#2 「頂を行く」
人間関係にもいつしか慣れは来る。
その慣れが早くも来たようだ。
僕らはいつの間にかタメ口で会話をしていた。
冷たい空気が風上に流れこんだ。
いかにも冬を思わせるような、寒い風だ。
それは刺さるように染み込む。
雪山の入り口だった。
道路が二手に分かれている。
とりあえず、登ってみよう。
僕らは登り坂の道を進んだ。
静かだった。
寒くて何も話せない。
雪も上に向かうにつれて、多くなってきている。
これでは車もあまり登れないだろう。
音も気配もなかった。
だから、道路の真ん中を歩いた。
車が全く来ないもので、 安心したのだ。
ここからは、下の街の様子を見下ろせた。
僕は歩きながら見ていた。ユンもそうだった。
街はにぎやかに動いている。店も人も、みんな楽しそうだ。
"ここ"とは 全く違う雰囲気、正反対だった。
にぎやかなのに、音は全く聞こえてこなかった。
世界が遮断されたように、見えない壁でもあるかのように。聞こえなかった。
それだけ高い場所にいたのだ。
ついに頂上へたどり着いた。
ここまで来るのに、とても疲れた。曲がりくねった長い道のりだった。
とにかく、周りを見渡すと天文台があった。冬になって、今は閉鎖している。
この雪を見ると、少しそれが分かる気がした。
頂上は下よりもとても寒かった。
-3℃はいっただろう。
ユンは隣でガタガタと震えていた。面白くてつい笑ってしまった。
天文台の屋上へ行くと、手すりも床も凍っていた。
氷に覆われ、こちらまで寒くなるような光景だった。
真っ白で、風も強くて。それでも景色は美しかった。
空の彼方は晴れていた。青空が見え、日にさんさんと当たっている山が見えた。
見とれ、凍えて寒さを感じていると、指先が赤くなっていた。
思えば、僕らは何も防備していなかった。ただ、夢の世界では病気という概念が無いようで。
寒さに当たってもただ寒いだけ、となっていた。
僕はそれもそれで地獄のようだと思うけど。
天文台を降りた。小さな駐車場には、車一台も停まっていなかった。
人もいない。
頂上にいるのは、僕らのみ。
でもきっと、僕ら異訪者は数に数えないだろう。