっけ。
丁度いいから奢ってもらっちゃおう。
明らかに「投稿速度>書き溜め速度」な状況。
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