#4 「違和感」
トンネルの前に着いた。
僕らは隅っこの歩道を歩いていた。
隣の車道は交通量がすごいらしく、車やトラックが途切れない。
僕らと車の間がガードレールで隔たれている。
でもトンネルの中はしっかり換気されていて、空気が綺麗だ。
ここは山の上。車道の向こうには谷を挟んでもうひとつの山が見える。
なかなか良い風景じゃないか。
とりあえず、トンネルに入ろう。ユンが手を引っ張る。
ちょっと手をつなぐのは勘弁してほしいね。
トンネルの中は一本道で、車の音が反響して大きくなった。
会話もできない状態だ。ユンは大きな声を出した。
窓を開けてる車もいるんだからやめてほしいな。まあ、楽しそうだし、いいか...。
外にでた。
(なにやら違和感が...)
ひさびさの外の空気も良い。天気はくもりだけど...
出てすぐに目に入ったのは、店だった。
道路沿いに小さな店があった。どうやら、スーパーらしい。
そのことは、ユンも気になっていた。
『入ろうよ。』なんて言っていた。
僕も結構気になっていたので、入ることにした。
ただし、何も買わないからな。
ユンがちょっとふてくされた。
面白いな、こいつ。
中には、お菓子が売ってあった。
それは最初に目についたものだ。
段々と見ていると、なにやらおかしかった。
食料品は勿論、プラモデル...?それに、おもちゃが多い。
最初はおもちゃ屋と融合してるのかと思った。
しかし、外にははっきりとスーパーと書かれている。
ああ、外に出てしまった。
ユンがまだ中にいるので、連れ出してきた。
外に出た時、 違和感の正体が分かった。
店の向こうには、海があった。しかも砂浜。
結構賑わっている。
トンネルに入る前は確かに山の上だった。
谷がかなり下に在る程、山の上だったのに。
海...?
トンネルもまっすぐ一本道だった。
それなのに、海があるのはおかしい。
僕らはいつの間に山を下ったんだろう。
...こんなことを気にするのがおかしいのか。
ユンは気づいていない。
そして、誰も気づいていない。
皆、何も知らないでここにいる。違和感も無い、何事もなかったかのように。
僕は少し不安になったが、ここは気にしないのが正解か。
とにかく進もう。
また僕らは歩き始める。