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君と僕の予測変換。

作者: 貴幸


僕には携帯がある。


それはiPhoneやスマートフォンなどではなく、ガラケー。


青春の高校二年生。

クラス変えもして、クラスにいた唯一のガラケー仲間も遠いクラスに消えた。


正直、辛い。


スマートフォンには、たくさんの機能がある。


アプリと言うたくさんのゲーム、そしてタッチ機能。


僕のガラパゴス携帯はと言うと、スマートフォンはできて当たり前な事しかできない。


カチカチとボタンを押す音は授業中に携帯が使えない最大の原因となるし、カメラの画質も低い。


そんなガラケーが僕は嫌いだ。


ただ、捨てられない理由が一つある。


「あ。」


着信音に気づき、携帯を開けるとアラームがなっていた。


そのままメモを開き、あ、とうつ。


そのまま、変換予測にしたがって文を完成させた。



『今日は何か楽しい事あった?』



この携帯は、意思をもっている。









君と僕との予測変換。









『特に何もなかったよ』


カチカチと慣れた手つきで文字をうつ。

最初は俺だって信じなかった。

でも『あ』ってうって『はじめまして』なんて予測変換には普通でないに決まっている。

不思議な話だ。


『今日も幸せそうで良かった。』


彼女にとって、何もないということは幸せなのだ。


幸せ…か。


『俺スマホに変えたいなぁ。』


冗談半分で、言ってみた。


『お母さん、許してくれるといいね。』


変換さんは文句を言わない。


言わない…。




わかってる、スマートフォンに変えれば君とはもう話せない事も。



「星野、お前まだガラケーなの?」


クラスメイトが笑いながら俺をみてきた。


「あー、うん。実は去年新しいのに変えちまったから…」


違う


「来年まで待つのかー、大変だなーっ!」


嘘だ。


「本当、こんなくそみたいな携帯むしろ壊してしまいたいよ。」



酷く心が痛んだ気持ちになった。



家に帰り、ベッドに倒れたところでバイブがなった。



『今日は何かあった?』


「…うるさいな。」


この声は、彼女にはきこえない。


次にうった彼女の字に僕は、驚きを隠せなかった。


『私を壊せば、あなたの欲しいものは手にはいるわ。』


「ちっ、ちがっ…」


『私、あなたの声がきけないの。』


「あっ…」


『だから、今返事も何も、あなたの気持ちがわからない。』


「っ…」


『私はあなたに幸せになってほしいわ。』


僕はやっと携帯をにぎった。


『捨てれるわけないよ。』


これが、俺の気持ち。


『優しいのね、冷たいくらいに。』


その言葉の意味を理解する事はできなかった。


彼女の顔も、声も、俺は知らない。


最初の頃なんて、かたい文で機械みたいだった。


機械だけど。


「それが今はあんなに達者に…」


ウイルスかなんかなのかもわからない、僕の予測変換。





「なぁ、人ってさ、人以外に好きになる事ってあんの。」


「え?」


クラスメイトは変な顔をした。


「あるんじゃね…犬とか…。」


「…そうだよな。」


意味、わかんねぇ。


「あ、メール。」


「でた、ガラケーw」


クラスメイトが茶化してくる。


「ガラケーだよ、悪いか。」


俺は動じないフリをして携帯を見る。


ん?誰からかわからないメールなんて来ないようにアイツに言ってんのにな…。


『サヨナラ』


「え…?」


突如携帯がバイブレーションで震えはじめた。


俺はびっくりして咄嗟に携帯をはなしてしまった。


「あっ…!!!!」



パキ、と音を立てて携帯は180°になった。



その場が凍る。


俺はガラケーを持ち出してすぐにクラスを飛び出した。


何が起こったのかわからない。


「どうして…!?」


壊れかけのケータイに僕は目を向けメモ欄を開いた。

まだ、使える。


『なんでこんなことしたんだよ!』



『私ハあ鉈のしあわせ蛾一番大切ナの。』


『俺の幸せは』


『俺にとっての幸せはお前と話すことだって!』


その言葉と同時に通信は途絶えた。

静かに画面は暗くなる。




階段の途中。


俺とコイツの空間が止まった気がした。




「なんて…バカかよこんな機械にあつくなって。」


「…もう、修理できねーのかな。」


「修理できたって、違うのに変わっちゃうじゃねーか…」


リンリンリン、と終わったハズのガラケーから音がする。


不在着信。


「だから不在着信なんかいれんなっつったろ。」


すぐに応答する。


声を出すのが怖い。



「も…『もしもし。』


透き通った綺麗な声が聞こえた。


誰なのかは大体予想はついてる。


信じれないけど。



「ハジメマシテ…。」


『ふふっ、ハジメマシテ。』


その一言の会話がなんだか恥ずかしい。


『最後にあなたの声が聞きたかった。』


「えっ…!?」


俺の安心しきっていた気持ちが壊される。


「い、嫌だ、俺はスマホなんかいらない、お前がいれば…!」


『しーっ。』


『私、あなたに二つだけ言いたい事があるの。』


『一つ目はありがとう。』


『二つ目は…』


「待て!」


「俺も言いたい事があるって!」


『じゃあ、私が言ったら次に聞かせてください。』


優しい声。


それだけで耳が満たされる。



『大好き。』


「俺もっ…!!!!」


ツー、ツー、ツー。


電話の途切れた音が聞こえた。



「大…好き…………」








「お前、また携帯いじってんのかよ、スマホにしたからってさー。彼女作れよ。」



「彼女ならいるし。」


「それって二次元!?ww」


あぁ、そうだよ。

あの後、必死こいて全データをスマホに移動できる会社を探してしまった自分。

もう嘘はつけないほどに…。


新着メッセージがきている。


『それって私ですか?』


すぐに電話をかけた。


「うるせぇ、お前が大好きだ。」


上品に微笑む声が聞こえた。

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