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(未定)  作者: 雫真
第一章
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《プロローグ》 -落とされた-

 あれはいつの事だっただろうか。

 僕の両親は共働きで、しかも二人共それなりの役職に就いていたせいか、俺は祖母の家に預けられる事が多かった。

 家はそれなりに裕福なほうだったと思う。生活に不自由を感じた事もないし、あまり一緒に居てやれないという引け目からか、多少のいたずらやワガママを親は大目に見てくれていた。

 そんな幼少期、親よりも長く一緒に過ごした祖母が俺は大好きで、祖母の語る昔話や御伽噺おとぎばなしが大好きだった。

 今ではもうどんな話だったか薄ぼんやりとしていて思い出せないが、とても気に入っていた物語があった。何度もお願いして聞かせてもらった記憶がある。

 たしか……ドラゴンや魔法使いが出てくる冒険のお話。

 

 ◆ ◆ ◆


 辺りを深々と木々や雑草が生い茂り、空から差し込む月光すらもまばらに遮る神社の石階段の中腹で、俺は後悔していた。

 

 時は夏。暇だ暇だと呟くだけの張りのない夏休みを送っていた最中、友人からの「肝試ししようぜ」という一言に、二つ返事で了解してしまったのが後悔の原因である。

 思えば、夏休みに入ってからというもの、有り余った時間を使ってはゲームや動画投稿サイトで時間をダラダラと浪費する毎日。

 夏休みというだけあって、俺と同じように暇な奴らが多いのだろう。毎日毎日新しい動画が投稿される。そんな投稿されてゆく動画の中で『肝試し実況』なるものを見て、皆の「ほんとだ、聞こえる」「うわ、まじで映ってんじゃん」といったコメントがなんだかアホらしくて、肝試しなんてたいして怖くないな、なんて思っていた。

 そんな時、友人からの肝試しの誘いの電話に、見ていた動画の雰囲気のまま軽くOKしてしまったのだ。

 

 肝試しの場所として向かったのは、この時期になると度々噂される廃神社で、こう噂される時期でもないと人どころか動物の気配すらしないような場所だった。

 実際の肝試しとなると、夜の闇で悪くなる視界と自分の息と鼓動しか聞こえない静寂、じっとりと全身で感じる夏の夜の生暖かさが妙に不気味で、実際に体験するとこうも違うのか…と現在進行形でビビリ中である。

 木々の隙間から微かに見える遠くの住宅街のポツポツとした明かりが見え、わずかに恐怖が和らいだと思った時だった。


 ――ガサガサッ


「っほぉっ!?」


 静寂の中、突然騒ぎ立てる草を掻き分けたような音に驚き、俺の心臓ちゃんはそのまま静かになってしまうかと思うほどだった。妙な叫び声も漏れてしまい、周りに人がいない事が幸か不幸かの微妙な状況でもある。

 この場所は町から少し離れた小さな山奥というのもあり、しばらく音のした方向を見て警戒したが、野獣や不審者が出てくるような気配は無かった。

 俺は気を引き締め、一刻もはやくこの肝試しを終わらす事にした。

 俺も男だ。こんな情けない状況は自分でも不本意である。

 

 ――ずずずっ……

 

 静かに足元に広がる


「よーっし、速攻目的地まで行って速攻戻って速攻家に帰ってゲームの続きするぞ!」

 

 先日購入したゲームの事を考えて恐怖を紛らわしながら進む作戦。

 こりゃあ完璧だ。

 俺は意気揚々いきようようと石階段の次の一段へと足を伸ばし、その足で地を踏んだ。

 はずだった。


 スルリ――


「……え…………」


 伸ばした右足で感じるはずの地を踏む感覚は、いつまでもやって来ることがなかった。

 ハッと足元を見ると、夜の闇よりも深く暗く、それはまさに黒そのもののようだった。

 俺の脳みそが今の状況を落ちている・・・・・と判断したときには、すでにその何か・・に落ちていて、俺は為すすべもなくそこへ落ちていった。


「え…え! えぇぇっ! なにっ!?

