14.5 露見
今日まで二話更新です。17時と20時の投稿となります。宜しくお願いします。
(ん…?)
ある日の夜、物音で目が覚めた。なんだろう…。まさか泥棒?
最近は宿の宿泊客を狙った泥棒が多発していると、お店のお客さんが話しているのを聞いたことがある。そうであれば迂闊に動くのは危ない。状況を把握するためにジッと耳を澄ます。
「んぅ…ぁ…」
あれ?この声はルティ…?というかこの声は…。
「や…っ…」
えええ!?ちょっとこれは気まずい!なんで目が覚めちゃったの僕!これなら泥棒のほうがマシ…いや、マシじゃ…やっぱマシだよ!後が気まず過ぎるって!
「ナツキ…っ」
ガタンッ!
思わず聞こえた単語に反応して尻尾に力が入り、ベッドを叩いてしまう。
「え、ナツキ…?」
絶対ルティがこっち見てる。狸寝入り狸寝入り。…無理ですよねー、尻尾丸見え状態だし。凄く気まずいけど体を起こす。
「あのー…、なんていうか、ごめん」
「………」
ルティも体を起こす。けど顔は俯いている。乱れたパジャマがエロい。いやそうじゃなくて。
「その、僕の名前が聞こえてきたん…だけど…?」
そう、それが聞こえなければ狸寝入りでとりあえず対応できたのに。
ルティが一瞬ビクッと体を震わせる。そしてポロポロと泣き始める。
「その…私…」
僕が突然のことにおろおろしていると、ルティがぽつぽつと話し始める。
そもそも発端はあの日、僕がしてた事がきっかけらしい。気づかれてたんだ…。恥ずかしくてめちゃくちゃ顔が熱い。穴があったら入りたい。
そして、その時の僕の声を聞いて可愛いと思ってしまったそうだ。ますます顔が熱くなる。
それからは僕の事が気になって仕方なかったらしい。やけに視線を感じたり、手を繋いだりしてきたのはそういう事…。
「それでっ、気がっ、ついたらっ!好きにっ、なっちゃってたのっ!」
嗚咽を交じらせながらもルティは告白してくれた。
「え、でも…その…僕、元々男だけど、今女の子で…よくわかんない存在だけど…?」
そう言うとルティは首をぶんぶんと振る。
「そんなの関係ないの!私はナツキが好きなの!そもそもそんなの気にしてるくらいならこんなに一緒にいないわよ!」
嗚咽が収まり、泣きはらした目でキッ!と睨まれる。僕は思わずドキッとし、そしてなぜか涙が出た。
「……え?」
ぽろぽろと涙が止まらない。
あれ、なんでだろう。…ああ、そうか、僕は今安心して、嬉しくて泣いているんだ。
種族も性別も変わり、それを受け入れて前向きにやってきたつもりだけど、心の奥底では不安だったんだろう。そりゃそうだ、世界も何もかもが違うんだから。
ルティが街に向かうって言ったときに感じた寂しさも、また一人でその不安に晒されるから出た感情なのかもしれない。
あやふやな存在の僕をルティは好きだって言ってくれた。性別も何も関係なく、僕だから好きなのだと。
そんな風に言ってくれる子を愛しく思わないわけがない。
僕は凄く温かい気持ちになって、気がついたらルティをぎゅっと抱きしめていた。
「……ルティありがとう。好きって言ってくれてすごく嬉しい。僕もルティの事が…好きだよ」
「ナツキ…っ」
ルティもぎゅっと僕を抱きしめてくれる。
そうしてその日、僕達は恋人同士となった。