13 遁走
12.5話も投稿しています。
「なんでこんなことになったかなぁ…」
僕達は今街道を歩いている。…色々耐えられなくなって。
仕事して何かあるたびに、いやぁ嬢ちゃん達はすごいなぁ、助かるとか言われると…。
あとトロールの件もあったけど、どうも僕達が結構規格外っぽいところもわかって、それが同業者にやっかみを受けそうなんて思い始めちゃったのも原因。仕事こなす量が全然違ったからね。
それで街を出ることにして、じゃあどこに向かおうかとなった時、せっかくだから王都に行ってみようという事に。
「ん?」
歩いていると視線を感じ、振り返ると一瞬ルティと目が合う。けど、すぐに逸らされる。
「なぁに?」
「なんでもないわよ?」
最近こういう事がよくある。何かしたっけかな…?もしかしてこの間黙ってパンケーキを食べに行ったことがバレたのかもしれない。でもそれなら普通に怒ってくるだろうしなぁ。原因がよくわからずもやもやとする。
そんな事を繰り返し、野営をすること一週間。僕達は王都に辿り着いた。
王都アリスト。王都の名前は国の名前と同じらしい。ザンブルと違い、城壁はがっしりとした石垣で出来ていて、石垣の上を兵士が巡回している。そんな石垣が二重にある。二重の石垣の内側は貴族層用かな?一般人入れなさそうだけど。そして街の中央にはお城があって、その周りは堀があるらしい。大通りも東西南北で大きくつくってあり、ザンブルとは規模から何から違った。
「さすがに大きいねー」
「そりゃ王都だもの。街もそうだけど人も多いわよ」
大通りには多種多様な人達が歩いている。出店なんかも多く、非常に賑やかだ。
食べ物なんかの出店もある。お昼も近かったので食べながら歩くことにした。
「うーん、この串焼き美味しい」
「ナツキって甘いものもそうだけど、お肉も相当好きよね」
「以前が以前だったからね…。満足にお肉食べられるようになったのこっちきてからだし」
「一体どんな食生活だったのよ…」
仕方ないんです。元の世界はお肉高かったんだから。給料日前なんかいつもパスタだったなぁ…。ペペロンチーノは正義でした。
暫くだらだらと見て回り、適当にお腹も膨れたあたりで宿を探すことにした。
今回は懐に余裕もあったので中ランクくらいの宿を探した。
質の良い睡眠を取ると毎日が充実するからね。
そして探した宿は二人部屋朝夕食付、金貨一枚。前回より二倍以上高い。
「「おー」」
入ってみるとさすがに広い。ベッドもセミダブルくらいあるかな?ふかふか度も以前より上だ。テーブルや調度品なんかも安っぽくない。
「今回も当たりかな?」
「そうね。これなら逆に安いくらいかも」
この後は予定もないのでお風呂に入ってゆっくりしようと、荷物を置いて二人で向かった。
「改めて思うけど、ナツキって肌綺麗よね」
「ふふーん。いいでしょ。でもそういうルティだって綺麗なんだよね」
二人で並んで湯船に浸かりながら話す。お互い無駄毛もないスベスベ素肌である。
「ちょっと触ってみてもいい?」
「?いいよ?」
そう言ってルティが僕の腕をぷにぷに触り始めた。続いてお腹や腰。ちょっとくすぐったい。そして胸…ん?
「……ルティ?」
「…あ、ごめん」
ふにふに触り始めた手をサッと引っ込める。触るなら自分の触ればいいじゃないと言うと、そういうのじゃないのよねぇ…、とか言う。おのれ、持たざる者を弄ぶ気か。
「…じゃあ逆に私の触ってみる?」
「む…」
正直興味がある。持つ者の感触とは一体…。
「じゃあちょっとだけ…」
ふにふにと触る。Eくらいかな?ふにふにふに…。
…なんだか悔しくなってついうっかり力が入った。
「んっ…ぁ」
「……ごめん」
なんか変な空気になった。気まずくなって手を引っ込める。
「そ、そろそろ上がろうか」
「ぁ…うん」
結局その後も変な空気のままで、お互い無言で部屋に戻った。
翌朝、長旅の疲れでぐっすり眠ったせいか、変な空気はなくなった。
「さぁて、今日は組合でも行ってみますか」
余裕があるとは言っても、いつまでも働かなくていいというわけじゃない。この宿に泊まり続けるためにも仕事を探さないと。
そうして組合までやってきて、バインダーをパラパラとめくる。
「…狩猟系少なくない?」
ザンブルでは結構あった駆除、狩猟系依頼がほとんどない。あっても野良犬の駆除くらい。野良犬じゃ報酬も安いしさすがにこれじゃ食べていけない。
「森から遠いせいか、この辺平和なのね。お肉とか素材は流通で回ってくるからってのもあるかも」
一番得意な狩猟系が駄目かー。仕方ないから日雇い系で探すことに。
こっちは王都にお店とかが多いせいか、ザンブルより豊富。
「街によって全然違うんだね」
「特色があって面白いわよ。あ、この辺なんかどう?」
「飲食店かぁ」
元の世界で言うホールスタッフ募集中!みたいなやつだ。やっぱりあるんだね、こういうの。
「んー、これなんか特に報酬いいわね」
そう言ってルティが見せてきたのはカフェのホールスタッフ募集だった。同じ飲食店系でも他に比べて報酬がいい。
「時間も悪くないし、いいかも。これにしてみようか」
この世界で初めての狩猟以外の仕事。クレーマーとか来なければいいな。
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