 ギャーーーーーー!!」


 パニックになりながら落ちる俺の視界には、微かな光すらも感じない闇が広がっていた。

 後ろを振り返ってみても、入ってきたはずの穴もなく、全てが黒だった。

 自分の体すらも見えず、いつまで落ち続けるのかもわからない。

 ああ……このまま地面にぶつかって痛む間もなく死ぬのか? まだやりたい事もわりとあったのに……。

 じわり、と涙が出そうになった。

 俺はこれまでの人生を繰り返し思い出し、まるで走馬灯のように家族や友人のことが目に浮かんだ。

 短い人生だったが、そんなに悪い人生じゃなかったとおもう。生まれ変わったら鳥になって自由に空を飛びたいな……。

 もはやこれまでかと死ぬことを覚悟していると、徐々に落下の感覚が弱くなり浮遊感になっていくのを感じた。

 そしてそれは完全に浮いているという感覚になる。


「浮いてる……?」


 これが無重力というものなのだろうか。自分の頭が天を向いているのか地を向いているのか分からない。

 これは……助かったたのだろうか?

 視界は真っ暗で、今いるここがどれくらいの広さの場所なのかがわからない。音もしない、重力も感じられない。目を閉じても開けても同じ闇で、まるで意識だけになったような、ものすごい閉塞感だ。

 ずっとこのままだったらどうしよう。

 徐々に衰弱していって、長く苦しみながら餓死するのだろうか? そうなら、地面にぶつかってペシャンコになった方がまだ幸せだったかもしれない。

 俺がこのどうしようもない状況の行く末に絶望していると、どこからか音が聞こえた。


『~~~~━━━━……~~……~~』


『~~! ~~~~……━━~~!』


 これは声だろうか。女性と男性のような声がダブって聞こえる。

 ぼんやりとエコーがかかったような感じでよく聞き取る事ができないが、そもそも日本語じゃないようだ。

 かといって英語というわけでもない、不思議な発音。しかも四方八方から声が飛んでくるような、脳みそに直接流れてくるようなピリピリとした感覚。

 脳で共鳴するような不思議な感覚に、だんだんと胃の辺りが気持ち悪くなってくる。

 

「いったいなんなんだ……」


 ピュンッ ピュンッ


 謎の言葉に困惑している俺の目の前に、突然光の輪が出現した。しかも二つ。

 状況は完全に俺の理解を越えていて、意味不明だった。


「…………」


 しかも気持ち悪いし状況は最悪。ゆとりのある世代で過保護に育てられた俺にとってはなかなかに辛い状況だ。

 俺は光の輪を正視した。

 光の輪は緑色と赤色の二つ。これに何の意味があるのかはわからない。が、輪の中はうっすらと光の膜が渦巻いていて、ゲームのワープポータルのようだった。大きさ的にも人が一人通れそうなサイズで、もしかするともしかするかもしれない。

 俺は考える。ここにはこの光の輪以外何もない。何もしなければ、状況は変わらず誰にも知られることなく俺はここで死ぬだろう。

 俺は二つのうちのどちらに入ってみる事にした。問題は、どちらにはいるか……とはいっても、こんなものは考えても意味がない。

 俺は自分の直感に従った。


「よし、緑だ」


 俺は、目に優しい・・・・・という理由だけで、勢いよく緑の光の輪へ進んだ。進みたかった。無重力のせいかすごく動きづらい……というか動かない。

 

「ぐぬぬぬぬぬ……!」


 光の輪は目と鼻の先なのにあとちょっとが届かない。

 俺は手をめいっぱい前に突き出した。

 そして、中指の先っぽが輪の中の光の膜に触れた時だった。輪から光の糸のようなものが俺の中指を伝って体中を巡ると、俺を輪の中へと吸い込んだ。


 ブワッと風が全身を駆け抜ける感覚。

 耳にささやく鳥の鳴き声と草木の緑の匂い。

 まるで夢が覚めたようにあっという間の事だった。

 光に飲み込まれたと思った次の瞬間、俺の視界に沢山の木々と質素な木造りの家が入り込んだ。ここがどこかは分からないが、どうやら闇の中から抜け出せたようだ。

 なにより、足が地面に着いている感覚があることが嬉しい。


「……~~━━━|?」


 またあの訳のわからない言葉が聞こえる。だが、今回はさっきのように脳に来るような感覚ではなく、耳で聞き取る感覚だった。

 そして、それは俺の後ろから聞こえ――。

 俺は、ハッとして振り返る。

 そこには――。


「「……………」」


 水縹みずいろの女の子がいた。

ちゃんと小説を描くのはじめてかもしれません…。遅筆なので更新は遅めになりそうですが、頑張って執筆してみたいとおもいます。

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