01 はじまり
(うーん、今日の夕飯は半年ぶりのお肉だ。楽しみだなぁ)
底辺フリーターである僕こと近藤夏樹は、プチボーナスが出たのをいいことにスーパーで大安売りされていた肉を買い、シンプルに塩胡椒で焼こうかな?それとも贅沢に野菜も使って煮込み料理にでもしてみようかな?などと想像しながら帰宅しているところだった。
(滅多にない贅沢だからなぁ…これは迷う…)
そんなことを思いつつ自宅であるオンボロアパートに着き、ドアノブに手をかけた瞬間――
視界が暗転した。
(んん…あれ…?貧血でも起こしたかな…?それともここの所ろくなもの食べてなかったから栄養失調…?)
ふわふわした感じの残る頭を軽く振りながら体を起こしてみると、どうにも様子がおかしい。
「…ううん?」
家のドアの前にいたはずなのにドアがない。それどころか周りを見てみると鬱蒼とした木々が生い茂っている。
「おかしい…いくら田舎寄りとはいえこんな森はなかったはず…というより家の前まできていはずなんだけど…んん?」
ぶつぶつと独り言を言っていると、声に違和感があることに気付く。そして喉に手をやると、喉仏の感触がない。
周りもそうだが、僕自身も何かがおかしいと体を見てみる。そして視界に入ってきたのは滑らかな白い肌と二つの控えめな膨らみ。
「へ?」
そんなはずはない、と思いつつ膨らみに手を当ててみるが、確かな感触があり間違いなく僕の体だとわかる。
「え!ちょっとまって!まさか!?」
嫌な予感がして股間に目をやる。そしてそこにはあるはずのものがなかった。
「えぇぇ!?うそぉぉ!?女の子になってるぅぅ!?」
パニックになり、あっちへこっちへわたわたとしていると、なにやら腰のあたりが重い。
今度は何!?もう勘弁して!と泣きそうになりながら体を捻り見てみると――
「しっ…ぽ…?」
銀色に輝く尻尾が生えているのを見た瞬間、気絶した。